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2007.06.01

野崎篤志

【アジア・東欧プロジェクト】 第5回:インド特許庁訪問記(前編)

NGBでは2006年秋より「第3次アジア東欧プロジェクト」が進行中です。本コーナーでは各国の訪問が順次済み次第、成果の一部をご報告していきます。
第3次アジア東欧プロジェクトのインドチームは、2つのグループに分かれてインドへ訪問することとなった。第1グループの訪問先はデリー、コルカタ (カルカッタ)、第2グループの訪問先はムンバイ (ボンベイ)、チェンナイ (マドラス)、バンガロールである。これだけ多くの都市を訪問した理由は、インドでは、コルカタ、デリー、チェンナイ、ムンバイの4都市に特許庁が置かれ、これら特許庁がそれぞれ独立した審査を行っているからである。特許に関しては一応コルカタがヘッドオフィス、他の3都市はブランチオフィスとなってはいるものの、特定の一部の機能のみがヘッドオフィスに限定される以外は、4つの都市のオフィスは同等の機能を有し、それぞれの担当地域から受理した特許出願の審査を行っているのである (従って、本レポートではそれぞれのオフィスを特許庁と記載させて頂く)。商標に関しては、ムンバイにヘッドオフィスが置かれ、デリー、コルカタ、チェンナイに加え、更にアーメダバードでも審査が行われている。一方、意匠に関しては、審査が行われているのはコルカタのみである。なぜこのように複数の都市に特許庁が設置され、それぞれで審査が行われているのか?と現地で質問を行ってはみたが、得られた回答は、インドは国が広大のため、と極めてシンプルなものであった。

今回我々は4つの特許庁すべてに訪問し、審査官等と面談を行った。いずれの特許庁も約2年前に新しく建てられたビルで、大きさの違いはあったが、類似した外観を有している。特許出願に関しては、4つの特許庁の中では、デリー特許庁が一番規模が大きく、2005年度 (2005年4月~2006年3月) のデータでは、約10,000件の特許出願を受理し、約45人の審査官で対応している。これに次ぐのがチェンナイ特許庁で、約6,500件の特許出願を受理し、約40人の審査官で対応し、次いでコルカタ特許庁では、約4,000件の特許出願を受理し、約30人の審査官で対応している。最も規模の小さいのはムンバイ特許庁で、約3,500件の特許出願を受理し、約25人の審査官で対応している。一方、商標出願に関しては、出願件数の多い順からデリー、ムンバイ、チェンナイ、アーメダバード、コルカタとなる。2006年の特許ルールの改正では、第1回目の指令書は、審査請求から6か月、あるいは、公開日から6か月のどちらか遅い方までに発行されるとの規定が入ったが、実際、この規定は守られているのか?と質問を発したところ、いずれの特許庁からも、“正直に言って現在の審査官の人数ではこの規定を守るのは難しく、将来審査官が増加すれば守られるようになるであろう”との回答が得られた。特にデリー特許庁では、特許出願件数に対する審査官の数が最も少ないため、審査官の増員が急務であり、既に新たな審査官を確保し、トレーニングはほぼ完了したとのことであった。ちなみに、このトレーニングは、どこの特許庁に所属していても、ナグプールという都市にあるIPTI (IP Training Institute) に集められて行われている。審査官のレベルアップのため、日本の特許庁等へも研修で審査官を派遣しており、今回面談したデリー特許庁のAssistant Controllerも近いうちに日本へ6か月間の研修で行くので、大変楽しみにしているとのことであった。

いずれの特許庁でも、競争原理が働いているためか“インドへ出願する際には他所ではなく、ぜひ自分の所属する特許庁へ出願するように”と勧められた。例えば、デリー特許庁では、毎月、デリーのパテントアトーニーを集めて審査官と意見交換会を行っており、また、日本企業が訪問して審査官に発明の技術的内容のプレゼンテーションを行うことも歓迎するとの話があり、とてもオープンな雰囲気の特許庁であることを我々にアピールしていた。

インドへの特許出願の件数は、2003年度12,813件、2004年度17,466件、2005年度24,505件と年々急増してはいるものの、日本からの特許出願は2005年度でまだ約1,600件に過ぎない。この特許出願件数は、7,000件以上出願しているUSに大きく離されての4位である (2位はインド、3位はドイツ)。特許庁の審査官や、インドの現地代理人は、インドの年率9%という急激な経済成長や、1.7億から3億人といわれる消費者人口、ソフトウェア、医薬品分野などを始めとした科学技術・研究開発水準の高さ、知的財産分野の整備度や、充実した裁判制度などを次々と例に挙げ、日本の出願人はもっとインドへ特許出願を行うべきであると盛んに主張していた。今回訪問した5都市でのあふれる活気と急激なインフラ整備の進行を目のあたりにして、我々にも、今まさに更に多くのインドへ特許出願を行うべきであるという彼らの主張は正鵠を得ているものと思われた。

(特許部 小林栄一)

(NGBウェブマガジン2007年6月号掲載記事より)

デリー特許庁外観
チェンナイ特許庁内部

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