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2013.11.18

【コラム】 急拡大が見込まれる3Dプリンティング・ビジネス - 知財保有者にとっては「悪夢」になるのか?

いまや一般消費者にとってもすっかりおなじみとなった「3Dプリンタ」。Google検索で “3D printing”を調べると約1億の件数がヒットするといいます。技術進歩とともに(基本特許満了という要素もあり)低価格化が進み、一般消費者を「メーカー」に変える可能性のある3Dプリンタは、新たな「デジタル産業革命」をもたらすのか……。 否、「悪夢」をもたらす!  少なくとも知財の世界では、このような懸念の声が急速に高まっています。

米調査会社ガートナーは、10月6日からフロリダで開催した「ガートナーシンポジウム/ITexpo 2013」で、2018年までに3Dプリンティングは世界の知的財産に1,000億ドルの損失をもたらすであろうと報告しました。この報告によれば、ある欧米のメーカーは、「2015年までには3Dプリンタを使う模倣者により当社の主力製品の知財が盗まれることになろう。これらの模倣者はアジアではなく、我々と同じ欧米市場に住む者たちだ」と予測します。

製造工場を家庭に持ち込むことを可能にする3Dプリンティングには、次のような固有の知財侵害問題が指摘されています。第一にあげられるのが、小規模侵害を発見することの難しさ。また、たとえ発見できたとしても訴訟を提起するだけの費用対効果が見込めないという現実問題です。
一般に知財を保有する製造者の主たる懸念は模倣品の増加にあり、すでに知財保有者にとって模倣品は大きな問題となっていますが、模倣行為は限られた少数の模倣業者によって集中的に行われているのが典型的パターン。的が絞れるからこそ、彼らを突き止め、法的に対応するための投資をするインセンティブが働きます。しかし、3Dプリンティングの場合、消費者それぞれが自分で模倣品の作成を可能にし、販売行為を容易にするため、このような個々の模倣消費者を突き止め、訴訟を提起しても得られるメリットは限られてしまいます。

また、社内弁護士向けに運営されているサイトInsideCounsel(11/12/2013)では、特に消耗品、取り替え部品の家庭内製造の問題を指摘しています。「……たとえ製品自体が特許保護されていても、購入者がその特許製品の効用期間中に摩耗した取り替え部品を作成することを合法とする法理『許容される修理修繕(permissible repair)』への対応が課題となる……」。 

3Dプリンティングをめぐる知財法の問題は、これからも様々な形で現れ、解決へ向けた模索が続けられることになりそうです。 

(IP総研 飯野)

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