IP NEWS知財ニュース

  • 知財情報
  • アーカイブ

2007.07.15

特許/第156条、第253条/ターミナルディスクレーマー特許の存続期間延長

特許法第156条は、URAAと調和するため、Hatch-Waxman法により改正され、特許存続期間の延長を得るための要件を列挙している。要件が満たされる場合には、特許存続期間は、「延長されるものとする」旨、規定している。同条文は、明示的に第253条に基づくターミナルディスクレーマーに言及していないが、法令の一般的な意味において、義務を意味する「延長されるものとする」旨、規定していることは、第156条に基づく特許存続期間の延長が、ターミナルディスクレーマーによっては、排除されないことを支持している。(Merck & Co, Inc. v. Hi-Tech Pharmacal Co., Inc., CAFC, 3/29/07)
事実概要
Merck & Co, Inc.(以下、Merck)は、緑内障を治療するのに使用される医薬品であるTRUSOPTRに関して発明し、1987年6月26日、Merckは、TRUSOPTRの有効成分として、ドルゾラミドを含むある種の炭酸脱水酵素阻害薬を対象として特許出願をした。当該特許出願は、最終的には、米国特許第4,797,413号(以下、’413特許)として発行されている。’413特許の審査中、審査官は、Merck自身が有する先願特許のクレームにより、自明型二重特許を根拠にすべてのクレームを拒絶した。その特許は、1987年6月30日発行の米国特許第4,677,115号(以下、’115特許)である。この拒絶理由を解消するために、Merckは、特許法第253条に基づくターミナルディスクレーマーを提出した。ターミナルディスクレーマーは、’413特許に関して、’115特許の発行日から17年の存続期間満了日である2004年6月30日まで延長する期間について、放棄している。ターミナルディスクレーマーの提出は、審査官に認められ、二重特許の拒絶理由を解消し、1989年1月10日、’413特許は発行された。

1994年、Uruguay Round Agreements Act(以下、URAA)が制定され、米国特許法の存続期間の規定に関して、特許出願の日から20年を特許存続期間とする先進諸国の法律に調和するようにされた。Merck & Co. v. Kessler事件(80 F.3d 1543, 1547 (Fed. Cir. 1996))参照。URAAに基づき、当時有効な特許存続期間が、最先の有効出願日から20年、または発行日から17年に修正された。特許法第154条(a)(2)、同条(c)(1)参照。’115特許は、URAAに従い、その存続期間満了日に関して、法令の適用を受けて、’115特許の出願日から20年の日である2004年12月12日に再設定された。ターミナルディスクレーマーは、’413特許の存続期間満了日を’115特許の期間に関連付けているため、’413特許の存続期間満了日は、2004年12月12日に再設定された。

Merckは、申請によって米国食品医薬品局(以下、FDA)から、TRUSOPTRの上市認可を得た。申請認可の過程において、Merckは、FDAに対して、認可された医薬品またはその使用方法を対象とするいかなる特許に関する情報も提出するよう求められ、また、特許侵害請求が、権原のない当事者を相手として、合理的に行使された情報も提出するよう求められた。特許法第355条(b)(1)参照。FDAは、ネームブランド医薬品を対象とする特許に関する通知を収載する情報集である「オレンジブック」において、認可医薬製品に関する特許情報を公開している。オレンジブックは、’413特許がTRUSOPTRを対象とすることを示している。Approved Drug Products with Therapeutic Equivalence Evaluation(以下、Orange Book)参照。

1997年3月20日、Merckの請求と特許法第156条の規定に基づき、特許商標局(以下、PTO)は、FDAによるMerckのTRUSOPTR医薬品に関する薬事規制審査期間に鑑み、’413特許の存続期間を延長した。PTOは、特許存続期間の延長に関して、1233日間を認め、また、ターミナルディスクレーマーにおける有効日である2004年12月12日から延長を起算した。特許存続期間延長期間を基礎にして、’413特許の存続期間満了日は、ゆえに、2008年4月28日とされた。

本件において争点となる特許侵害の紛争は、2005年8月に始まった。Hi-Tech Pharmacal Co., Inc.(以下、High-Tech)は、FDAに対して、簡略医薬品承認申請(以下、ANDA)を行い、ANDA第77-846号および同第77-847号によって、ドルゾラミドの有効成分を含む高眼圧症治療用の目薬に使用される医薬品のジェネリック品に関して、認可を求めた。連邦食品医薬化粧品法は、ANDA申請について、ブランド・ネーム医薬品に関するOrange Bookに収載された個々の特許に関する証明を求めている。この証明は、以下の内、いずれかを明示しなければならない。すなわち、(i) かかる特許が出願されていないことに関して要求される特許情報、(ii) かかる特許が失効していること、(iii) 当該特許が特定の日に失効すること、(iv) かかる特許が無効であるか、または認可を求める医薬品によって侵害とはならないこと、に関してである。連邦食品医薬化粧品法第355条(b)(2)(A)参照。収載特許が無効であるか、または非侵害であることをパラグラフivに基づく証明をするANDA申請人は、特に、特許所有者に対して、特許性に付言したANDA申請をしたことに関して通知しなければならない。連邦食品医薬化粧品法第355条(b)(3)参照。上記の規則に従い、Hi-Techは、Merckに対して、パラグラフivに基づく特許証明の通知を送付して、Hi-Techのジェネリック目薬が、’413特許を侵害しない旨、陳述した。これに対応して、2006年1月18日、Merckは、Hi-Techに対して、特許法第271条(c)(2)(A)に基づく侵害訴訟を提起して、ANDA第77-846号および同第77-847号の申請は、侵害行為であると主張した。Hi-Techは応答して、当該特許は、2004年12月12日に失効しており、その後は、権利行使できないとした。

2006年3月1日、Hi-Techは、連邦民事訴訟手続規則第12条(b)(6)に基づき、訴えを斥けるよう申立てを行ない、その製品は、’413特許の範囲にあるが、ターミナルディスクレーマーが特許の存続期間延長を排除しており、’413特許は、ゆえに、2004年12月12日に失効していることを根拠とした。2006年4月3日、Merckは、プリーディング判決要求の交差申立てを行ない、ターミナルディスクレーマーは、Hatch-Waxman法の期間延長を除外するものではないことを根拠として、King Pharmaceuticals, Inc. v. Teva Pharmaceuticals, Inc.事件(409 F. Supp. 2d 609 (D.N.J. 2006))の判決理由が適用されるべきであると主張した。

2006年4月25日、ニュージャージー地区連邦地方裁判所は、終局判決を登録して、Hi-Techによる申立てを否定し、Merckによるプリーディング判決要求の申立てを認めた。地裁は、King Pharmaceuticals事件の判決理由を採用し、’413特許にクレームされた医薬品に関して、Hi-Techによる商業化を当該特許存続期間延長期間が終了する2008年4月28日まで、禁止する命令を行なった。

Hi-Techは、適時、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)に控訴した。CAFCは、裁判所および裁判手続に関する法律第1295条(a)(1)に基づき裁判権を有する。

確認

判旨
1984年、立法府は、Drug Price Competition and Patent Term Restoration Act of 1984(以下、Hatch-Waxman法)98 Stat. 1585を制定して、連邦食品医薬化粧品法と特許法を改正した。本件の争点は、特許法第156条を成文化したHatch-Waxman法第201条の一部に関し、その適切な解釈に関する。
(…… 以下略)

*判決内容詳細については “I.P.R.”誌でご確認ください。

関連記事

お役立ち資料
メールマガジン