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2015.10.20

【中国訪問記2015】 [1] 北京知識産権法院(知財裁判所)

NGBでは今年も中国専利信息年会(PIAC)開催にタイミングを合わせて、9月13日 (日) – 17日 (木) のスケジュールで現地視察ツアーを催行しました。本稿では、視察先の一つである北京知識産権法院訪問記をご紹介します。

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朝9時半、訪問団16名を乗せたバスは予定どおり北京知識産権法院に到着した。建物の前で記念撮影をして速やかに入館。面談室のテーブルには、事前に申請しておいた訪問者一人ひとりの名札と中国茶が予め置かれ、面談が始まってからも始終和やかなムードで双方の紹介や意見交換が行われた。法院側からのご出席者は審監庭庭長・張暁霞氏ほか全4名。張庭長のお話の一部を抜粋して、以下にご報告する。

■設立
当法院は昨年10月6日に設立されて以来、お蔭さまで各界から注目を集めています。設立当日のセレモニーには中央政府の高官・司法関係者も多数ご来場頂きました。以降も海外関係者からも関心をお持ち頂き、日本からは某業界の訪問を既に受けています。当法院は中級法院であり、高級法院ではないので一審も扱います。当法院の名称は「北京知識~」であって「北京市~」ではないので、将来的には高級法院に昇格する可能性もあります。北京市には当法院の他に4つの中級法院がありますが、当法院設立以降、一般の中級法院は、知財案件を一切受理しなくなっています。

■目的
当法院の機能・目的としてはまず2つを考えています。一つ目は中国の発展を知財面からサポートすること。二つ目は、色々な面で改革を行い、将来的に中国裁判所の模範モデルとなることです。また、当法院は最高裁判例指導センターとしての機能も付与され、判例DBも構築中です。いずれは判例に拘束力を持たせ、過去の判決を尊重しながら審理していくことを目指しています。 日本も同じようなやり方を取っておられるようですが、実例などありましたら教えて頂きたいです。

■裁判官
設立当初の裁判官は、北京市高級人民法院の試験で選抜して一般の法院から22名に来て頂きました。うち4名が庭長です。その後、事件受理件数も増えて来たため、最近新たに20名ほどの裁判官を採用しました。そのうち13名が、助手職から選抜・昇格した裁判官です。 当法院には院長が3名在席していますが、いずれも同時に裁判官です。現在、在席する裁判官はトータルで45名、院長でも庭長でも全て実務経験を持っています。

■調査官
設立前より、上級の長官から、知財専門の裁判所なのだから技術系要員を確保しておくようにと指示を受けており、法廷には調査官の席も設けました。しかし制度は作ったものの、技術系のエキスパートを招けるだけの経費が当法院にはなく、まだ未実施の状態です。代わりに陪審員と、中国特許庁から派遣交流スタッフとして一年間駐在している方々に技術調査官の役割を担って頂いています。当面の間は外部の技術コンサルタントに頼らざるを得ず、この点も模索中です。

■むすび
先述のとおり、裁判官は45名まで増えました。うち13名は助手から昇格したのですが、今度は助手の補充が追いつかず、審理スピードはなかなか上がりません。裁判官一人あたりのノルマが多い中、新設の法院なので海外の裁判所・関係者との交流・意見交換の機会を重視しています。これからもどうぞよろしくお願いします。

予算難に悩みつつも理想を持って改革に取り組み、判例重視へのシフトなど新しい試みに取組もうとしている北京知識産権法院の動向に今後も注視していきたい。正味2時間を割いて貴重なお話と有益な情報交換の機会を頂いた張庭長には、この場を借りて厚くお礼を申し上げます。

(営業推進部 柏原)

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