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2020.10.27

【特許・意匠ニュース】 米国、当事者系レビュー(IPR)の対象となった特許の「明細書中の陳述」に関する取扱いを発表

 米国特許商標庁(USPTO)は、当事者系レビュー(Inter Partes Review、IPR)における新規性または自明性違反に基づく取消理由の根拠となる「特許または刊行物からなる先行技術」に関するガイドラインを2020年8月18日付で発表しました。IPRの対象となった特許の「明細書中の陳述」を根拠とすることのみで当事者系レビューを開始することはできない旨が明確になりました。

詳細
 当事者系レビューの請求人は、「特許または刊行物からなる先行技術」を根拠とする新規性または自明性違反のみに基づいて、対象となる特許の1以上の請求項の取消を請求することができます(米国特許法第311条(b))。

 従来、IPRの対象となる特許の「明細書中の陳述」(「出願人が自認した先行技術(Applicant Admitted Prior Art)」とも呼ばれる。例えば、明細書中の「周知である」、「従来の」、「先行技術」、「当業者は容易に…を理解するであろう」の記載)が、同条中の「特許または刊行物からなる先行技術」に該当するか否かは、特許審判部(Patent Trial and Appeal Board、PTAB)内で判断が分かれていました。

 このたび発表されたガイドラインでは、IPRの対象となる特許の「明細書中の陳述」が、同条中の「特許または刊行物からなる先行技術」には該当せず、「明細書中の陳述」のみを根拠として当事者系レビューを開始することはできない旨が明確となりました。これは、「明細書中の陳述」が「特許または刊行物からなる先行技術」には該当しないとしている査定系再審査(Ex Parte Reexamination)の実務にも沿った内容となっています。

 なお、1以上の特許または刊行物からなる先行技術を根拠としている場合には、その先行技術に加えて、IPRの対象となる特許の「明細書中の陳述」を当業者の一般知識のような証拠として利用できる旨もガイドラインにて言及されています。その具体例として、ガイドラインには、IPRの対象となる特許の「明細書中の陳述」を、(1)先行技術に開示されていないクレーム限定の補完、(2)特定の開示を組み合わせるための動機付け、又は、(3)当業者の知識の証明、のために利用することが例示されています。

(参考)
USPTO発表のガイドライン

(記事担当:特許第1部 小林)

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