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2007.02.01

【アジア・東欧プロジェクト】 第1回:UAE特許庁訪問記

NGBでは2006年秋より「第3次アジア東欧プロジェクト」が進行中です。本コーナーでは各国の訪問が順次済み次第、成果の一部をご報告していきます。
UAE特許庁はドバイにあり、特許及び意匠を取り扱っている。日本からドバイは、エミレーツ航空の直行便 (成田・関空 ⇔ ドバイ) が就航しており、約12時間のフライトで行くことができる。一方、商標を取り扱う商標庁は首都のアブダビにある。今回は時間の関係もあり、特許庁のみの訪問となった。

我々がUAE特許庁を訪問した初めての日本人ということもあり、暖かく歓迎して頂くことができた。訪問して最初に驚かされたことは、UAE特許庁はMinistry of Finance & Industryの庁舎の中のたった1部屋 (!) に過ぎなかったということである。職員総数が7名しかいないため、たった1部屋でも十分ということらしい。職員に黒いベールを深々と被ったイスラム教徒の女性がいらっしゃり、写真撮影の際には彼女が写らないようにとの注意を同行者から受けた。この辺りは文化の異なる点を肌で感じたと言えよう。

UAE特許庁から頂いた統計によれば、2006年の特許出願は約1000件、意匠出願は約400件。日本とは比べるべくもないが、かなり少ないことは否めない件数である (参考: 次回報告予定のトルコの方が遥かに出願数は多い)。職員の中に審査官はいないとのことで、UAE特許庁では出願の受理、方式審査及び審査後の特許の発行手続きを行っている。では、実体審査はどのようになっているのか? この点についてUAE特許庁から得られたコメントを次に紹介していきたい。

特許については、オーストリア特許庁と委託契約が結ばれているとのことであった。オーストリアを委託先に選定した理由で大きかったのがコスト (委託費) だと言う。方式審査が終わり、出願人により審査費用が支払われると、出願書類がオーストリア特許庁に移送され、実体審査がなされることとなる。このため、出願時にアラビア語と英語の明細書が必要になるものの、実体審査は英語の書面に基づいて行われる。また、PCT出願の国際予備審査で肯定的な見解が得られている場合には、UAEへの移行後に認可をするとのことであった。

一方、意匠も実体審査を外国の庁に委託する予定とのことであったが、残念ながら現在までのところ委託先が決まっていない。このため、出願を受理するだけで、UAE意匠出願の実体審査は全く行われていない。「UAE意匠は取得できないのか?」 と尋ねたところ、「UAE出願に対応する他国意匠登録例を提出すれば認可する手続きの検討がなされている」との回答が得られた。委託先が決まるまでの間はこの方法でUAE意匠を取得していくことになると思われる。

UAEを含む中東地域には各国の特許とは別に、地域特許としてのGCC (Gulf Cooperation Council) 特許が存在する。加盟国はUAE、サウジアラビア、バーレーン、オマーン、カタール、クウェート。GCC特許庁はサウジアラビアのリヤドにあり、サウジアラビア特許庁と隣接しているとのことであった。GCC特許庁とUAE特許庁の関係を尋ねたところ、特にGCC特許庁と間で出願情報の交換などは行っていないとのことであった。GCC加盟国には、オマーン (未施行)、カタール (特許法無し)、クウェート (出願受理のみ) といった国々が含まれている。このため、これらの国で権利保護を求める場合にはGCC特許出願を選択せざるをえないと思われる。ただし、GCC特許出願の際にはPCTを使えない点には注意が必要である。

昨年末に税関への商標登録制度が実施され、UAEでの知的財産権の権利行使制度も徐々に整いつつあるといえる。また、2007年末までに日本・UAE間のFTA (自由貿易協定) が締結されると言われており、UAEはアメリカを初めとする各国とFTAについて協議を行っている。これらの状況を鑑み、UAEでの知的財産権の取得の必要性についてご確認頂ければ幸いである。

(特許部 阪)

(NGBウェブマガジン2007年2月号掲載記事より)

UAE特許庁外観
UAE特許庁の方々と

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