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2014.03.24

【米国意匠出願Tips】 CAFC判決紹介(続報・複数実施例)

 米国意匠出願Tips第二回の記事にて、併合出願に対して限定要求を受けた場合の留意点についてお話し、Pacific Coast Marine Windshields, Ltd Malibu Boats LLC事件の地裁判決をご紹介しましたが、この事件について先日、CAFC(アメリカ合衆国連邦巡回区控訴裁判所)による判断が示されました。

CAFCは、今回の事件を意匠権における禁反言の適否に関する初めてのケースと認識しており、特許と同様に禁反言の法理が適用されうることを示しました。ただし、今回CAFCで示された禁反言の範囲は、地裁で示された禁反言の範囲とは異なるようです。

 以下、CAFCの見解が示されるまでの経緯を説明します。

出願・権利化段階
 Pacific Coast社は、以下の実施例を含む、7つの実施例を含めて出願をしましたが、審査の過程で、限定要求が発行されました。限定要求に対する応答では、Fig.1(下図左側、4孔)の発明(意匠)を選択し、その結果権利化されました(USD555,070)。また、Fig.8(下図右側、孔なし)の発明(意匠)を分割出願しました。一方で、その他の発明(例えば、Fig.10、下図中央、2孔)は権利化しませんでした。

地裁
( Pacific Coast Marine Windshields Ltd. v. Malibu Boats, LLC. et. al., 2012 WL 6721060 , M.D. Fla., December 27, 2012)
 Pacific Coastはその後、3孔の被疑製品(下図、中央)に対して、USD555,070に基づく侵害訴訟を提起しました。しかしながら、地裁判決では、被疑製品(3孔)は出願時の発明(全ての実施例を含むもの)と、そこから補正/分割して得られた発明(4孔と孔なし)の間の領域にあり、禁反言を根拠に侵害が問えないと判断されました。
CAFC
(Pacific Coast Marine Windshields Ltd. v. Malibu Boats, LLC et al., No. 2013-1199 , January 8, 2014)
今回CAFCは、意匠における禁反言の適否を初めて検討し、特許と同様に禁反言の法理が適用されると判断しました。ただし、意匠においては、複数の意匠を出願した場合、それぞれの意匠がそれぞれクレームされているだけで、必ずしもそれらの意匠の間をクレームしているわけではないと確認されました。このため、地裁の判断とは異なり、放棄した範囲について、「領域」という概念は意匠の場合にはそもそも不適切であり、単に非選択発明(意匠)を放棄しただけであると判断しました。
今回の具体的なケースについて言い換えると、0孔、4孔を権利化し、2孔については権利化しませんでしたが、0孔と4孔の間の「領域(1孔~3孔)」ついては権利を放棄したと考えるのは妥当ではなく、単に2孔について権利を放棄しただけであるという判断です。

複数意匠を1出願に併合することは、いくつかメリットもありますが、今回のケースは今後の実務に考慮すべき判例となりました。 意匠出願をご検討の際はぜひともNGB特許部までご相談ください。

(記事担当: 特許第1部 中辻)

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