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2004.01.27

野崎篤志

【Cases & Trends】マシンビジョン特許訴訟でレメルソン財団が敗訴

徹底した訴訟攻勢と強硬な交渉で、あらゆる産業界から合計15億ドルを超える特許実施料を獲得してきたレメルソン財団(特許権者であった個人発明家ジェローム・レメルソン氏は1997年10月1日死去)が、ついに全面的に敗訴の判決を受けた(Symbol Technologies, Inc. et al. v. Lemelson Medical, Education & Research Foundation Limited Partnership, D.Nev., 1/23/04)。
事件背景

1月23日にネバダ地区連邦地裁によって判決が下されたこの事件は、1999年にバーコード・メーカーであるシンボル・テクノロジーズら7社、およびマシンビジョン・システムのメーカーであるコグネックス社が、それぞれレメルソン特許14件の無効、権利行使不能、非侵害の確認判決を求めて提起した訴訟を併合して審理していたもの。 — 当時レメルソン財団は、ルーセント・テクノロジーやTI、インテルなど100社以上をアリゾナ地区連邦地裁でも提訴していたが、この訴訟は、「マシンビジョン・システムのメーカーであるコグネックスやシンボル・テクノロジーズがすでにネバダ地裁で特許有効性を争っており、同システムのユーザーであるルーセントらより深い議論ができるため、ネバダ地裁における特許有効性判断を優先させることこそ、訴訟経済・司法資源の有効活用に適う」という理由で、手続きが停止されていた。

ラッチェス(懈怠)法理をめぐる攻防

併合されたシンボル・テクノロジーズ、コグネックスの確認判決訴訟における争点のひとつとなったのが、特許取得/出願審査手続きにおける遅延行為による懈怠の法理(equitable doctrine of prosecution laches)を理由にレメルソン特許を権利行使不能とできるか否か、ということ。

— この衡平法上の法理は、一度、フォード社がレメルソンと争っていた事件で適用が認められている。同事件を扱っていたのはやはりネバダ地区連邦地裁で、1996年に地裁判事は、同法理に基づきレメルソン特許を権利行使不能とする補助裁判官(マジストレート)の報告・答申を正式判決として採用する決定を下しておきながら、翌年には、特許取得/出願審査手続きにおける遅延行為に対しては、懈怠の法理が適用されないとして、自らの決定を覆してしまったのだ。その後、両者が和解したため、同法理の適用可能性に対するCAFCの判断はもち越しとなってしまった —

今回の判決

シンボル・テクノロジーズ、コグネックスの併合訴訟でも、特許取得手続きにおける遅延行為にラッチェス(懈怠)の法理が適用されるか否かが重要争点となり、ついにCAFCの判断を仰ぐことになった。2002年1月24日の判決において、CAFCは「特許取得手続きにおけるラッチェスの法理は……、出願人が関連法規を遵守していたとしても、特許取得手続きにおける不合理かつ適切な説明のない遅延行為の後に認可された特許クレームの権利行使を阻害すべく適用され得る」と判示した(Symbol Technologies, Inc. v. Lemelson Medical, Education and Research Foundation, 277 F.3d 1361, 1363 (Fed.Cir. 2002))。そこで、本件レメルソンの遅延行為が「不合理かつ適切な説明のない遅延」であったのか否かを認定するため、事件はネバダ地裁に差し戻されていたのだ。
今回の判決で地裁は、レメルソンの行為を不合理かつ適切な説明のない遅延として、当該特許を権利行使不能とするとともに、他の争点についても、以下の通り原告側の主張を認めている。
– 当裁判所の解釈に基づく係争対象特許クレームは、被告製品の使用が当該クレームの1またはそれ以上の限定要件を満たしていないので、被告によって侵害されていない。
– 仮にレメルソン側が主張するクレーム解釈を採用したとしても、当該クレームは明細書の記述要件および実施可能要件を充たしていないので、無効である。

勝者コメント

勝訴判決を受け、コグネックス会長兼CEOのロバート・シルマン博士は次のようにコメントする「この判決は、マシンビジョン・システムやバーコード・リーダーを製造、販売、使用する世界中の企業にとって正に祝福に値するものだ。これはまた、世界中の消費者にとっても勝利だといえる。なぜなら、レメルソンのライセンス猛攻が始まって以来、私たちは実質的にすべての製造物について購入するたびに、隠れた税金をレメルソンに払っていたのだから」。
シルマン博士はさらに、コグネックス社の本件訴訟に対する姿勢を次のように述べている。
「私たちの社会における多くの訴訟が、貪欲さを原因としている。しかし、コグネックスがレメルソンを訴えた理由は違う。我が社はこの訴訟に数百万ドルを費やし、勝ちはしたが、レメルソンから1セントも受け取っていない。……我が社が正しいことを行っていることがはっきりとしたこと、不正な行為に立ち向かい、これに勝利したこと。これこそ、この訴訟を闘い抜いた我が社への褒美なのだ」

(*これだけのコメントをしているだけに、レメルソン特許がなくなったいま(まだ控訴の可能性は十分ありますが)、コグネックスの製品を使用していない企業を軒並み提訴、警告するということはないと思いますが)

[判決原文は以下のサイトで入手可]
http://www.cognex.com/pdf/corporate/Lemelson_decision.pdf

(渉外部・飯野)

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