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2008.01.15

野崎篤志

【Cases & Trends】2008年米国知財の展開 – 最高裁、PTO、議会の動き

あけましておめでとうございます。本コーナーの新年第1号は、昨年ご紹介した米国知財トピックのうち、間もなく、あるいは年内に予想される新たな展開をいくつかご紹介しておきます。
最高裁: 特許消尽事件

最も早く動くのが、米連邦最高裁が昨年9月に上告請求を受理した特許事件(Quanta Computer Inc. v. LG Electronics Inc., cert. granted 9/25/07)。1月16日に1時間の口頭弁論が予定されています。

この事件は、特許品販売に際し特許権者(あるいはライセンシー)が課す「制限/条件」と「権利消尽」との関係が争点となっています。具体的には、特許対象品を無条件で販売した場合は権利消尽が適用されるものの、条件付きで販売された場合、権利消尽の適用が免れるとしたCAFC判例を再検討しようというものです。川下産業に対する特許権の縛りがどこまで可能かという観点から広く注目を集めており、自動車部品のアフターマーケット・サプライヤー団体、消費者団体、特許権擁護団体など様々な団体から意見書(amicus curiae brief)が最高裁に提出されています。

以下、「我々は本件原告・被告いずれの立場のサービス/商品を提供しているため、最も適切、公正な意見を提示できる」として提出されたIBM社の意見書骨子(意見書目次)をご紹介しておきます。

I.特許権者は、許諾販売者から購入した者に対する特許権を保持するためには、明示的契約を得る必要がある

  1. 最高裁の先例は、実質的に非侵害使用が存在しない(侵害使用をせざるを得ない)製品が権利者の許可の下に販売された場合に適用される、強い消尽理論を確立するもの
  2. 消尽理論の例外が認められるのは、連邦法に基づき本来有効な購入者の権利を制限することに両当事者が合意した場合

    1. 最高裁は、特許権者が、有効なライセンス上の制限により、ライセンシーとその下流購入者を制限する権限を有することを、繰り返し認めてきた。
    2. 最高裁の先例は、「特許権者は購入者を制限できる。ただし購入者が明示的に同意した書面の契約によってのみ拘束できる」という結論を導くものである。

  3. 購入者に対する明示的制限を認めるルールは、特許法と権利消尽論の目標を達成するもの
  4. この原則を適用するためには、CAFCの判例を覆す必要がある
  5. CAFCの判例は寄与侵害の法理を損ねる

II.許諾販売者から購入した者に対しすべての制限を課す、あるいは一切の制限を課さないというルールが適用されれば、配慮された特許制度のバランスが歪められる

  1. CAFCのルールを採用すれば、重大かつ即時の好ましからざる経済効果がもたらされる
  2. 一方、購入者に対する制限を排除するというルールでは、消尽論を拡大しすぎることによりイノベーションに悪影響を及ぼすことになりかねない

 
PTO: 継続・クレーム規則改正案

継続出願/RCE回数の制限、クレーム数の制限(特定数を超える場合の調査分析書提出義務)、関連出願の特定・報告義務を定め、昨年夏以降多くの出願人を困惑させた挙句、施行日前日に裁判所の仮差止め命令(GSK, Tafas v. PTO, EDVa., 10/31/2007)により停止状態にある本規則案については、その後の裁判動向を本シリーズ前号でご紹介したところです。

その後、ヴァージニア東部地区連邦地裁には両当事者から略式判決(summary judgment)申立てが提出され(12/20/2007)、現在のところ、同申立てのヒアリング期日が本年2月8日に設定されています。裁判所に提出されている、利害関係者・団体からの意見書(amicus curiae brief)も圧倒的に特許庁批判が多いようですが、消費者団体や公益団体が連合し「公益代表法廷助言者(Public Interest Amici)」として、PTOの規則案を全面的に指示する意見書を提出しています。意見書冒頭では、『我々は、公益の観点に照らし、2007年8月21日に告示されたPTOの最終規則(Changes to Practice for Continued Examination Filings, Patent Applications Containing Patentably Indistinct Claims, and Examination of Claims in Patent Applications, 72 Fed.Reg. 46,716)を全面的に支持する。より具体的には、この最終規則は、搾取的特許出願人による濫用行為の抑制や特許の質改善においてPTOを支援するものであり、公益に資するものであると考える・・・・・・』と、PTO支持理由を表明しています。

この公益連合の構成団体は以下の通りです。

  • The Public Patent Foundation(PUBPAT)
  • Computer & Communications Industry Association(CCIA)
  • AARP
  • Consumer Federation of America(CFA)
  • Essential Action
  • Foundation for Taxpayer and Consumer Rights(FTCR)
  • Initiative for Medicines
  • Access & Knowledge(I-MAK)
  • Knowledge Ecology International(KET)
  • Prescription Access Litigation(PAL)
  • Public Knowledge(PK)
  • Research on Innovation(ROI)
  • Software Freedom Law Center(SFLC)

紙面の関係上、各団体についてここで説明することはできないのですが、例えば「AARP」は、年齢50歳以上、アメリカの高齢者のニーズと利益を守ることを目的とする無党派の非営利団体で、メンバーは3900万人を超えるそうです。AAPRは長年、適切な医療へのアクセスや質を損ねることのない医療コストの抑制などを主張してきています。今回の規則案については、医薬メーカーによる特許制度操作によりジェネリック医薬の市場参入が阻害されてはならない、といった観点から支持を表明しています。

PTO: IDS規則改正案

このIDS規則改正案も、前記規則改正案と同様、PTOの21世紀戦略プランに沿って2006年に提案されたものであり、出願人の間では評判がよくありません。しかし、この改正案に対しては昨年12月に政府の行政管理予算局(OMB)が承認したため、本年1月末から2月にかけて最終規則が告示されるものと見られています。2006年に告示された改正案によれば、出願後IDS提出期間を4つのタームに分け、徐々に引例内容および引例と出願対象発明との関係についての説明責任が厳しく出願人に課されるようになっています。負担の重さもさることながら、出願人が提出する説明書等が後に敵対当事者からの攻撃材料になりやすい(特許庁をミスリードしたなど)ということで、強い批判を受けています。

議会: 2007年特許改革法(HR1908, S1145)

現110議会第1会期である2007年の4月、前議会での失敗を踏まえ、上下両院では同一内容の法案が同日にそれぞれ提出され、7月には早くも両院ともに司法委員会を通過。下院法案は、9月7日に本会議可決。・・・・・・先願主義移行、付与後異議申し立て制度導入、損害賠償制限等を盛り込むこの改革法案の迅速な審議には、一時かなり期待が高まったのですが、その後どうなったのでしょうか。上院での動きが見えてきません。テレビ、新聞報道を見てもいまや大統領選の話ばかり。

何かウルトラC的な動きが出てくるのでしょうか・・・・・・。出てきましたら、皆様に速報いたします。

(渉外部・飯野)

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