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2013.09.12

中国
2013年8月30日 商標法改正案可決

本年8月30日、全国人民代表大会常務委員会において商標法改正案が可決され、国家主席の署名により成立致しました。改正商標法は、来年5月1日より施行されます。今回の法改正により、現行法が大幅に改正されておりますが、主な改正点は以下の通りです。

1. 審査・審理期間の法定化
 最も注目すべき改正として、各種の審査・審理期間を短縮するために、下記のように期間が法定化されました。
・ 出願の審査期間:出願日より9ヶ月以内
・ 拒絶査定不服審判の審理期間:9ヶ月以内(3ヶ月延長可)
・ 異議申立の審理期間:公告満了日より12ヶ月以内(6ヶ月延長可)
・ 不使用取消の審理期間:9ヶ月以内(3ヶ月延長可)
・ 無効審判(絶対的理由)の審理期間:9ヶ月以内(3ヶ月延長可)
・ 無効審判(相対的理由)の審理期間:12ヶ月以内(6ヶ月延長可)

2. 異議申立制度の変更
 現行法ではだれでも異議申立を提起できることになっていますが、悪質な異議申立を防ぐために、改正法では異議申立人は「先行権利者又は利害関係者」に制限されます。

また、改正法では、異議不成立の異議決定が出た場合、そのまま当該出願の登録証が発行され、異議決定不服審判または訴訟が不可能となります。異議不成立の異議決定に不服の場合は、登録後に無効審判を提起するほかなくなります。従いまして、冒認出願に対する異議不成立の異議決定が出てしまいますと、冒認出願が一旦登録になるため、現行法より異議申立人の負担が増えることが危惧されます。

3. 馳名商標制度の改善
 広告宣伝効果を上げるために馳名商標制度が濫用されているため、「馳名商標」という表示を商品、商品包装又は容器、又は広告宣伝・展示及びその他の営業活動において使用することが禁止されます。これに違反した場合は、地方の工商行政管理局より是正命令を受け、10万元の罰金が課されます。

4. 商標権侵害に対する保護強化
 悪意の商標権侵害に深刻な事情がある場合、懲罰的賠償金として、権利者の実際損失、侵害者の獲得利益、またはライセンス料の倍数に基づき確定した金額の一倍以上三倍以下の損害賠償請求が可能となります。

  また、権利者の実際損失、侵害者の獲得利益、またはライセンス料を確定することが困難な場合、人民法院は侵害行為の状況に応じて法定賠償を命じることができますが、その法定賠償金の上限が、現行法の「50万元」から、改正法により「300万元」に引き上げられます。

5.先使用権の新設
 商標権者がその商標を出願する前に、他人が商標権者より先に登録商標と同一または類似商標を使用し、且つ一定の影響力を有するに至った場合、登録商標の商標権者は当該使用人の元の使用範囲内での当該商標の使用を禁止できないという、先使用権の規定が新設されました。今回の改正法が施行される前に登録されている冒認登録商標について、真の商標権者による先使用権が認められるかどうかは定かではありません。

6.冒認出願に対する新規定
 他人が先に使用している未登録商標と同一又は類似する商標の冒認出願は、その出願人が当該他人と契約、業務往来関係又はその他の関係があることにより、他人の商標の存在を明らかに知っている場合には、当該他人が異議申立を提起した場合、その登録を拒絶するという条文が追加されました。従って、冒認出願人が何らかの関係により当該商標の存在を明らかに知っていたことを立証できれば、冒認出願の登録を阻止することが可能となります。

7.混同のおそれのある譲渡制限の追加
 混同又はその他の不良影響が生じるおそれのある譲渡は、商標局が認可しないという条文が追加されました。譲渡の審査が更に厳しくなることが予想されます。

8.審査意見通知(仮称)の新設
 実体審査において、商標局は出願内容について説明又は補正する必要があると判断した場合に、出願人に説明又は補正を要求することができるという条文が追加されました。現行制度における指定商品・役務の補正指令とは性格が異なり、審査官が必要があると判断した場合のみ、この審査意見通知書(仮称)が発行され、出願人に説明又は補正を要求します。具体的にどのような状況で審査意見通知書が発行されるか、まだ不明です。

9.異議申立又は無効審判における審理保留の明文化
 商標審判部は、異議申立又は無効審判の審理を行なう際、関わる先行権利の確定について、裁判所の審理中案件又は行政機関の処理中案件の結果を根拠とする必要がある場合には、審理を中止できることが明文化されました。中止原因が解消した後、審理が回復することとなります。

10.その他の改正
 その他にも多数の改正点がありますが、最後に下記の注目すべき改正点を上げておきます。
・一商標多区分出願制度の採用
・更新期間:満了前の12ヶ月以内へ変更
・音声商標が登録可能となる
・商標代理機関に対する義務規定及び処罰規定の新設

尚、商標法実施条例及び関連規定につきましては、現在商標局にて検討中です。公布され次第、掲載する予定です。

                              以上
(商標部 研壁)

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