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2022.03.31

特許部 渡邉浩二郎

パリルートとPCTルートとの比較

2022年4月1日より、PCT出願に関係する手数料の改定が施行されます。全体的に大幅な値上げとなっており、特に「送付手数料+調査手数料(日本語)」が倍額の160,000円になることが目につきます。

<特許庁HP> 令和3年特許法等改正に伴う料金改定のお知らせ(令和4年4月1日施行)
https://www.jpo.go.jp/system/process/tesuryo/kaisei/2022_ryokinkaitei.html

今回の料金改定をきっかけとして、PCT出願の前倒しやPCTルート・パリルートの方針の見直しなどの対応をされている日本企業様は多いのではないかと思います。

一般的に、パリルートとPCTルートにはそれぞれ以下のようなメリットがあると言われています。

パリルートのメリット
・ PCTの国際段階分の費用が不要
・ 各国のプラクティスに合わせた内容で出願できる
・ 権利化までの期間が短くなりやすい
・ PCT非加盟国にも出願できる

PCTルートのメリット
・ 国際段階で国際調査機関から特許性に関する見解が得られ、それに基づく移行判断および移行時の補正が可能
・ 出願から移行期限までに約30月あるため、どの国で権利化するかの判断を下すタイミングを遅らせることができる
・ 優先権期限間近であっても日本語で外国出願が可能

弊社でお取り扱いさせて頂いた外国特許出願の過去のデータを基に、パリルートとPCTルートのどちらの方が費用が多くかかっていたのかを調べてみました。
対象は2010年から2021年の間に出願されて登録に至った案件であり、総案件数は約28,000です。

AU CN DE EP ID IN KR TH US
0.97 0.95 0.98 0.92 0.93 0.97 0.90 0.98 0.93

上の表の値は、(パリルートでの出願から登録までにかかった費用の平均)/(PCT出願の移行から登録までにかかった費用の平均)を表します。
費用には、庁費用、現地代理人費用および弊社費用が含まれます。
値が1より大きければ、PCTルートの方が費用が安いということになります。
国によって案件数に大きな違いがあり、CN、EP、KR、USについては数千の案件がありますが、案件数が数百の国もあります(EPは「国」ではありませんが、便宜上、そのように扱わせていただきます)。
今回は、PCTルートおよびパリルートの両方について100以上の案件があった国のみを対象としました。

前述のように、PCTルートの場合には国際段階において特許性に関する見解を得ることができ、且つ必要に応じて補正も可能です。
このため、移行後の庁指令(Office Action)の回数が少なくなり、移行後にかかる費用を低減できるのではと考えていました。
つまり、1より大きい値が多く出てくることを予想していました。
しかし今回の集計結果は、この予想に反し、パリルートの費用がPCTルートの費用より少なく、一部の国については有意な差があるという結果となりました。

何故このような集計結果が得られたのか。更なる分析を行い、興味深い結果が得られた場合には本コラムでご紹介したいと思います。
弊社では、各国の制度に精通した外国特許専門の技術スタッフと事務スタッフが、お客様のご事情・ご要望に沿った最適な外国出願プランを、客観的なデータ分析を踏まえてご提案することが可能です。
外国出願に関することは、是非弊社までお問合せ下さい。

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