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2021.04.27

顧問:張 華威

中国:2020年度中国知財訴訟統計報告書を発表 ~コロナ禍においても特許訴訟は対前年比28%増~

中国最高人民法院は「中国法院知的財産司法保護状況(2020年)」(以下,「白書」という)を発表した。「白書」によれば、2020年の全国人民法院の各種知的財産関連事件(第一審,第二審,再審を含む)の新受件数は525,618件(対前年比9.1%増)であり、既済件数(前年からの繰越事件を含む、以下同じ)は524,387件(対前年比10.2%増)であった。

上記各種知的財産関連事件のうち、最高人民法院の民事事件の受理件数と既済件数はそれぞれ3,470と3,260件であり、2019年に比べそれぞれ38.58%増と64.98%増という結果となった。2019年から最高人民法院の知的財産法廷が技術系事件の控訴審を集中的に審理することになったことが次第に既済件数に反映され始めていると考えられる。<!– (最高人民法院の控訴審集中管轄の解説記事: https://www.ngb.co.jp/ip_articles/detail/1617.html) –>

地方各級人民法院の民事第一審事件の新受件数と既済件数はそれぞれ443,326件(対前年比11.1%増)と442,722件(対前年比12.22%増)を記録した。上記新受件数の内訳は以下のとおりである。
* 専利(特許権、実用新案権、意匠権を含む)は28,528件(対前年比28.09%増)
* 商標は78,157件(対前年比19.86%増)
* 著作権は313,497件(対前年比6.97%増)
* 技術契約は3,277件(対前年比4.53%増)
* 競争関連民事事件は4,723件(対前年比14.41%増)
* その他知的財産民事紛争事件15,144件(対前年比34.96%増)

2019年では競争関連民事事件の件数が小幅減となっていたが、2020年は知的財産権の全分野において増加の傾向がみられ、特に専利の伸び率が際立つ結果となった。

上記統計データを示すグラフは以下のとおりである。

[第一審民事新受事件の種別内訳]

上記からわかるように、2020年はコロナ禍の影響が最も大きかった一年であったにもかかわらず、中国では訴訟件数の増加に歯止めがかからなかった。特に上半期は対面による開廷審理が制限される時期もあったが、オンライン審理などの代替手段が全国的に導入され、下半期は新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込むことに成功し、正常な訴訟活動が可能となった。

2021年6月1日から施行される専利法の第4次改正には、裁量に基づく賠償額の引き上げ(10~500万人民元)、懲罰的損害賠償制度の新設(1~5倍)、立証の容易化(書類提出命令の明文化)、行政官庁に対する専利権侵害における強制執行力の強化、部分意匠制度の確立、存続期間延長制度の導入、消滅時効の延長などの内容が含まれ、今後も一層プロパテントが推進され、出願件数及び訴訟件数の増加が見込まれる。権利者側に有利な環境づくりが進められていく中、積極的に権利化を行い、権利者としての地位を確保することは肝要であるのは言うまでもない。また、訴訟リスクが一段と高くなっていくことは明らかであり、防衛的な公開や証拠の保存を行うことも今まで以上に重要になると思われる。

当社では、中国における専利・商標の権利化サポートをはじめ、中国の公証役場を利用した防衛公開の証拠保存サービス及びトラステッド・タイムスタンプ(中国名「可信时间戳®」)のサービスを提供している。また、より迅速かつ分かりやすい情報発信を実現するために、2020年から公式Youtubeチャンネルを開設したので、参照されたい。

Youtubeチャンネル:
https://www.youtube.com/channel/UCJxeBYK3FlJ3goWqY5b4Twg
トラステッド・タイムスタンプ:
https://www.youtube.com/watch?v=EFKQyKqAScQ
特許ワールドツアー中国編:中国弁理士会名誉会長を独自取材―2020年振り返りと今後の展望
https://www.youtube.com/watch?v=hV8zXQYE1jM
専利法第4次改正の内容と解説:
https://www.youtube.com/watch?v=985LXN4xanI&list=PLVEljaQIOnAfWVTNcKwaqWnvvJzp4wkBl&index=4

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