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2013.10.28

柏原 雄人

【中国特許法第四次改正案要旨】 =弁理士協会会長・楊梧氏講演録より抜粋=

中国では、2012年に、イノベーションにより発展を促進すべく、これを達成する知的財産権戦略を実施し、知的財産権保護を強化することが提起され、現在審議中の中国特許法第四次法改正も、この方向性に沿ったものとなっています。審議中、すなわち、法改正案の状況ではありますが、本年9月中国視察ツアーの最終日に弊社が企画しましたセミナーにて、柳沈律師事務所の楊梧氏に第四次法改正の要旨を解説いただきました。楊梧氏は、柳沈律師事務所の所長、中華全国弁理士協会会長、第十二期全人代代表など、さまざまな立場をもたれ、幅広い見地・見識から、第四次法改正についての意見もいただけました。第四次法改正の要旨につきましては、以下のセミナー解説抜粋をご参照下さい。更に、「中国の審査実態」と「中国代理人の増加について」もコメントを頂きましたので、併せて以下に簡単にご報告致します。
日時: 2013年9月13日
会場: Four Seasons Hotel Beijing
講師: 楊所長/柳沈律師事務所

[中国の審査実態]
中国は過去、審査が遅いというクレームを外国から受けてきた。審査促進のために審査官を増やそうとしても、特許庁の人員採用は、民間企業のように勝手に決めることは出来ない。正規職員の増員が困難なため、最近は契約職員の採用を進めている。中国で初めて契約職員を採用したのは、北京特許審査協力センターである。同センターは2001年に設立されて現在は3,000人以上の審査官が在籍しているが、この数字は特許庁の審査官数を上回る。それでも足りないため、北京に続いて、広東省、江蘇省、河南省、湖北省、天律市、四川省も協力センターを設立中だ。既に広東省と江蘇省には、それぞれ1000人の契約審査官がいる。このような協力センターが出来たのは、現在のインターネットの発達があってこそである。

弁理士の立場からは、審査レベルのばらつきを危惧している。一度、特許庁の審査官に審査案件の配分について訊いたことがある。出願企業の所在にあるセンターで審査されるものと我々は想像していたが、回答は、インターネット上でランダムに選んだりするというものであった。従って、皆さん日本企業の出願も、これからは北京ではなく、地方都市で審査が行われることがあり得、この場合には面談が困難になることが予想される。いずれにせよ、この様な協力体制の構築で、審査スピードはずいぶん上がったと思う。現在、特許の審査に要する期間は平均21ヶ月。無審査である意匠・実案も平均3~4ヶ月で登録となる。世界的にも既に十分早いと思うのだが、全人代では更に早くすべきだとの意見が出ている・・・。

[中国代理人の増加について]
現在、代理資格を持つ弁理士は8,368名、事務所は931ヶ所が登録されている。右肩上がりで増えてきているが、出願件数はそれを上回るペースだ。出願総数の70%が代理人をとおしており、代理人不足が出願件数増加の足かせになりかねないと、特許庁幹部は我々にプレッシャーをかけてくる。弁理士試験の難易度を下げるわけには行かないが、増員対策は必要だ。具体的には、従来3科目同時合格が必要であったのを、取り敢えず1科目合格した者には来年(残る2科目のみで)再試験を受けることが出来るように機会を広げた。また論文式筆記試験も従来より試験時間を30分長くした上、その主題もひねったものでなく、基本的・一般的なテーマを選択するようにした。その結果、今までは年間1,000人から1,200人程であった合格者が、昨年は3,000人に増えた。このように我々は、代理人増員ならびにその育成にも力を入れている。

[第四次法改正の要旨]
中国特許法は1984年の起案以来、1992年の第一次改正、2000年の第二次、2008年の第三次と、8年毎に改正されてきた。それらは国際情勢によるもので、外国からのプレッシャーや国際条約加入に関連させたものが多かった。例えば、当初の特許法においては、権利有効期間は15年間であり、医薬品や食料品には特許を付与できなかったが、米国政府の反発を受けてこれらの制限を無くした。続く2000年改正法はWTO加盟に備えたものであり、2008年も色々な国際条約に加盟するために改正を行った。それに対し、第四次法改正は中国政府の要望であり、中国自身のために行われるものと考えている。

