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2007.03.09

【Cases & Trends】米IRS、産業界の強い反発(説得) を受け、クロスライセンスへの課税は限定的にすることで決着

「クロスライセンス契約の実態について把握すべく産業界他から広くコメント、情報をいただきたい…… 」こんなコメント要請の通達(Notice 2006-34)が昨年初めに米I RS(内国歳入庁)から出されました。特許庁、あるいは反トラスト当局(司法省や連邦取引委員会)ならまだしも、国税当局からこのような要請が出たため、その目的を懸念した産業界からは即座に強い反発の声が上がりました。コメントも積極的に提出されたようです。

1 年後の本年2 月14 日、手続き通達(Revenue Procedure)2007-23 号において発表されたIRS の検討結果は、クロスライセンス契約の多くを課税対象外とするもの。「IRS のバレンタインデー・プレゼント」などという安堵の声も聞こえました。決定の背景には、クロスライセンスによって認められた特許の価値評価の困難さなどが当局に認められたようです。以下、決定内容・背景を簡単にご紹介します。

手続き通達(Revenue Procedure 2007-23) より

1. IRS のコメント要請:

IRS は通達2006-34 号において、特許クロスライセンス契約(取り決め)、特に以下6 項目についてのコメント、情報および文書を要請した。

  1. かかる契約が発生するビジネス状況
  2. かかる契約において異なるタイプ、あるいは利用法を区別することの法的および事実上の意義
  3. かかる契約から生ずる所得の源泉を決定する手段
  4. クロスライセンスされた権利の価値評価方法
  5. かかる契約に対する海外での扱い。

2. 企業等のコメント:

・多くのクロスライセンス契約は、互いに自ら保有する特許を自由に実施するために結ばれる。これにより、費用のかかる特許訴訟の恐れなしに「活動の自由」を確保しようとする。

・また、かかる状況でクロスライセンス契約を利用する場合、通常、他の技術(例えば、ノウハウ、著作権、商標権)の移転はなされない。

・クロスライセンス契約には、現金の支払いを伴う場合と、伴わない場合がある。

・クロスライセンス契約は、通常、非排他的である。

・特許訴訟を回避するためにクロスライセンス契約を締結する当事者は通常、契約締結前に、両当事者間の現金支払い(それを伴う場合)の額に反映される広い相対判断以上に踏み込んだ、対象特許の価値評価をしない。

・特許庁が発行する特許件数の増加に伴い、費用のかかる特許訴訟も年々増加している。「特許の藪(patent thicke t)」に巻き込まれた企業は、特許訴訟につきものの不確定な結果と出費に直面するよりも、クロスライセンス契約の交渉と締結を選択する場合がしばしばある。

・他に、ビジネス上の目的を共有し、特許権以外の知的財産を共有しあう、技術共有取り決めも存在する。

・クロスライセンス契約によって認められた権利の価値評価や、そこから発生する所得の源泉の決定は、特許法と税法のもつすべての不確定要素が絡み、極めて困難なものとなる。クロスライセンス契約によって受領した金銭を超える額が源泉税の対象となれば、グローバル市場における米国競争力の維持が阻害されることになりかねない。

・以上の状況に鑑み、クロスライセンス契約に基づいて受領した現金部分のみを源泉税の対象とすべき。

3. 行政管理上の問題に鑑みたIRS の決定:

財務省とIRS は、特許侵害訴訟を回避するために締結された「適格特許クロスライセンス契約(Qualified Cross Licensing Arrangement: QPC LA)」*1の場合、納税者、IRS双方にとって多くの困難な問題が発生することを認める。数多くの特許出願と特許認可、特許侵害紛争を解決することの困難さと費用に鑑みると、訴訟費用を含め相当の出費なしに特許の有効性と範囲を確定することは極めて困難な場合が多い。かくして、特許法と税法の独特の相互作用により、QPCLA に対する課税には行政管理上の問題が生じるのである。

例えば、知的財産の価値評価は常に困難なものであるが、特許侵害紛争を回避または解決するためにクロスライセンス契約が締結された場合の特許権の価値評価はさらに困難なものとなる。
同様に、特許侵害紛争を回避または解決するために締結されたQPCLA からの総所得の源泉を決定することもまた、行政管理上の問題点を提起する。かかる取り決めにおいては、客観的ベンチマーク(例えば、製品の販売に基づくユニット単位キャッシュ・ロイヤルティ) でもない限り、無形資産の場所と使用を特定国(法域) に追跡してゆくことの困難さゆえに、所得を特定の源泉に割り当てることが困難になる。

以上に鑑み、財務省とIRS は、健全なる租税管理の利益のため、納税者はQPCLA の「正味対価(net consid eration)」*2 以外の額について考慮に入れる必要がないと決定する。

*1 「適格特許クロスライセンス契約(QPCLA )」…関係会社(共通の支配に服する会社)以外の会社間で締結された、非排他的、移転不可の特許クロスライセンス契約( 取り決め)であり、対象は契約中に明示された、当事者の現在および将来の特許に限定される。契約当事者が、当該契約に基づき、他の無形資産(著作権、商標およびノウハウを含む)の、「些細な(de minimi s)」ライセンスまたはその他の移転以上のことを行っている場合、QPCLA に該当しなくなる。 ここで他の無形資産のライセンスまたはその他の移転が、「些細」であるか否かは、個々のケースの事実と周辺状況に基づいて決定される。

*2 「正味対価(net consid eration)」…<当該契約によって認められたライセンス権利と「些細な」その他無形資産以外で、当事者が受領した対価の額>から、<当該契約に基づいて認められたライセンス権利と「些細な」その他の無形資産以外で、その当事者が支払った対価の額> を減じた額。

=> Rev. Proc. 2007-23 原文はこちらで
http://www.irs.gov/pub/irs-drop/rp-07-23.pdf

(渉外部・飯野)

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