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2011.12.25

【インド特許庁訪問記2011】 第4回:チェンナイ

インド訪問記4回目 今回が最終回となります。
インド訪問団、デリー・コルカタ・チェンナイグループの3番目の訪問地チェンナイについてご報告致します。

チェンナイは、インドの南部の東側に位置しており、一年を通して気温の変化が少ない気候で、我々が訪問した1月でも気温は30度近くありました。外資の企業誘致にも積極的で自動車メーカーの工場やIT関連企業があり、インドの都市の中では発展している方だと思います。チェンナイには実働できるのがわずか1日だけで、その日中に4箇所を訪問するというハードスケジュールでした。現地事務所の多大なる協力のおかげで、なんとか予定地を全部訪問し、夫々で有意義なディスカッションができました。

まず、我々が訪問したのが、チェンナイにヘッドオフィスを置く特許事務所です。コルカタ滞在中、この事務所のコルカタオフィスにも訪問し、各オフィスの役割を確認しました。基本的にこの事務所の場合、インド国外企業からのインド出願に関しては、ヘッドオフィスがあるチェンナイオフィスが担当し、意匠出願はコルカタ特許庁だけが審査を行いますので、コルカタオフィスが対応、インド国内企業のインド出願に関しては、その企業の所在地のブランチがそれぞれ担当し、例えばムンバイ特許庁の管轄地域では、ムンバイオフィスが担当するという夫々の役割を持っていました。訪問した事務所のヘッドオフィスに約170名のスタッフがおり、オフィス間で人事異動も行い、弁理士の年代もバランスが取れたいい事務所でした。また、セキュリティの面では、基本的にインド滞在中ホテルへの入管時には持ち物検査など厳格なチェックがありましたが、特許事務所への入室時にはそれほど厳重なチェックはありませんでした。しかし、この事務所は2008年の自社ビル建設時に指紋認証によるシステムなどを導入し、セキュリティ面の整備も進んだ印象でした。

そのあと、今回の訪問の目玉でもあったIPAB(Intellectual Property Appelleat Board)を訪問してきました。訪問の予定を立てている段階では、IPABの担当者が不在の可能性が高く訪問はできないかもしれないと言われていましたが、運良くオフィスに駐在しており、めでたく面会をしてきました。
このIPABは、Chairman, Vice chairman, Patent technical member, Trademark technical memberの4名が中心となり運営されていて、今回は Vice Chairman(女性)と面会をしてきました。IPABは特許庁や高裁とは独立した組織で運営されており、お会いしたVice Chairmanも他の組織とは独立して運営しているという点を強調していました。
IPABのオフィスはチェンナイにありますが、定期的に各特許庁を巡回しているとのことでした。国土が広く特許庁が4つもあるにもかかわらず、たった4名でジャッジされているというのは信じ難い状況でした。この人数で滞り無く運営できているのか疑問があった為、状況を確認してみましたが、案の定Backlogを抱えていて審決が出るまで2年程度かかっているとの回答でした。
この様な状況で、増員を希望しているがなかなか増員には至らず、訪問時のコメントでは増員の予定も無いとのことでした。こういう点では、まだまだ政府の知財への取り組みが不十分であり、先進国並みになるには相当時間が掛かりそうな印象でした。

その後、チェンナイ特許庁を訪問してきました。この特許庁もデリー特許庁とは異なり、庁内を色々と案内してくれました。他の特許庁と同様、書類の管理は割とずさんで、廊下やパーティションの外側に書類の山が散見されました(写真参照)。商標のRegisterに会った際には「バックログの問題は解消している」との事でしたが、この状況を見る限りその言葉を素直に信じる気にはなれませんでした。

その日最後に、今回の出張の重要なテーマの一つであったインド企業の知財担当者とのディスカッションを行うため、チェンナイに本社をおく自動車メーカーを訪問しました。この会社は知財部という存在はなく、Legal Groupのスタッフが知財を兼務していました(将来的には知財部として独立する予定)。日頃の業務は日本企業の知財担当者と同様で、主に発明者と特許事務所との間で調査・出願業務をこなしていました。ただ、社員の知財への関心がまだまだ低いため、彼らLegal groupが発明者に対する知財教育と特許出願の奨励などを行っていました。このような活動は基本的に現地特許事務所の弁理士がサポートしており、社員の意識改革には励んでおりました。権利行使など知財の実情なども質問してみましたが、彼らは警告状などを送付したりせずに、Pre-grantの異議申し立てを行うほうが多いというのは興味深い話でした。実際この会社はインドで商標権侵害訴訟なども経験しており、少なくともLegal Groupの知財に関する意識の高さを実感しました。

以上で今回のインド訪問記は終了となりますが、我々のインド知財への探求はこれからも続いていきます。今後もインド知財情報の提供を行なっていきたいと思いますので、ご期待下さい。

(特許部 関大、IP総研 本田竜一)

特許事務所が入るビル
IPABの看板
特許庁廊下に積まれた書類の山
現地企業の方々と面会

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