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2008.10.20

保苅宏

特許/第103条/ウェブブラウザ機能を導入した方法特許の自明性判断

■特許/第103条/ウェブブラウザ機能を導入した方法特許の自明性判断
 無効性に関して証言する場合には、専門家は、解釈されたクレームを先行技術と比較しなければならず、特許を求める主題と先行技術の相違点が、発明のなされた時点で、主題が全体としてその関連する技術の通常の技能を有する者にとって自明であるか否か、或いは、進歩性が、先行技術の要素の確立した機能に従い、その要素の予見されうる利用より高度であるか否かを審理する。
 先行技術のシステムと本件特許の独立クレームとの相違点を比較すると、従来のウェブブラウザ機能を導入するために先行技術のシステムを改良しており、記録によると、当該技術の通常の技能を有する者にとって、特許出願時点でウェブブラウザの利用はよく知られていると認められ、出願書類が発明を特定して「従来のインターネットブラウザ」と「従来のウェブ閲覧ソフトウェア」を利用するとして、修飾するために「従来の」の用語を使用することは、主張される発明の時点において存在するウェブブラウザに関して言及していることを意味する以上、先行技術の要素の予見されうる利用より高度であるか否かに関して、記録によると否定的であって、主張クレームは法律問題として自明であると判断される。
(Muniauction, Inc. v. Thomson Corporation, et al., CAFC, 7/14/08)

事実概要
 米国特許第6,161,099号(以下、’099特許)は、金融商品の発行オークションを行なう電子的な方法を対象としており、特に、ウェブブラウザを利用したインターネットのような電子的なネットワーク上の地方債発行に関している。この種の債券購入において、地方自治体(発行者)は、その債券を引受会社(入札者)に発行するが、典型的には、その入札者は、発行債券全てを入札し購入する一括執行入札(all-or-none bidding)を行ない、その後、個々の債券を一般に再販売する。債券の発行は、元の額と満期日が異なる債券を含む債券証書がパッケージになっていることがある。入札者は、該当する満期日によって異なる債券の各々の利札によって表示される価格と相当の金利を提示する。したがって、最高入札は、入札者が行なう集合入札の各パッケージの混合利率に基づいて、発行者に対する「true interest cost」(真の利子原価、以下、TIC)にしたがって決定される。一括執行入札に加えて、’099特許は、入札者が信用取引による引受合計より少なく入札することによる満期日毎の入札を開示している。
 ’099特許は、多くの先行技術として、電子的な入札と取引システムを記述して、その上、それらのシステムを批評して、金利商品の発行者地方債には適用できないとしている。また、’099特許は、21st Century Municipals, Inc.(以下、21st Century Municipals)が地方債入札用に開発したParity®電子入札システムについて記述して、「PARITY入札システムは、事前に適切なソフトウェアを入手してインストールした入札者がコンピュータネットワーク経由の入札に指値を提示できるようにする」としている。’099特許は、Parity®システムに関して批評して、次の三点の理由を挙げている。第一に、先行技術のシステムは、入札者が、コンピュータネットワーク経由の入札に参加する前に、Parity®のソフトウェアを入手してインストールすることを要求している。第二に、同システムは、「入札の最中、ファクシミリとその他の指値提示方法とともに利用されるよう設計されている。」第三に、同システムは、入札終了まで、受理された入札が評価され結果が入札者に提示されることはない封印入札方式を実施する。
 したがって、’099特許の発明は、「単一のサーバ上の統合システム」を提供して、債券発行者が入札を実行させ、入札者が従来型のウェブブラウザを利用して入札を準備し提示することができるようにし、その際、他に別途のソフトウェア使用を要しない。また、’099特許のシステムは、債券発行者に入札の進展を監督できるようにし、入札者に自らの指値を最新の最高入札に比べて見ることができるようにする。
 被疑方法が有するそのおおもとは、Parity®システムであって、’099特許に記述されている。1992年に紹介された当初、Parity®は、入札者がモデムを使用して、専用のコンピュータネットワーク経由でセンターのサーバ上にある入札計算ソフトウェアにアクセスし、指値のTICを計算する入力データにアクセスできるようにする。そこで、入札者は、電子的なネットワークを経由してセンターのサーバに指値を提示する際、TICに基づいて指値を発注して、発行者のコンピュータに表示するよう指値を送信する。1995年、21st Century Municipalsは、Parity®に関して、もともと1988年に紹介されたThomson CorporationとI-Deal, LLC(以下、Thomson)のBidCompソフトウェアを含む他の入札計算プログラムと連動するように修正した。1997年、Thomsonは、21st Century MunicipalsからParity®を吸収して、BidCompとParity®製品をBidComp/Parity®として単一のシステムに統合した。1998年、Thomsonは、BidComp/Parity®を修正して、発行者が、インターネット上で入札を見るのに、専用のコンピュータネットワークを経由するのではなく、ウェブブラウザを使用して行なうことができるようにする。
 2001年6月1日、Muniauction, Inc.(以下、Muniauction)は、Thomsonに対して訴訟を提起して、Thomsonによる侵害は、そのBidComp/Parity®システム上での入札を行なう際に、’099特許の方法クレーム1, 2, 9, 14, 18, 20, 24, 31, 32, 36, 40, 42, 46, および56に関連していると主張した。2006年10月20日、Thomsonは、法律問題としての判決(JMOL)または新たな事実審を求める申立てを行ない、とりわけ、’099特許のクレームは自明であって、共同侵害の適切な基準によるとThomsonはクレームを侵害していない旨、主張した。2007年4月30日、連邦最高裁判所は、KSR International Co. v. Teleflex Inc.事件判決(127 S. Ct. 1727, 1739 (2007))において、連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)による自明性に関する教示・示唆・動機テストの厳格な適用を否定した。ペンシルバニア西部地区連邦地方裁判所は、KSR事件を考慮したが、Thomsonによる申立てのすべての点を否定し、損害額裁定を7690万ドルに拡大し、判決前利息770万ドルを裁定し、Thomsonに対する永久差止めを認めた。2007年7月30日、地裁は、終局判決を登録し、2007年8月1日、Thomsonは、適時、控訴通知を提出した。また、Thomsonは、控訴を係属して差止めを停止するよう求めた。
 控訴が係属中、CAFCは、本件に提示された争点に関連して、二度、判断を示した。第一に、2007年8月20日、In re Seagate Technology, LLC事件(497 F.3d 1360, 1371 (Fed. Cir. 2007))において、客観的な無謀性の争点に関して、過失に対するのと同種の基準から故意侵害に関する基準に変更した。第二に、2007年9月20日、BMC Resources, Inc. v. Paymentech, L.P.事件(498 F.3d 1373, 1380–81 (Fed. Cir. 2007))においては、方法クレームの段階が多数当事者により実行された場合には、方法全体は、直接の被疑侵害者の統制または指示によって実行されなければならない旨、判断された。ゆえに、CAFCは、控訴係属による差止めの停止を求めるThomsonの申立てを認め、Thomsonは、BMC Resources事件に基づく本案勝訴の可能性を示していると判断した。Muniauction, Inc. v. Thomson Corp.事件(07-1485, 2007 WL 2827915 (Fed. Cir. Sept. 28, 2007))参照。CAFCは、裁判所および裁判手続に関する法律第1295条(a)に基づき裁判管轄権を有する。

