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2019.11.25

【特許・意匠ニュース】ブラジル、PPHの技術分野限定を撤廃予定

1.背景
 ブラジル知的財産庁(INPI)は、特定の他国特許庁との間で特許審査ハイウェイ(PPH)試行プログラムを実施していますが、これまではINPIが受け付けるPPH申請の対象となる出願は相手庁ごとに技術分野の制限がありました。例えば、日本国特許庁(JPO)とINPIとの間のPPHにおいて、INPIが受け付けるPPH申請の対象となる出願の技術分野はIT分野、自動車関連技術を中心とした機械分野および化学・バイオ分野の一部に限られていました。

2.PPHの運用変更
 INPI は2019年10月22日にPPHの運用変更に関わる決議(Resolution 252/19)を公布しました。本決議の発効により、1. これまでのPPHに関する複数の決議(一般規則)が破棄され、本決議に定める規則に一本化されます。また、2. INPIが受け付けるPPH申請の対象となる出願の技術分野制限が撤廃されます。
本決議の発効は2019年12月1日の予定です。

 以下に、決議(Resolution 252/19)で定められたPPHに関する規則の概要を示します。

i) PPH試行期間
・2019年12月1日から2022年11月30日まで

ii) PPH申請の受付件数制限
・1年あたり最大400件まで
・1出願人あたり1か月に1件まで

iii) PPH申請の技術分野制限
・制限なし

iv) PPH申請の要件
・PPH申請の少なくとも18か月前までに出願する、または早期公開請求を行う必要がある。PCT出願の場合は、WIPOによって既に公開されている必要がある。
・審査費用が支払われている必要がある。
・他の審査促進プログラムを使用していないことが求められる。
・実体審査が開始されていないことが求められる。
・PPH申請後、INPIがPPHプログラムへの参加に関する決定を下すまでの間は、出願人は対象となる出願を補正または分割することはできない。
・対象となる出願の属する特許ファミリーにおいて、少なくとも最初の特許出願が、INPIもしくはINPIとの間でPPHを開始している国または地域の特許庁(*)(以下、「他特許庁」)に属している必要がある。PCT出願の場合は上記特許庁が受理官庁である必要がある。
・対象となる出願の属する特許ファミリーにおいて、他特許庁が、審査において特許性を認めていることが求められる。
・対象となる特許出願のクレームには、同じファミリーの出願において、他特許庁により特許性があるとみなされたものと同等またはそれよりも減縮した主題を記載する必要があり、調査/審査が行われていない主題を含むことは認められない。
・補正書を提出し、対象となる出願のクレームを他特許庁が認可したものに合わせる必要がある。この補正はブラジルにおける補正要件を満たす必要がある(審査請求後は、新たなカテゴリーのクレームを追加することはできず、減縮補正のみが認められる)。
・出願人は、ブラジル出願の新たなクレームと、他特許庁が認可したクレームとの相関関係を示す表を提出する必要がある。この表は、ブラジル出願の新たなクレームが、他特許庁により認可されたクレームの翻訳であるという旨の宣言で代替することができる。

 INPIは特許審査バックログの解消に向けて予備庁指令の発行に取り組んでいることは以前ご案内の通りです(https://www.ngb.co.jp/resource/news/3498/)。PPHの対象拡大は特許審査バックログの解消のための異なる手段として機能することが期待されます。

* 現時点でのINPIとの間でPPHを開始している国または地域の特許庁は以下の通りです。
米国特許商標庁(USPTO)、日本国特許庁(JPO)、南米諸国の産業財産における地域協力システム(PROSUL)参加国(アルゼンチン、チリ、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、パラグアイ、ペルー、ウルグアイ)庁、欧州特許庁(EPO)、中国国家知識産権局(CNIPA)、英国知的財産庁(UKIPO)、デンマーク特許商標庁(DKPTO)

(参考)
・Resolution 252/19
http://www.inpi.gov.br/sobre/legislacao-1/Resoluo2522019.pdf

(記事担当:特許第2部 桂・峰岸)

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