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2015.03.18

【coffee break】 ベトナム放浪記 1994 [後編]

本稿では、NGBの営業マンがおよそ20年前、観光で単身訪れたベトナムで「ひと仕事」して来た顛末をご紹介します。お仕事の合間、コーヒーブレイクに、どうぞ。 =>前編はこちら
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HOAに「 Patent Office へ連れて行って欲しい」と頼んだのには訳がある。当時はNGBでも、ベトナム出願などのお客様からのお問合せが非常に少なく、現地代理人との接点も希薄だった。そんな最中「あいつがベトナムへ旅行に行くらしい」と聞きつけた役員の一人が「ベトナムに行くなら特許事務所の一つでも拾って来なさい」と(悪魔の微笑みを湛えつつ)言って来たのだ。

勿論、そんな冗談を真に受けたわけではない。しかし訪問する国の活気・エネルギーを感じとるには、何か宿題・タスクがあった方が分かりやすい。ゼロから特許事務所を探して来るタスクなんて、ベトナムという国を「試す」のにお誂え向きだ。とはいえ訪問先はホーチミン市。特許庁は恐らく遠く離れた首都のハノイにあるだろう。そもそもホーチミン市に特許事務所なんてあるのか?まあ、失敗したらそれはそれで面白い。そんな気持ちから、「特許庁」とも「特許事務所」とも解釈され得る「 Patent Office」という単語を使ってみた訳だ。

HOAが「 Patent Office」をどう理解したのか、どんなコネクションを使ったのかは解らない。突然「アポが取れた」というので半信半疑でついて行く・・・コンサルティング会社だって?やはり誤解しているな。しかし先方から手渡された会社案内の中に、見慣れたフォーマットの出願手数料料金表を見つけた瞬間、ここが間違いなく出願代理業務を請け負う特許事務所であることを確信。このときばかりは鳥肌が立ったのを覚えている。帰国後は出社するなり、あの役員に真っ先に(もちろん天使の微笑で)報告に行ったことは言うまでもない。

それ以降20年の間に、お客様からのお問合わせ・ご依頼も大分増えてきた。ベトナム代理人ネットワークも厚くなり、お客様の現地訪問をアテンドしたりするようにもなった。情報収集のためのスタッフ派遣も、昨年のASEANプロジェクト2014で通算4回目となる。

筆者もその後、数年連続で夏休みはホーチミン市に通い、定点観測を続けることになる。車線という概念すらなかった道路にやがて信号が灯り、店舗にはガラスのショーウィンドウが出来た。無機質で威圧的だった空港とその職員も、いつしか観光客を暖かく迎えるように変わっていった。

HOAとはベトナム訪問の都度会っていたが、あるときから音信不通になった・・・と思ったらまたばったり再会したり、色々ありながらくされ縁は続いている。2010年に新聞で『 Hard Rock Cafe がホーチミンに初出店』とのニュースを読んだときは、あのニセモノTシャツのことを思い出して久々にメールを書いた。

 「そちらでも Hard Rock Cafe がオープンしたようだね。繁盛してるかい?」
 「あの店はいつも若者で賑わっていたけど、しばらく閉店しててね」

若者で賑わっていた? しばらく閉店?・・・どうやら Hard Rock Cafe、Tシャツどころか店舗まるまる一軒、ニセモノに乗っ取られていたようだ。

(営業推進部 柏原)

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