TOPページ知財情報【最近よくあるご質問】 ロンドン協定について  ※追記あり(2013年7月24日)

【最近よくあるご質問】 ロンドン協定について
 ※追記あり(2013年7月24日)

2008/02/14 欧州

お客様から頂いた各種お問合せに対し、渉外部員が担当部門の協力を得て、お答えします。
今回のご質問は:
「ロンドン協定」について教えて下さい。

ロンドン協定は、EPC(欧州特許条約)加盟国が任意の締結資格を持つ“条約内条約”で、その本質は、EPCで保証されている認可明細書全文を自国公用語へ翻訳するよう要求出来る権利を、締結国は互いに放棄するという合意です。本年1月29日にフランスが批准書を寄託したことによって発効条件が整い、来る5月1日付で発効することが正式に決まりました。ロンドン協定の締結国は、使用する公用語によって2つのグループに分類され、それぞれ異なる義務が課せられています。以下、EP出願の手続き言語は英語であるとの前提に立ってご説明致します。
->関連記事(2007年12月14日)

公用語が英語・独語・仏語のいずれかである国(第1条 第1項)
ロンドン協定第1条第1項では、「EPO公用語の一つを自国の公用語とする締結国」は認可明細書翻訳文の請求を「免除すべし」と定められています。2月14日現在、この条文に該当する締結国はイギリス・ドイツ・フランスの他、リヒテンシュタイン・ルクセンブルグ・モナコ・スイスの計7ヶ国です。これらの国々への移行に当たっては、認可明細書全文を独語/仏語へ翻訳する必要はなくなり、大幅なコスト削減効果が期待出来ます。ちなみに登録クレームの翻訳提出は各国特許庁ではなくEPO自体が要求していますので、引続き独語/仏語の双方に翻訳する必要があります。

公用語が英語・独語・仏語のいずれでもない国(第1条 第2項・第3項)
一方「EPO公用語の一つを自国の公用語としない締結国」は、英語・独語・仏語のいずれか一つを予め選択・指定します。そして、認可されたEP出願がその指定した言語で手続きされている場合のみ、認可明細書翻訳文の請求を「免除」するよう求められています(第1条第2項)。指定した言語以外の2言語で認可されたEP出願については、従来どおり自国公用語への翻訳を要求することが出来ます。

現在の締結国のうち公用語が英語・独語・仏語のいずれでもない国は、クロアチア・アイスランド・ラトビア・オランダ・スロベニア・デンマークの6ヶ国ですが、EPOのHPによれば、クロアチア・アイスランド・オランダ・デンマークの4ヶ国が英語を指定しています(正式には未締結ながらスウェーデンも早々に英語を指定済み)。残りの2ヶ国を含め、今後追従して締結する多くの国が英語を指定することが、予想出来ます。

※2013年7月24日追記(赤字部分)
2008年5月1日の発効以降に加盟した国は4ヵ国、いずれも公用語は英語・独語・仏語のいずれでもありません。そのうちフィンランドとハンガリーは英語を指定していますが、リトアニアとマケドニア、ならびに発効当初の加盟国であるスロベニアとラトビアは依然として、いずれの言語も指定していません。


ただし、クレームについては、自国公用語への翻訳を要求する権利が留保されていますので(第3項)、いずれの国においてもクレームの翻訳は引続き必要であると思われます。

出願戦略への影響:
欧州地区での権利化を考える場合、ロンドン協定発効によってもたらされるコストダウン効果は非常に高く、ある試算によれば、1ヶ国あたり(1言語あたり)凡そ40万円のセーブが可能です(明細書頁数:35、翻訳費用70ユーロ/頁と仮定)。こうしたコストメリットを享受しつつ、指定国の追加、出願ルート変更(ナショナル出願からEP出願へのシフト)、更にはEP出願自体の件数増加等、ご検討されてはいかがでしょうか。

調査業務への影響:
一方、ロンドン協定の発効を歓迎しているのは、私達日本企業や英米の企業に限りません。独語圏や仏語圏の出願人も同様に、英訳作業が不要になって喜んでいることでしょう。そこで独語/仏語に精通していない(と勝手に決め付けてゴメンなさい)日本企業の調査担当者にどのような影響が出るのか、その可能性を検証してみます。

そもそもEP出願の中で独語/仏語が占める割合はどの程度なのか?渉外部ではIP総研の協力を得て、2007年の登録案件(総件数55671件)に基づき、WPIを使ってデータをとってみました。

  EP登録特許(英語)・・・・・38,360件 (69%)
  EP登録特許(独語/仏語)・・・・・17,311件 (31%)
  EP登録特許(独語/仏語)のうち
  日本/米国の対応がないもの・・・・・6,403件 (11.5%)

結果、全EP出願中、独語/仏語を使用している案件がおよそ3割。そのうち対応出願国としてアメリカも日本も含まれていない案件が全EP登録中11.5%を占める6,403件(*)存在することが分かりました。単純に計算すれば、EP公報10件に1件がドイツ語/フランス語によって記載され、対応出願の英文/日本文から発明の全貌を理解することも出来ず、発明の詳細を理解するための手がかりは公報記載の英文クレームのみということになります。今まで、ロンドン協定が発効するまでは、出願人が提出した明細書の英訳文をイギリス(等)の特許庁から入手することも可能ではありましたが、今後はその英文明細書自体が存在しません。今後、調査業務の中で運悪くそのようなEP公報と出会ってしまった際には・・・・どうぞ迷わず日本ビジネス翻訳(株)までお問合せ下さい。独文和訳・仏文和訳のいずれにつきましても、まずは概算費用のお見積をご提示させて頂きます。

以上

*ちなみに6,403件のうち、Top 10社は次のとおり。圧倒的に自動車関連メーカーが多いようですね。
SIEMENS AG (262件)、BOSCH GMBH ROBERT(203件)、BAYERISCHE MOTOREN WERKE AG (98件)、VOLKSWAGEN AG (93件)、RENAULT SAS (80件)、PEUGEOT CITROEN AUTOMOBILES SA (78件)、BSH BOSCH & SIEMENS HAUSGERAETE GMBH (65件)、VOITH PAPER PATENT GMBH (54件)、DELPHI TECHNOLOGIES INC (52件)、AUDI AG (40件)

(渉外部 柏原)

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