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2012.05.22

柏原 雄人

【Cases & Trends】 米通商代表部、「2012年版スペシャル301条リポート」を発表 - 中国、インド、依然「優先監視国」に

 2012年4月30日、米通商代表部(USTR)は諸外国(「貿易相手国」)の知的財産保護の現状や問題点について報告する「スペシャル301条リポート」2012年版を発表しました。今回、「優先監視国」、「監視国」として特定された国は以下の通りです。 
   
・優先監視国(Priority Watch List):
Algeria, Argentina, Canada, Chile, China, India, Indonesia, Israel, Pakistan, Russia,
Thailand, Ukraine, Venezuela

・監視国(Watch List):
Belarus, Bolivia, Brazil, Brunei Darussalam, Colombia, Costa Rica, Dominican Republic,
Ecuador, Egypt, Finland, Greece, Guatemala, Italy, Jamaica, Kuwait, Lebanon, Mexico,
Norway, Peru, Philippines, Romania, Tajikistan, Turkey, Turkmenistan, Uzbekistan,
Vietnam

 また、交渉を通じ改善が見られない場合は、制裁対象になるような深刻な問題を抱えている国(「306条監視国」)としてパラグアイが特定されています。
 以下、このリポートから、皆様の関心が特に高い中国とインドについて少しご紹介いたします。

[インド]  
 前年に続き、優先監視国とされました。もっともインドの場合、さほど深刻視されている様子はなく、改善努力の継続を望む、という趣旨は前年と変わりません。ただし、今回のリポートは、2012年3月12日にインド特許庁が(WTO・TRIPs体制後)初めて認めた強制実施権(独バイエル社のガン治療薬特許)に言及し、「インド特許法の広い解釈に基づいて認めた強制実施権設定の今後の展開を注視してゆく」としています。

[中国]  
 中国もインドと同様、前年に続き優先監視国とされましたが、その重みは比べものになりません。リポート冒頭には、制裁も前提となる306条監視の候補という記述さえあります。リポートで中国に割かれているスペースは約9頁半、ロシアが約1頁半、インド半頁、その他はすべて半頁以下であり、物理的量の差をみるだけでも、いかに中国への注目(警戒)が高いかがわかります。
 中国リポート部分は、おおよそ以下のような構成になっています。
1) 特別キャンペーン(模倣排除へ向けた国家キャンペーン)
2) ソフトウェア合法化
3) オンライン海賊
4) 模倣
5) トレードシークレット
6) マーケットアクセスと技術使用
… 中国市場アクセスの条件としての外国技術提供(政府関与)の問題
7)知的財産とイノベーション
… 中国の「自主創新」政策に基づく諸政策の影響
8)特許政策など
 -強制実施
 -中国国家標準に使用される特許
 -医薬品に対する知財保護
 
 2010年のスペシャル301条リポートまでは、上記1)~5)までの項目が中国の問題として指摘されることのほぼすべてでした。すなわち、中国企業による模倣、侵害問題、法執行面の弱さ、あるいは政府機関内での海賊版ソフトウェア使用などです。
 しかし、6)~8)などは2011年のリポートから突如現れた項目です((8)の国家標準における特許の扱いについてのみ、以前のリポートでも指摘あり)。米国際貿易委員会(ITC)や在中国アメリカ商工会議所のリポートによれば、中国が2006年に発表した時点ではあまり注目されなかった国家技術発展中長期計画中の重要政策である「自主創新」政策の実態が、具体的な実施のための法制化、ルール化作業に伴い明らかになり始めたのが2010年頃であり、この頃から中国市場へ進出している米系企業の懸念の声が急速に上がってきたということです。
 昨年このコーナーでもご紹介したように、中国政府調達品における中国自主創新品(中国企業所有知財を利用した製品)優遇策については、中国政府もアメリカ政府の要請を受けて改正をするなどの動きを見せたものの、イノベーションをめぐる米中の緊張関係はまだまだ続いていきそうです。

⇒ スペシャル301条リポート原文は以下のサイトで
 http://www.ustr.gov/about-us/press-office/reports-and-publications/2012-2

(営業推進部 飯野)

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