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2015.10.20

【中国訪問記2015】 [3] 北京市中信公証処(公証役場)

NGBでは今年も中国専利信息年会(PIAC)開催にタイミングを合わせて、9月13日 (日) – 17日 (木) のスケジュールで現地視察ツアーを催行しました。本稿では、視察先の一つである北京知識産権法院訪問記をご紹介します。

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NGBツア-ではお馴染みとなっている公証役場(北京市中信公証処)を訪問。同役場からは業務主任齐金霞氏・業務部長劉莹氏のお二人にご参席頂き、公証役場の現状や有効な使い方をご教示頂いた。併せてChina-IPPublication.netサービス提供で日頃ご協力を頂いている崔晓光弁護士にもご同席を頂き、一同活発な議論を行うことができた。本稿では、ご説明の中で挙げられた、訴訟対策としての公証手続き活用事例から一部抜粋してご報告する。

■事例1
2007年、まだそれほど公証制度が認識されていない時代の案件。この事例では公証をしなかったため、結果的に敗訴している。発端は、ブランド模倣品のマーケットとして有名な秀水市場の管理者が、海外の有名な23ブランドを管理する代理事務所に模倣品摘発の協力を求めたことに始まる。代理事務所が秀水市場を調査した結果、22軒の店舗で23ブランドの模倣品を発見、市場管理者に店舗リストを提出。市場管理者はそのリストを市場内に張出して警告した。警告を聞き入れずに模倣品を売り続ける店舗の営業を強制的に停止したところ、それらの店舗は秀水市場管理者を被告として提訴した。市場管理者は、代理事務所から入手していた模倣品を裁判所に提出して反論したものの、公証していなかったため証拠として認められず、敗訴することに。その後、負けた市場管理者が代理事務所を提訴するなどの経緯を経て、以降はこれを教訓として入手した模倣品を公証するようになった。

■事例2
業務用冷蔵庫メーカーが製氷器の意匠権侵害者を訴えた案件。食品関係の博覧会で侵害品を見つけるも、店舗ではないので一般者として購入は出来ない。そこで展示会場まで公証人が同行し、写真・カタログ等の証拠を現場で公証した。この案件では一審・二審ともに勝訴している。

■事例3
大型産業機械の侵害品入手の現場に立ち会った案件。製品自体は簡単に入手出来たものの、重量があるため運搬は困難。公証人は、その運搬に最後まで付添った。

■事例4
大型産業機械を入手してコンテナに封入、雨よけカバーをかけて公証するも、訴訟の最中に台風でカバーが外れて飛んでしまった。そこで公証人は北京からコンテナの置いてある港まで出向き、コンテナの鍵を開けて中を確認、再びカバーをかけて再公証した。

■事例5
古いトラックを公証人同行で入手して、侵害品であるモーターを取外す作業にも公証人が立会った。しかし二日がかりの作業中、夜中は公証人が不在だったため、その点を相手方につかれて結果的に敗訴した。

上記の5つの事例から解ることは、侵害品入手の現場に公証人に立会ってもらうこと、そして証拠としての地位がゆるぎないものになるまで(封をして公証手続きが完了するまで)引続き公証人の管理下に置くことの重要性である。公証費用以外に移動滞在費等の実費も発生するが、訴訟で勝てば相手に請求も可能である。役場のお二人からは、「当役場では請求書も領収書も発行します」とのご提案も頂けた。

(営業推進部 柏原)

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