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2009.04.02

保苅宏

■米国CAFC 判決速報(USPTO新規則適否の判断)TAFAS v. DOLL事件:USPTOに実施禁止の命令を認容新規則を不当とした地裁略式判決一部取消し、差戻し(Triantafyllos Tafas v. John D. Doll, CAFC, 03/20/09)

 2009年3月20日、米国連邦巡回区控訴裁判所は、Tafas v. Doll事件において、2007年10月31日に原審バージニア東部地区連邦地方裁判所が、USPTO最終規則の実施に関して、これを禁じるよう命じた仮差止め命令を認めて、新規則の妥当性については、地裁略式判決を一部取り消して、さらなる審理のため差し戻した。USPTO最終規則は、USPTOが抱える出願滞貨と取り組むために規定されたものであるが、将来的にさらなる控訴審理が提起され、再審理の請願または大法廷審理の請願も予想され、今後の動向が注目される。
 以下、本件CAFC判決の概要について、現地法律事務所の許しを得てその速報をご紹介します。
FOLEY & LARDNER LLP www.foley.com Legal News Alert ***** March 20, 2009

~USPTOは勝ちを収めたか? TAFAS v. DOLL事件は、USPTOの実務に実体的な変化を促すドアを開けたが、継続出願の制限はUSPTOの権限を越えると認定~

 米国特許商標庁(USPTO)が勝ち得たものは一部であるが、係属中の特許出願の滞貨を減らすその努力に大きな意味のある勝利を収めた。2009年3月20日、連邦巡回区の小法廷は、ある重要な例外とともに、USPTOの提示したいくつかの新規則が手続上のものであって、ゆえに、潜在的にUSPTOの規則制定権の範囲内にあると認めた。しかしながら、合議体は、これらの規則が裁判所の審理していない様々なその他の根拠によって争われることになると説示した。これらの規則が、さらなる論争にも耐えうるならば、特許出願の実務と手続は、本質的に変わるであろう。
 特に、連邦巡回区は、権利として出願できる継続出願または一部継続出願の数を制限するUSPTOの努力は、制定法に反していると判断した。ゆえに、連邦巡回区は、USPTOがこの新規則を実施することを禁じる命令を確認した。
 しかしながら、連邦巡回区は、いくつもの新規則が不当であるとする略式判決を取り消した。事件はさらなる審理のために差し戻され、新規則に関する追加の争点が存在するとされた。すなわち、(1) 継続審査請求(RCE)の可能性を制限するもの、および(2) 独立クレームが5より多いか、または合計25を越えるクレームを含む出願は、詳細な審査支持書面(ESD)を添付するよう要件を課すという規則に関してである。連邦巡回区は、これらの規則が手続上のものであって、少なくとも可能性としては適正であると認定した。裁判所は、その意見書によって排除されない争点に可能な手段を具体的に特定した。

事実背景

 2008年1月、USPTOは、特許出願手続に適用する規則を改正する手続に着手した。これらの提示された新規則の4点は、以下の通り、連邦巡回区において争点になっている。
 新規則第78条は、出願人が2件の継続出願または一部継続出願を権利として出願できるよう認めている。第78条に基づいて、追加の継続出願は親出願の出願日を付与されないが、出願人が、先の出願の手続係属中に補正書、意見書、または証拠を提出することができない事情を示した場合はこの限りではないとした。
 新規則第114条は、出願ファミリーにつきRCEを一件とする制限を課している。
 新規則第75条は、出願人がUSPTOにESDを提出するのでなければ、出願のクレームについて、独立クレームを5またはクレームの合計を25とするよう制限する。
 新規則第265条は、ESDの内容について規定している。第265条に従い、ESDは、(1) 先行技術調査の結果を含むものでなければならず、(2) 最も関連する先行技術の参照例を列記し、(3) どの限定事項が各々の参照例によって開示されているかを特定し、(4) いかにして各々の独立クレームは参照例に対して特許性があるかを説明し、さらに(5) 明細書のどこに各々の限定事項が開示されているかを示さなければならない、としている。
 これらの新規則は、USPTOの請求するところとして、特許出願の増え続ける滞貨に取り組むために必要とされているものであって、議論を呼んでいる。Triantafyllos Tafasは、個人発明家であるが、GlaxoSmithKline (GSK)とともに、新規則の実施を禁じるよう訴えを提起した。TafasとGSKの申立てによると、新規則は、USPTOの規則制定権の範囲外であって、法に反しており、恣意的で気まぐれであり、不可解にして曖昧であって、許されないほどに遡及効があり、さらに手続上の瑕疵があるとした。
 地裁は、これらの新規則の実施を仮差止めし、最終的には、新規則が無効であるとの略式判決を認めた。地裁判断によると、これらの規則は、米国特許法に基づく「既存の法を変更するものであって、出願人の権利を奪う実体的な規則」であるとした。USPTOは、手続上の規則を定める権限を有するが、実体的なものに対するのではないため、地裁は、当該規則は無効であると判断した。

