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2009.11.12

【最近よくあるご質問】 中国特許裁判事情: 原告企業ご担当者様インタビュー

前回の本コーナーで予告致しましたとおり、今回は原告企業の1つであられるA社様からお聞かせ頂いた貴重な経験談を、一問一答形式にて掲載させて頂きます。
Q.御社は2006年に3件の意匠権侵害訴訟を提起しておられるわけですが、そうした法的措置に踏み切った背景や裁判に臨んでの当時のお考えなどをお聞かせ下さい。

A.当時中国では、当社の製品を模倣していると思しきものが数多く出回っていた。それら(被疑)侵害品と当社が保有する権利を検証し、勝算の高い3件を選んで権利行使を行ったが、事前にJETROや他社の訴訟経験者を訪問して情報収集を行い、万全の体制で臨んだ。考え得る作戦を全て使うよう現地代理人にも指示を出したが、一方で違法行為は絶対にしないよう厳重に注意することも忘れなかった。

Q.そうした入念な準備の甲斐もあり、2件の事件において意匠権侵害が認められて損害賠償支払い命令が出ています。被告企業は、すんなりと支払に応じましたか?

A.最初の1件については大変な苦労をした。まず「12万元を3万元にまけてくれれば今すぐに支払う」と値切って来たことに驚いたが、もちろんそんな交渉には乗らない。結局判決が確定してから支払いまで10ヶ月を要したが、つまりこれは裁判期間よりも長くかかっているわけだ。最後には裁判官が被告企業に出向いて督促したらようやく払ってもらえたと代理人は言うけど、本当かな。

Q.もう1件はいかがですか?

A.2件目の方は従業員数2400人の大きな会社ということもあるのか、判決が出てから1ヶ月程度で払い込みがあった。

Q.逆に3件のうち1件は侵害なしという残念な結末を迎えておられますが、その原因についてお心当たりはございますか?

A.裁判所の見解は「意匠分類が異なるので侵害しない」というものだったが、この判断は特に中国で強い傾向があるようだ。更に「同じ販売台で売られていない商品は、互いに意匠権侵害を構成しない」という判断基準には大いに疑問を持ち、社内では再審請求をおこすか否かで意見が分かれたが、結局それ以上深入りすることはしなかった。

Q.損害賠償額の12万元(凡そ170万円)という金額については、どう評価されていますか?また、他に何かご苦労された点などあれば、教えて下さい。

A.それはそれは苦労と困惑の連続だった。担当弁護士が訴状を書いた後に他の事務所に移って代理人を辞任するし、裁判が始まれば開廷期日がこちらの都合も聞かず一方的に決められるし。更に指定日に裁判所に出向いたところ開廷期日が延期されていることもざらで、一度などは甲事件の予定が変更されて乙事件の開廷中に、変更を知らない甲事件の被告側弁護士が入廷してきたこともあった。損害賠償12万元という支払い命令額に満足しているかと聞かれれば、当然答えはノーだ。

Q.それでは中国で権利行使することは得策ではないと?

A.そうは思わない。これら事件の前後をとおして継続的に調査を行っているが、確実に侵害行為は減ってきている。被疑侵害者に警告状を出す場合でも、受取った側が感じるプレッシャーの大きさは以前とはまた違うだろう。日本で開催される展示会でも模倣品の出品は大分減ってきているし・・・まだまだゼロではないがね。

(渉外部 柏原)

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