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2010.12.28

【米国裁判所訪問記】

中国に知財訴訟件数No.1の座を譲り、新規受理件数自体も減少傾向にあるとはいえ、米国は依然として「知財訴訟大国」であるといえます。NGB・IP総研の法務調査担当である筆者、木村芙美子は、米国知財訴訟の実態を垣間見るべく、AIPLA出展の合間をぬい、いくつかの裁判所へ足を運ぶこととしました。

ワシントンD.C.には複数の司法機関が点在しています。今回は米国代理人の協力を得て、連邦裁判所であるCAFCと連邦最高裁、州裁判所であるコロンビア特別区上位裁判所、および準司法機関であるITCを訪問しました。

■United States Court of Appeals for the Federal Circuit / CAFC;連邦巡回区控訴裁判所
ホワイトハウスの北東、米国請求裁判所(US Court of Federal Claims)と同じ建物にある、特許(意匠を含む)の侵害や有効性に関する上訴事件や関税関連事件などを管轄している連邦控訴裁判所です。商標・著作権関連事件は基本的に各地区の控訴裁判所の管轄であり、CAFCの専属管轄ではありません。

=CAFC主席判事;”Professor Rader”との面会=
今回の訪問では、CAFCの主席判事であるRandall R. Rader氏とお会いする機会に恵まれました。面会の場所は、ワシントン記念塔を一望できるRader判事のオフィスの一室。Rader判事はとても気さくな方で、特許権の行使と「パテントトロール」という存在、米国特許訴訟と(米国外の)技術調査の関係、米国訴訟の情報開示事情、など様々なトピックにつきご意見を伺うことができました。米国の知財制度に深い造詣をお持ちであることに加え、Rader判事は様々な国々の知的財産制度にも通じておられます。日本の裁判官と意見交換を行う機会も少なくないようで、「secondary consideration」(特許の進歩性の補助的判断要因)について意見交換をされたご経験もお話くださいました。

■Supreme Court of the United States;合衆国最高裁判所
国会議事堂の東側・議会図書館の北隣に位置する、連邦裁判所の最高機関です。数多くの上告申立が棄却されている一方で、知財関係の事件では、侵害教唆の特許認識基準を厳しくしたSEB事件や、大学と企業間の委託研究成果の権利帰属をめぐり物議をかもしたStanford v. Roche事件の上告が受理されています。また、今年の6月には注目を集めたBilski v. Kappos事件判決も下されています。

■Superior Court of DC;コロンビア特別区上位裁判所
州裁判所が裁判権を有する問題に関して一般的な管轄権を有する、事実審裁判所です。知財“侵害”訴訟は連邦裁判所の管轄であるため、州裁判所の認知度はやや低めかもしれませんが、ライセンス契約やトレード・シークレットが関係する事件など、知的財産分野でも州裁判所で扱われる事件は少なくありません。

■U.S. International Trade Commission;米国国際貿易委員会
米国における通商問題に関わる調査等を行う、準司法機関(行政機関)です。知財分野では「関税法337条手続」(特許侵害などの「不公正な行為」が認められた場合、輸入排除などの救済を得ることができます)を行う際に、ITCへ申立を行うこととなります。この手続では損害賠償の請求などは行えないので、同時に連邦地方裁判所に訴訟が提起されることもしばしばです。ITCの手続は、行政法判事(ALJ)により下された仮決定を、コミッションが追認もしくは再審査の決定をすることで、進められていきますが、今回の訪問では、メインヒアリングルームで開催されたコミッションのミーティングを傍聴する機会に恵まれました。定刻になるとコミッションの方々が指定の席につかれましたが、空席も少し。数名のコミッションメンバーは、電話にて会議に参加されていました。その日の会議のメインイベントと思われたのは、某事件のVoting。簡単なブリーフィングの後、各メンバーによる投票が行われました。淡々と行われた投票を見ていると、学生の頃に傍聴した、日本の刑事裁判の判決言い渡しの場面が思い起こされました。一方、ヒアリングルームの端の机に、サンシャイン法に基づく「Meeting Notice」(会議のアジェンダのようなもの)が置いてあったり、複数の案件が話題にされるなど、通常の司法手続きとは異なる面もみられました。

知財制度のハーモナイゼーションは進められつつありますが、(知財)訴訟制度は国により様々異なっています。NGB・IP総研では今後も、「権利の取得」に関わる情報のみならず、「権利の活用」に関わる情報の収集/サポートも試みていく所存でございます。

(IP総研 木村)

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