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2018.11.21

【中国視察2018】 [6] 深セン税関

NGBはクライアント企業7社(8名)のご参加を得て、9月3日 (月) – 7日 (金) の日程で中国視察ツアーを催行した。 本稿では深セン税関との交流の模様を抜粋してご報告する。

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深セン税関への訪問は一昨年、昨年の視察ツアーでの訪問に続き3回目で、深セン税関の法規部門のユァン副所長、ワン知財課長、知財担当のヨウ様の3名にお会いさせて頂き、深セン税関における知的財産の取り締まりについて意見交換を行った。冒頭にユァン副所長より、先進国の企業の皆様を迎えることができ非常に光栄である、とのお言葉を頂いた。深セン税関での意見交換は1時間の予定であったが、1時間を超えるミーティングとなったにもかかわらず、税関の皆様は快く最後まで丁寧にご対応して下さり、感謝するばかりであった。

[深セン税関について]
深セン税関では1996年から知的財産の取り締まりを行っており、中国で最初に知的財産の取り締まりを行った税関である。深セン税関の管轄で知的財産の取り締まりを行っている港は15港あり、ダーボン港の税関と陸上のホァンカン税関の2か所だけで知的財産に関する案件の取扱量が世界第4位である。ちなみに、深センの郵便物の取り扱い量は世界第1位である。深センの陸上、海上、空港での税関業務は増加の一途を辿っており、かつ、知的財産に関する案件のルートも多方面にわたっており、知的財産に対する保護への関心が高まっている。

[税関での知的財産保護について]
中国における税関での知的財産の保護は2種類あり、職権による保護と申請による保護の2種類である。職権による保護は、税関の職員が自ら調査し模倣品と疑われる製品が発見された場合、権利者に連絡し、確認してもらう。申請による保護は権利者自らの申請により保護を求める手法である。

税関の知的財産権の保護主体については主に3種類あり、商標権、専利権、著作権で、その他に標識の保護があり、一例としてはオリンピックの標識が挙げられる。保護の措置をとる段階は、主に貨物の輸出入の段階で保護を行っており、更には、海外の税関と協力して行うこともあるが、この協力には権利者からの情報提供が一番重要である。

[税関の業務改革]
中国の税関では「全国通関一体化システム」を採用しており、深セン税関のみの業務を行うだけではなく、全国各地の税関からの指揮や指示を受けて業務を行っている。模倣品の情報は各地の税関と共有することができる体制となっており、この情報網を利用するには、権利者からの情報提供が重要となる。

通関にかかる時間についても短縮化が進んでおり、昔の3倍の速さで通関作業を終えることができるようになっている。スピード化が進む理由としては、種々の検査機械を利用して通関作業を行い、そのうえ、通関に用いる検査機械も日々進化している。更には、通関に関する情報はデータベース化しており、データベースの情報を分析することで通関作業の効率が向上している。

[質疑応答]
深セン税関のユァン副所長より深セン税関や中国税関全般についての説明後、質疑応答の時間が設けられたため、視察団から出た質疑のいくつかについて掲載する。

Q1:税関登録の効果と税関登録の件数が少ない理由について伺いたい。
A1:税関の組織構成については、主に3つのレベルから成り立っている。1番目は税関総所で北京にあり、2番目は直属の税関で全国に42か所で、税関総所の下にあり、深セン税関も直属税関である。更にその下に従属税関があり、深センでは27か所を管轄している。税関登録する方法としては、税関総所のホームページでインターネット登録が可能であり、必要書類をアップロードして無料で申請ができる。企業単位で登録するのではなく、権利を登録するので、例えば、図形商標と文字商標では各権利を登録することができる。登録件数が少ない理由はいくつか考えられるが、一番の原因は、権利者が税関登録について良く理解できてないことだと考えられる。税関としても宣伝に力を入れてなかった問題もあり、また、権利者の会社の知財戦力のところで考慮頂けなかったことも原因と考えられる。