一部破棄、一部取消し

判旨

JMOL(法律問題としての判決)を求める申立ての否定は、「特許法に特有の手続き上の争点ではなく、当裁判所は、地裁からの控訴が通常存在する地区巡回区の法に基づいて審理する」Riverwood Int’l Corp. v. R.A. Jones & Co.事件(324 F.3d 1346, 1352 (Fed. Cir. 2003))参照。第3巡回区の法の下では、「当裁判所は、法律問題としての判決を求める申立てを認めるかまたは否定する命令に関して大法廷による審理を行ない、地裁と同一の基準を適用する」Lightning Lube, Inc. v. Witco Corp.事件(4 F.3d 1153, 1166 (3d Cir. 1993))、Juicy Whip v. Orange Bang事件(292 F.3d 728, 736 (Fed. Cir. 2002))参照。
 事実審とその法律問題としての判決と求める申立てまたは新たな事実審(以下、JMOLを求める申立て)において、Thomsonは、主張クレームがウェブブラウザの使用を導入する先行技術であるParity®システムの改良版に照らして自明であると主張した。Thomsonの申立てを地裁が否定する際、Thomsonが’099特許の主張クレームに関する無効性を明らかな確信を抱くにたる証拠によって証明していないとの陪審評決を実質的な証拠が支持している旨、地裁は結論づけた。第一に、地裁の結論によると、「陪審は、ただ、Parity®が’099特許の主張クレームに認められる要素のすべてを含んでいない旨、合理的に認定しえた」と判断している。第二に、陪審評決は二次的な印の十分な証拠によって支持されており、主張クレームは自明ではないと裁判所は言及している。当裁判所は、同意しない。

以下略

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