第四次法改正の目的として、「法的制度を健全化させ、保護を強化し、イノベーション意欲を向上させる」ことが掲げられ、この目的を達成する方法として、「重点課題に対し解決の措置を提示し、制度を健全化させ、充分に行政法執行及び司法保護のそれぞれのメリットと役割を発揮させる」ことが、掲げられている。重点課題としては、「証拠収集が難しい」、「期間が長い」、「賠償額が低い」、「コストが高く、効果が悪い」、「意匠専利権の保護期間が短い」ことが挙げられている。

「証拠収集が難しい」という課題点に対しては、人民法院及び行政法執行機関に相応の証拠調査収集権力を付与する解決の措置が提示されている。具体的には、第64条での尋問・調査できる場合として、「専利偽称被疑行為」を取り締まる場合に加えて、「専利権侵害被疑行為」を取り締まる場合が追加され、また、封鎖または差押えの対象としても、「専利製品の偽称製品」に加えて、「市場秩序を乱す故意に専利権を侵害する製品」が追加されている。更に、第64条2項にて、「当事者が専利事務管理部門の職権行使を拒否または妨害するものは、専利事務管理部門が警告を行い、治安管理を違反する行為のあるものは、公安機関により法に準じて治安管理処罰を行い、犯罪を構成するものは、法に準じて刑事責任を追及する」ことが、追記されている。

「期間が長い」という問題点に対しては、行政法執行機関の侵害賠償額に対する調停の効力を明確にし、また、無効審判審決の効力発生時及び後続の手続きを明確にする解決の措置が提示されている。具体的には、第60条2項にて「成立した調停協議は人民法院によって法に準じて有効と認定され、一方当事者が履行を拒否し、または全部履行されていない場合、相手側当事者は人民法院に対して強制執行を申請できる」こと、追記されている。また、第46条2項にて、「専利権を無効にするまたは専利権を維持する審決は、公告日より効力が生じる」ことが明記され、新設の第60条4項では「専利権を無効にするまたは専利権を維持する審決が効力を生じた後、専利事務管理部門及び人民法院は該審決に基づいて、専利権侵害紛争を適時処理、審理する」ことが、明文化されている。

「賠償額が低い」という問題点に対しては、懲罰的な賠償制度を増設する。具体的には、第65条にて「故意に専利権を侵害する行為に対し、人民法院は侵害行為の情状、規模、損害のもたらす結果などの要素に基づき、上記二項により確定された損害賠償額を2~3倍に増額することができる」こと、明記されている。

「コストが高く、効果が悪い」という問題点に対しては、行政懲罰により悪意な侵害行為を適時に止めさせる解決の措置が提示されている。具体的には、第60条3項が新設され、「組織的な権利侵害、繰り返しの権利侵害等の市場秩序を乱す故意の専利権侵害行為に対し、特許事務管理部門は法に準じて調査処罰する権利を有する。全国において重大な影響があるものは、国務院専利行政部門が調査処罰を行う。特許事務管理部門により、故意の侵害行為が成立し且つ市場秩序を乱すと認定された場合、侵害者に侵害行為の直ちの停止を命じることができ、侵害製品または侵害行為の実施に用いる専用設備を没収、破壊できる。違法経営額が5万元以上の場合、違法経営額の1倍以上、5倍以下の罰金を科することができ、違法経営額がなくまたは違法経営額が5万元以下のものは、25万元以下の罰金をかすることができる」ことが明記されている。

なお、「意匠専利権の保護期間が短い」という問題点に対しては、10年から15年に延長する解決の措置が提示されている。第42条。

(営業推進部)
[講師の楊梧氏]

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