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2008.11.17

【特別寄稿:李のおどろき日本滞在記】 (2) 韓国と日本の食文化

韓国最大の法律事務所、KIM & CHANG (金・張 法律事務所)。現在、同事務所からビジネス留学のため日本に滞在中の李瓊宣(LEE Kyoung Sun)弁理士が、NGB ウェブサイトのために特別にエッセイを寄せて下さいました。
特別寄稿:李のおどろき日本滞在記 (2) 韓国と日本の食文化

今回は李のおどろき日本滞在記の二番目として、韓国と日本の食文化の違いについてご紹介します。

私も一人で食べられる!

韓国では一人で食堂に行ってご飯を食べた記憶がほとんどないのです。それは、韓国では一人で食事する人というのは、「一緒に食べてくれる友達もいない寂しい人」というイメージがあって、食堂で一人で食べていると、誰かがそんな同情の目で自分を見ているようで恥ずかしいですし、実際寂しい気持ちになりがちなのです。なので、昼食のとき一緒に行ってくれる人がいないときはのり巻やおにぎりを買ってきて自分の席で食べることはあっても、一人で食堂に行くことは本当に稀でした。もし一人のときにどうしても外へ出て食べたい場合はお昼に出ないつもりの人に「おごるから今日だけ付き合って」と無理やり誘うこともありました。ですから、一人でさっさと食べる人に人気のある吉野家が韓国ではさっぱり流行らず、短期間で撤退したという有名な逸話もあるくらいです。

日本に来て間もないころはどの食堂でも一人用の席が多いし、一人で食べる人が多いことが不思議でした。私も最初は一人で食べるのが何だかぎこちなかったのですけれど、いつの間にか音楽を聴いたり本を読んだりしながら一人でゆっくりと食べることを楽しめるようになりました。でも、韓国に帰ったらまたお昼に出ないつもりの人に「私がご馳走するから付き合って」と、またきっと誘うでしょう。

本当に残しちゃ駄目ですか?

日本の食文化は、食べられるくらいの量を出して出されたものは食べ切るのがエチケットと言うならば、韓国は食べ切れないほどたっぷり出して出されたものを少し残すのがエチケットと言えるでしょう。日本で食事をすると、日本人は焼き魚なんかも骨だけきちんととって綺麗に食べますし、他のおかずは勿論ご飯一粒も残さない人が多くて、綺麗に食べるのがとても苦手な自分が恥ずかしくなることもあります。

最近、韓国でも残飯を減らそうという意識が高まってきてはいますが、伝統的に家や食堂でお客さまに料理を出す時、量が足りなくならないようにたっぷり出すのがとても大事で、食べ切れる量だけ出してお皿が空になっても知らんぷりというのは、お客さまを粗末にしたと言われますし、利己主義とか、情が薄いとか、ケチとか思われがちです。そんなわけで、家でも食堂でもおかずのお皿が空になると、お客さんが欲しいと言わなくてもどんどん出すのが普通ですから、全部食べ切るのはとても無理なのです(参考までに、韓国の食堂ではおかずのお代わりは何回でも無料ですし、おかずのお代わりを嫌がる食堂は「サービスが悪い」と人気がないのです)。料理を出す方も「無理しないで食べたいだけ食べて」と言いますから少しぐらい残したって別に問題になることはないのです。かえって、おかずは少し残したほうが「もう十分。お腹いっぱいです」というサインになりますから、韓国では遠慮なく残していいのです。

日本の食べ放題のお店に初めて行った時、私はつい習慣で韓国式に自分の食べきれる量よりたくさん盛ってきて食べられるだけ食べようとしたら、周りの人々はみんな食べ切っているのに気づきました。急に不安になって一緒に来た日本人に、(残してもよいという答えを期待しながら)「残しちゃ駄目なんですか」と聞いてみたら「できるだけ残さないほうが良いですよ」との返事、やっぱり・・・。残しても平気だった韓国式に慣れていた私は目の前の超山盛りの料理を見ながらため息が出てしまいました。食堂のあちこちに張ってある「残さない運動中」の張り紙を見ながら、やっとのことで食べ切ったのですが、破裂しそうなお腹をかかえて、これからは絶対食べられる量だけ取ってこようと固く心に誓いました。環境のことを考えると日本の食文化のほうがいいのかもしれませんが、日本の食堂で出される食べ切れるぴったりの量のおかずを見てると、テーブルを埋め尽くすほどたくさんのおかずが楽しめる韓国の食堂がやっぱり懐かしくなります。

見た目がいいのが味もいい?
韓国の食べ物は、かき混ぜて食べるものがたくさんあります。その中で代表的なものが日本人にも人気のビビンパ。韓国の一般家庭で食べるビビンパというのは、食堂で出されるようなさまざまな色の野菜を全部載せた本格的なものもなくはないですが、それよりは冷蔵庫に残った何種類かのナムル(野菜のおかずの総称)をおかずの整理をかねて大きなボールに入れてご飯、唐辛子の甘辛味噌、ごま油と混ぜて食べる場合が多いのです。例えば、カレーも韓国では最初からご飯と全部かき混ぜて食べる場合が多いですし、お汁やスープにご飯を入れて食べる場合も少なくないです(日本のお茶漬けはちょっと似ているところがありますが、お茶漬けはご飯にお茶をかけるのに、韓国の場合はお汁の中にご飯をドブンと入れて混ぜて食べるところが違います)。

日本は食べるときの見た目を大事にするからなのか、かき混ぜて食べる習慣があまりなさそうです。ある日本人から、韓国に行ったとき韓国人の友達がフルーツ、アイスクリーム、お餅やあんこが綺麗に盛られたカキ氷を最初から全部かき混ぜて全体を茶色っぽくしてから食べるのを見てかなりショックを受けたと聞きました。かき氷も形が崩れないように端から少しずつ混ぜて食べるのが好きな日本人には、せっかく綺麗に盛り付けたかき氷をぐちゃぐちゃにかき混ぜて食べるのはもったいないだけでなくまずそうに見えたのかもしれません。また、ある日本人とお寿司屋さんに行った時も、しょうゆにわさびを溶かそうとしたら刺身の味をちゃんと味わうためにはわさびを刺身に載せてからしょうゆに漬けて食べたほうがいい、そうするとしょうゆが最後まで綺麗だし、魚の味ももっと味わえると教えてもらいました。韓国人は見た目は悪くても味さえよければよいと考えるのに対して、日本人は最後まで見た目よく綺麗に食べるのが好きなようです。物事の結果を重視する韓国人とその過程も大事にする日本人の特性が食べる習慣にもはっきり表れているようでとても面白いと思います。でも、もし韓国に行ったら是非カキ氷をぐちゃぐちゃにかき混ぜて食べてみることをお勧めします。見た目は悪くても韓国の美味しさがきっと感じられるはずです。

李瓊宣 (LEE Kyoung Sun) 弁理士

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