Q2:深センでの通関検査について伺いたい。
A2:深センの税関で一日に通るトラックの量は約20万台で、深セン税関では全国の通関量の53%を占めている。空港で税関を通るとわかるが、旅客一人一人の手荷物は調べられないように、トラック全てを調べるのは非現実的で、交通や人が通る効率を考えれば、ランダムに調べざるを得ない。そのような状況ではあるが、リスクが比較的高いと判断すれば、そのトラック1台を徹底的に調査することはある。

Q3:税関で侵害品と疑わしい製品が発見された場合の真偽判定のために与えられる時間を知りたい。
A3:製品検査で一番多いのが商標であり、商標の場合は税関調査官が写真を撮影する。商標の写真や、洋服の場合はタグの写真をとり、税関登録した時の住所(多くは、代理人)に送り、本物か判断してもらう。真偽判定の期間は、法律に定められており、非常に厳しく3営業日である。特許などのように複雑・技術的要素の絡むものは、代理人等が税関まで出向き、実物をみて判断する。

Q4:権利者から税関への情報提供は可能か?
A4:税関で品物を差し押さえるに際し、税関としては、それより前の段階、或いは、それより後の段階での権利者とのコミニュケーションを取ることが非常に重要である。例えば、前の段階では、全ての貨物について税関検査は不可能で、ランダムに検査対象を決めているが、その中で判断要素となるための情報、例えば、どのポートで輸出されるのか、或いは、輸入されるのか、どのようなルートを使って、例えば、陸上であったり、海上であったり、或いは、輸出・輸入業者の名前やその貨物が通過する時間や品物の名前や品番などの細かい情報を提供すれば税関で引っかかる可能性は大幅に増えると考える。次に、発見後の段階は非常に重要である。例えば、ある製品が見つかった場合、侵害品か判断することになるが、その判断に必要な書類、資料、情報を積極的に提供して頂く必要がある。行政摘発や訴訟などは証拠のハードルが高いので侵害の事実を証明するための細かい情報を提供することが重要ある。税関は水際での差し止めが役目であるが、実際の目的は侵害品を製造している源である製造者を叩くことが最も重要である。税関としても、国家市場管理局の執行部隊や公安、警察とも連絡を取っている。このようなことは、権利者の協力が無いとできないことであり、非常に重要である。中国の税関は海外の税関とも協力を進めており、点の保護のみならず、線での保護、ルート全体での保護をはかっている。

Q5:製品の数が少なく、税関検査の頻度も月1回程度で、更に、製品が産業用機械の部品でマイナーではあるが、税関検査をきちんと対応していただけるのか?
A5:税関としては、登録すれば対応するというスタンスである。会社の規模が小さい、貨物の量が少ないというのは税関検査において特に影響はしない。重要なことは、製品の数よりも、侵害品の数で、侵害品の数が多い場合には特に注意を払う必要がある。侵害品の特徴や情報を提供頂ければ、より強力な保護を受けられる。

Q6:模倣品のルートを調査したところ、模倣品が中国で製造され、東南アジアで販売されているようであった。模倣品が中国から海外に出るときは、模倣品にはラベルが貼られてなく、模倣品が東南アジアに出回る際に、模倣品にラベルを貼って販売しているようであり、このようなケースでは深センの税関と相談したり、対応を協議することは可能か?
A6:中国では、このような問題は多く、中国の税関が厳しいため、中国での製造時にラベル(商標)を貼らずに海外に行ってからラベルを貼るような現象が起こっている。このような事態に対応するため、中国では今年の1月1日より輸出する貨物に対しブランドの記入を行う「出入国クレーム」を要求しているが、大半の貨物はノーブランドで申告してくるのが現状である。このような状況において、製品(模倣品)にラベルが貼られてない以上、商標権侵害として製品(模倣品)を差し押さえることはできないが、アドバイスとしては、製品とラベルが剥離できないような形状や工夫が重要である。税関では専利権についても水際での取り組みを行っているが、専利権の確認が難しいのが現状である。

(営業推進部 中村)

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