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2013.09.20

【マレーシア訪問記2013】 後編: 特許庁を訪ねる。

NGB商標部では、現地代理人及び知的財産局の視察、情報収集を目的とし、マレーシアのクアラルンプールに訪問して参りました。本稿ではいよいよ特許庁を訪ねます。

=>前編はこちら

MYIPO (マレーシア知的財産公社)

現地代理人のアテンドにより、特許庁にあたるMYIPO (マレーシア知的財産公社)を訪問。MDTCC (国内取引・協同組合・消費者保護省 Ministry of Domestic Trade, Cooperative and Consumerism) 所属下の独立法人です。総員400人強、その1/4のスタッフが商標部門に従事となります。クアラルンプール中心部から車で30分程の住宅地然とした場所のオフィスビルにテナントとして入居。中心部のビルの家賃が高く、複数のフロアを借りるには、多少郊外に出るしかないとのことでした。入館の際は、パスポートの提示が求められ、ものものしい雰囲気でしたが、オフィス内は整理整頓が行き届き、非常にクリーンなイメージでした。

マレーシアを構成する人種は、マレー系、インド系、中国系と多様ですが、官庁といえるMYIPOの職員、審査官は多数派のマレー系で占められており、イスラム教が広く信仰されています。庁内で見る女性職員のほとんどがヒジャブと呼ばれるスカーフのような布で、頭部を覆っていました。訪問時期はラマダン月の最中。日が出ている間は食事ができません。夕方にさっさと仕事を終わらせて帰宅、日の入りを待ち、家族で食事をするのが一般的なのだそうです。よって、この時期は、夕方になると職員がまばらになります。まずは信仰ありきの業務スタイルは、日本人から見ると、ちょっと不思議でした。

今回の訪庁で面談に応じて頂いたのは、商標部門の Senior Director であるイスマール氏。日本からの客人をもてなそうと思ったのか、熱弁を振るって頂いたのですが、そのマレー訛りの英語が超難解!!途中、アテンドして頂いた現地代理人に助けてもらいながら、必死のインタビューでした。

聞けば、MYIPOは、色々と頑張っているようです。例えば・・・

・商標の国際登録制度であるマドリッド・プロトコール(マドリッド協定議定書、通称マドプロ)には、遅くとも2015年までには加盟
・それに合わせ、現状で1年程度要している商標の審査期間を3~4ヶ月に短縮したい
・現状、商標出願は手交申請と電子申請が並存しているが、全件電子出願へ移行する
・マルチクラス出願(1出願多区分出願)の導入に向けて、シンガポールやオーストラリアから、審査官の配置や役割等のノウハウを勉強予定
・マドプロ出願においても、出願人自身が正当な権利者である旨の認証済宣誓書を求める予定

最後の宣誓書は、正直なところ、出願人サイドとしては面倒な準備が存続することになりそうです。しかしながら、これを要求することにより、冒認出願の減少に寄与しているはずだとイスマール氏は、その志の高さを訴えておりました。

もうひとつ、クリーンなMYIPOをアピールするための、ある「部屋」を見せて頂きました。

これは、ヒアリング室。マレーシアでは、商標出願が拒絶された後、アピール提起による反論が可能です。その際、代理人と審査官との面談審査(ヒアリング)が行われることがあります。このガラス張りの部屋は、ヒアリングの際に、一切の裏交渉ができないよう、丸見えにしているのだそうです。賄賂が横行する隣国インドネシアを引き合いに、イスマール氏は、清廉潔白なMYIPOを自慢されておりました。

一昔前のマレーシア知財当局のイメージといえば、書類を無くす、審査が非常に遅い等々、ネガティブなことばかり。ところが、今回の訪問では、いいところばかり見せられた感もありますが、実務面のみならず、イメージ面での向上、古いマレーシアからの脱却を目指し、相当な努力を続けていることが伺えました。

模倣品事情

マレーシアでの模倣品事情について、少し触れたいと思います。他の東南アジア諸国の例に漏れず、マレーシア国内においても、有名ブランドの模倣品が横行しています。チャイナタウンの Petaling通りは、ニセモノ街として有名。家庭用電化製品、DVD,シャンプーや化粧品等の日用雑貨、スポーツウェア、バッグ、そして酒類までも。

取締りルートの一つとして、MDTCC への申立があります。MDTCCには、模倣品対策のための Enforcement Division があり、模倣品に使われた商標が権利者のものと同一もしくは実質的同一であれば、強制捜索が実施されます。押収した商品の真贋鑑定を経て、刑事訴追へ進めるかの判断がなされるとのことです。

尚、税関での差止は、マレーシアでは全く効果が期待できないと言われています。差止行為は、あくまでも税関の任意であり、有効な差止がなされることはほとんどないとのこと。いずれの現地代理人も、同様の見解でした。

最後に

実働2日の短い訪問でしたが、マレーシアには親日家が多いとの話を実感できた訪問でした。今回の親交が、必ずや日々の業務に生きてくると思います。また、お客様への様々なフィードバックに繋げたいと考えております。唯一の心残りは、いわゆるマレーシア料理を食べる機会がなかったことですが・・・それは、次回のお楽しみとして取っておくこととします。

(商標部 関口)

[MYIPOロビーでスタッフと]
[MYIPO内部の様子]
[ガラス張のヒアリング室]

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