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2016.02.12

中国科学技術部が「ハイテク企業認定管理弁法」の改正法を発表

日本技術貿易株式会社 特許第1部・特許第2部
中国弁護士・中国弁理士・日本国弁理士
張 華威

改正の経緯
 2008年に「ハイテク企業認定管理弁法」(以下、単に「旧法」という)が制定されて以来、2015年末までにハイテク企業認定を受けている企業は7.9万社にのぼった。ハイテク企業の認定を受けると、ハイテク企業証書の発行日に属する年度から、企業所得税が通常の25%から15%の優遇税率となる。統計によれば、ハイテク企業の2014年度の総収入は前年比12%増となり、ハイテク企業の研究開発支出は全国企業の研究開発経費の半分以上を占め、中国経済の成長に大きく貢献した。
 しかしながら、産業の発展に伴い、中小企業への補助の強化、技術分野の範囲の調整、手続きの簡易化などの必要性が顕在化するようになり、「ハイテク企業認定管理弁法」の改正が検討されてきた。そして、中国科学技術部は、2016年1月29日に改正した「ハイテク企業認定管理弁法」(以下、単に「改正法」という)を公布した。改正法は2016年1月1日まで遡って施行され、同日に従前の同法は廃止となる。

 中国科学技術部公式サイト:
 http://www.most.gov.cn/tztg/201602/t20160204_123994.htm

改正の主な内容
改正点は主に(1)認定条件の緩和、(2)認定手続の簡易化、(3)管理監督の強化、(4)ハイテク分野の範囲の調整の四つの方面であり、以下に重要な改正内容を取り上げて紹介する。

1.知的財産権の保有条件の調整(改正法第11条2号)
 旧法では、知的財産権の保有条件について、「直近3年間に自主研究開発、譲受、贈与の収受、買収合併などの方法、又は5年以上の独占許可の方法を通じて、その主たる製品(サービス)の核心技術に対し自主知的財産権を保有していること」が要求されていた(旧法第10条1号)が、改正により、「企業が自主研究開発、譲受、贈与の収受、買収合併などの方法により、その主たる製品(サービス)に対して、技術上核心的に支持する役割を有する知的財産権の所有権を獲得していること」とし、知的財産権を直近3年間に獲得しなければならない制限を削除するとともに、企業の自主研究開発及び技術譲渡を促進するために、5年以上の独占許可による獲得方法を認めないこととした。
 なお、現行の「ハイテク企業認定管理作業の手引き」によれば、核心的な自主知的財産権(30点)、科学技術成果の転化能力(30点)、研究開発の組織的管理水準(20点)、成長性指標(20点)の四項目によって評価され、計100点のうち70点以上獲得することがハイテク企業認定の条件となっている。そのうちの「核心的な自主知的財産権」については、特許権を1件以上または実用新案権、意匠権、ソフトウェア著作権、集積回路配置利用権、新種の植物等の核心的な知的財産権(商標を含まない)を6件以上獲得していれば30点のうちの24点以上を獲得できることとなっている。ただし、改正法に伴う新しい「ハイテク企業認定管理作業の手引き」が近々発表されることが想定されていることに注意が必要である。

2.技術職従業員の割合条件の緩和(改正法第11条4号)

 中国では、自社で研究開発するよりも共同開発や委託開発が盛んに行われている傾向があるが、旧法では、申請人たる企業が「大学専科以上の学歴を有する技術職従業員が企業の当年の総従業員数の30%以上を占め、そのうち研究開発に従事する技術職従業員が企業の当年の総従業員数の10%以上を占めること」が求められており、業界によってはハードルが高い問題があった。そこで、今回の改正により「研究開発または関連する技術イノベーション活動に従事する技術職従業員が、当年の総従業員数の割合の10%を下回らない」という条件を満たしていれば足りることとし、条件が緩和された。

3.研究費用に費やす割合条件の緩和(改正法第11条5号)
 旧法では、直近一年間の売り上げ収入が5000万元未満の企業の場合、直近三会計年度研究開発費の総額が売上収入の総額に占める割合が6%を下回ってはならないとされていたが、より多くの中小企業が条件を満たすようにするため、要求する上記割合を5%に引き下げた。
 なお、直近一年間の売上収入が5000万元以上かつ2億元未満の企業及び2億元以上の企業に要求される上記割合はそれぞれ依然として4%と3%であり、旧法の条件を維持している。

4.認定手続の簡易化(改正法第12条3号、第17条)
 旧法では、認定を経たハイテク企業は「ハイテク企業認定管理作業ネット」に15営業日公示され、異議がなかった場合において、認定結果が公告され、ハイテク企業証書が発行されることとなっていた。今回の改正により、上記公示日数が10営業日に短縮され、早期にハイテク企業証書を取得できるようになった。
 また、企業名称を変更するときは、旧法では、科学技術部、財政部、税務総局が組織した全国ハイテク企業認定管理作業の指導チーム事務室に対する届出が必要であった(旧法第14条2項)が、改正法では、名称変更の3ヶ月以内に各地方の認定機構に報告すればよいこととなった。

5.監督管理の強化(第15条)
 改正法により、科学技術部、財政部、税務総局は抜き取り検査と重点検査のメカニズムにより各地方の認定機構によるハイテク企業認定作業についての監督管理を強化し、問題のある認定機構に対する制裁規定が設けられた。

6.企業所在地変更の場合のハイテク企業資格承継(第18条)
 ハイテク企業認定は、各地方の認定機構により行われるが、企業全体が認定機構の管轄と異なる地域に移転した場合、ハイテク企業資格の有効期間内であれば、移転先の地域においても、資格の有効性が認められることとなった。なお、企業の一部が移転した場合は、移転先の地域の認定機構により再度認定しなければならない。

7.ハイテク分野の範囲の調整
 経済や技術の発展に伴い、「ハイテク」と認められるべき新しい技術分野が出現し、「ハイテク」と認められるに値しなくなった古い技術も存在するようになった。そこで、ハイテク分野の範囲の調整を行った。新しいハイテク分野については、中国科学技術部公式HPによりダウンロードすることができる。

まとめ
 今回の「ハイテク企業認定管理弁法」の改正により、ハイテク企業認定のハードルが低くなり、特に中小企業にとって有利になると思われる。また、認定手続が簡易化し、申請人にとっては、認定が簡便になった。
 しかしながら、知的財産権の5年以上の独占許可による獲得方法が認められなくなったことは、知的財産権を親会社に集約する傾向がある日本企業にとって、中国子会社での権利取得や中国子会社への権利譲渡などの新しい対策を考えなければならなくなる。
 なお、科学技術部、財政部、税務総局は改正法に伴う新しい「ハイテク企業認定管理作業の手引き」の制定を急いでおり、注目を集めている。

以上

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