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2006.10.13

柏原雄人

【最近よくあるご質問】 アメリカ特許庁はなぜ審査請求制度を採用しない?

お客様から頂いた各種お問合せに対し、渉外部員が担当部門の協力を得て、お答えします。
今回のご質問は:
アメリカ特許庁は、どうして審査請求制度を採用しないのでしょうか?
出願人に過剰な負担を強いることになる一連のルール改正が特許庁から提案されていますが、審査請求制度の導入が審査負荷を解消する一番の近道だと思うのですが?
今回のご質問は、そのままアメリカ人弁護士にぶつけてしまいました。

1.出願審査の過剰な負担を削減出来るため、特許庁は審査請求制度の導入を望んでいるはずだ。しかし外部、特に法曹界の反対により、同制度の導入が妨げられている。

2.法曹界が審査請求制度導入に反対する理由としては、次のものが想定される。
1)産業の発展に及ぼす悪影響(価値の量れない膨大な数の審査未請求案件によって、競合他社の革新的な製品・サービスの市場への導入にブレーキがかかり、そのビジネス展開へ干渉する)、2) “Deferred Examination” (審査猶予制度;後述)制度で経験されてきた様な諸問題(例えば係属期間の長期化)、及び、3)審査請求制度を入れても出願審査の件数はそれ程軽減されないという信念。

3.そもそも、審査請求制度の導入は特許法の改正を必要とし、それは特許庁ではなく議会のみがなし得る。即ち、35 U.S.C 131は、“全てのアメリカ特許出願が特許庁において審査を受けるべき”ことを定めており、審査請求制度の導入はこの原則に反する。この35 U.S.C 131を改正するためには、議会における承認が必要である。特許庁は35 U.S.C.に定められているいかなる特許法に変更を加える権限を持たない。それ故、特許庁提案のルール改正案において、特許法の修正を前提とする様なルール改正を提案することは出来ない。

4.この様に法改正に対する制限があるにも関らず、審査請求制度に類似した制度として、特許庁はそのルール(37 C.F.R.)中で “Deferred Examination” (審査猶予制度)を提供している。特に、37 C.F.R. 1.103(d)によれば、一定の基準を満たす限り、最先の出願日(優先権主張日)から最長3年間の審査猶予期間が認められ、その間はOffice Actionは発行されない。3年の猶予期間満了後には、自動的に審査が始まる。つまり、アメリカの “Deferred Examination” は、審査請求という積極的な手続きが不要な点で、日本の審査請求制度とは異なる。また、仮出願制度を使えば、審査開始までに1年の猶予期間を得ることが出来る。

協力:John G. Smith弁護士(DrinkerBiddle&Reath LLP)
   John J. Penny弁護士(Edwards&Angell LLP)

ちなみに、現在議会に上程されている特許改革法案のいずれにおいても、審査請求制度の導入は提案されていません。

(渉外部 柏原)

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