連邦巡回区の意見書

 USPTOは、地裁略式判決に対して控訴した。USPTOの控訴は、二点の論点を提示している。第一に、USPTOの申立てによると、地裁は、USPTOの規則制定権の範囲に関してUSPTOの解釈に委ねるべきであるとする。要するに、USPTOの議論は、新規則が適正である理由は、そのようにUSPTOが決定したからであるというものである。第二に、USPTOの申し立てるところは、USPTOの規則制定権の範囲に関する地裁による限定的な解釈に基づいても、新規則は適正であるとする。
 連邦巡回区は、Prost判事の説示によっているが、第一に、地裁はUSPTOの規則制定権の範囲についてUSPTOの解釈に委ねるべきであるかの問題について審理した。裁判所の判断によると、USPTOの決定は、敬意を払うことに相当せず、ゆえに第一の論点を否定した。そこで、連邦巡回区は、その先の判断を確認して、USPTOは、庁において「手続を行なう」のに適用する規則、すなわち手続上の規則を定める権限を有するだけであるとした。
 連邦巡回区は、次に、適正な規則は、事実上、手続的なものかまたは実体的かに関する問題を審理した。この決定をするのに、裁判所は、手続上と実体上の規則の間にある線を引かなければならないとした。
 連邦巡回区が採用した境界線は、地裁によって引かれたものとは、著しく異なっている。地裁は、いかなる規則も、個人の権利と義務に影響を与えるものは、実体的であると判断した。しかしながら、連邦巡回区は、この広い定義を拒絶した。裁判所は、手続上の規則は、よく実体に影響を与えるものであることを認識した。JEM Broadcasting Co. v. FCC事件(22 F.3d 320 (D.C. Cir. 1994))におけるD.C.巡回区の分析に依拠した連邦巡回区の判断によると、手続上の規則は、出願人がUSPTOに意見書を提示する期限と方式に影響を与えることがあるが、USPTOが出願を審査する実体的な基準を変更することになるものではないとした。換言すると、手続上の規則が、審査のために出願を提出する有効な機会を出願人から剥奪するのではない限り、その規則は適正なものであるということである。
 この基準を新規則に適用して、連邦巡回区は、規則のそれぞれは手続上のものであると決定した。裁判所の判断したところによると、継続出願とRCE出願の数を制限する新規則は手続上のものであって、出願人が、審査手続において、補正書、意見書、および証拠をいつも真摯に提出する場合には、これらの規則による制限を受けることにはならないのである。裁判所は、これらの新規則の影響力は、USPTOがいかに適用するかに依存することになると認識しており、さらに、請求に関するUSPTOの決定に対するケースバイケースの検討が適切であろうと示唆した。
 同様に、連邦巡回区は、新規則が、ESDの提出なく出願できるクレーム数を制限し、さらにESDの内容を規定する点を支持した。裁判所の認識したところでは、新規則は、一方で出願人に対して作成書類に関する潜在的に大きい責任を課しているが、表面上は説得すべき責任を変更しているのではない。審査官は、一応疎明された事件として不特許事由に関して審査しなければならない。連邦巡回区は、特に調査要件に関しては、実務上、不可能な遵守を課す方式のいくつかのESD要件をUSPTOは解釈したと、認識しており、さらにかかる状況におけるケースバイケースの検討を要請した。また、裁判所は、法廷助言書において示されたように、ESDにおいてなされる陳述から生じる不衡平行為の嫌疑と審査経過禁反言を指摘されることに関する懸念について、これらの懸念は、ESDを求めるUSPTOの権限とは関係がないと説示して、これを斥けた。
 最後に、連邦巡回区は、新規則が特許法と抵触するかについて審理した。裁判所は、新規則第78条が、権利として求めうる継続出願の数を制限するものであって、特許法第120条に反すると判断した。第120条の規定は、継続出願が四要件を充たすとき、親出願の出願日の利益を享受する「ものとする」としている。新規則第78条は、追加要件を課すことを求めているので、制定法に反するものであり、ゆえに無効である。
 連邦巡回区は、RCE出願に関する規則がクレームを制限するが、またESDの内容は特許法に反するものではないと判断した。例えば、第132条は、USPTOがRCE出願の無制限な数を受け容れることを義務付ける法令上の明らかな文言を含んでいない。ゆえに、裁判所は、許される限度でUSPTOによる制定法の解釈に委ねた。同様に、ESDの要件は、クレーム数に絶対的な制限を課すものではないから、裁判所は、特許法がかかる制限を認めているかを審理する必要はないと認定した。

同意意見と反対意見

 Bryson判事は、裁判所意見に同意した。同判事は、別途、自らの見解を書き、法令を「実体上」のものか、または「手続上」のものかを分類することは、必要でもなく参考になるものでもないとした。むしろ、同判事の見解では、問題は、法令が立法府の権限によって行政庁に規定させるようなタイプであるのかであって、適用されるべきかの分類は関係がない。
 また、Bryson判事は、裁判所が、新規則第78条の継続出願に対する制限は特許法と抵触する旨、狭く判断したことに付言している。Bryson判事の見解では、抵触が生じるのは、新規則が、二件の継続出願が並行して出願される場合より多くなることを認めないからであるとした。同判事は、連続する継続出願のみを対象とするよう修正された規則が、特許法とよく調和するであろうと示唆した。
 Rader判事は、継続規則に関する裁判所判断に同意し、その他の規則に関する合議体の意見に反対した。新規則は、「施行案を遵守することにより生じる不都合は付随的なもの」とはいえない責任を課すので、規則のすべては、USPTOの規則制定権を超えており、実質的に認められるものではなく、無効であるとRader判事は結論づけた。
将来的な動向
 この連邦巡回区決定は、USPTOの出願滞貨と取り組むその努力における一つの意味深い節目となるものであって、話の結末ではない。さらなる訴訟が、これらの規則実施に待ったをかけるであろうし、あるいはUSPTOは、オバマ新政権の下、姿勢を変えて新規則を実施しないかもしれない。
 さらなる控訴審理が認められない限り、事件は、地裁に差し戻されるであろう。連邦巡回区意見書は、地裁が考慮する余地を残した争点を注意深く特定した。
本意見書は、次の争点については何ら判断していない。最終規則のいずれが、一般的にかまたは個別の状況において適用されるものとしてかのいずれにしても、恣意的で気まぐれであるかに関して。最終規則のいずれが、本意見書において特に採り上げられていない方式において特許法と抵触するかに関して。すべてのUSPTO規則制定は、合衆国行政手続法第553条に基づいて、通知と説明の規則制定に服するかに関して。最終規則のいずれが、許されないほどに曖昧であるかに関して。さらに、最終規則は、許されないほどに遡及効があるかに関して。
 また、さらなる控訴審理が提起されるであろう。連邦巡回区控訴に対するいずれの当事者も、再審理の請願または大法廷審理の請願を行なうであろう。連邦巡回区は、先例としての意見書を発表する前に中間的な見解として回付するから、これらの請願は、概して成功の見込みは極めて低い。同様に、いずれの当事者も、連邦最高裁判所に審理するよう請願することができる。移送の請願もまた、認められる見込みは極めて低い。
 最後に、オバマ政権は、USPTOの主導権にかわる選択肢を特定していない。おそらくは、新たなリーダーシップは、これらの新規則を実施することはないと決定するであろう。

本事件に関するご質問は、下記弁護士までご連絡くださいますと幸甚です。
Contact Person: Mr. KAMINSKI, Michael D. (MKaminski@foley.com)

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