- 特許
- データ・統計
2026.02.19
IP総研 中根 寿浩
標準規格文書・標準関連文書(寄書等)・宣言特許情報を横断し、意思決定に効く調査アウトプットを
標準規格に準拠した製品・サービスの普及が進むにつれ、SEP(標準必須特許)をめぐる論点は、知財部門のみならず、事業部門・開発部門・経営企画部門にも広がっています。例えば、5GやWi-Fiに加えて、映像コーデック(例:H.264/AVC、H.265/HEVC など)のようにエコシステムが大きい技術領域では、ライセンス交渉、係争、市場参入判断、開発ロードマップ策定などにおいて、SEPリスクの影響が極めて大きくなります。
実務上重要なのは、標準規格文書と特許情報を単に収集することではなく、意思決定に活用できる形へ整理・分析することです。現場では、次のような課題が生じています。
-
• 標準規格文書と特許クレームの関係を、説明可能な形に整理できない
• 交渉・係争が発生してから調査を開始し、論点整理が後手に回る
• 標準化活動(寄書など)の動向と、特許・プレイヤー動向を統合的に把握できていない
本稿では、当社が提供しているSEP関連の代表的な調査メニューをご紹介します。
1. 必須性調査:標準規格文書と特許を対比し、必須性をランク付け
SEP対応で最初に問題になるのが、「当該特許が標準の実装に本当に不可欠か」という必須性(Essentiality)です。必須性調査では、例えば以下の観点で特許クレームと標準規格文書の対比分析を行い、結果をランク付けして報告します。
-
• 対象標準および対象仕様版・リリースの明確化
• 標準規格文書中の該当箇所の特定
• 特許クレームとの対応関係の整理
• 必須性観点に基づくランク付け
2. 無効資料調査:標準関連文書(寄書等)も含め、無効理由の材料を探索
他社特許への対応では、無効資料(先行技術)の探索も重要です。標準分野では、仕様策定や合意形成の過程で生まれる膨大な文書群が、無効資料として有効となる場合があります。無効資料調査では、例えば以下の資料を俯瞰的に検討します。
-
• 3GPP、IEEE等の標準関連文書(寄書・議事・仕様関連資料 等)
• 公開技術文献、論文、製品情報 等
• 先行技術の探索(一般的な特許調査との組み合わせ可能)
3. 寄書分析:標準規格で「誰が、何を、どれだけ」出しているかを可視化
標準領域の競争環境を理解するうえで有効なのが、標準関連文書(寄書)分析です。寄書は提出数だけでなく、その内容を読み解くことで、プレイヤーの注力領域や技術的影響力の構造が見えてきます。寄書分析では、例えば以下のようなアウトプットが可能です。
-
• 寄書数ランキング等、提出状況の可視化
• カテゴリ分類に基づく寄書数の分析・可視化
-
o 事務的な文書(運営・手続・編集等)
o 技術的な文書(提案・評価・仕様修正等)
• 標準に採用された技術文書の追跡(可能な範囲での採用状況把握)
4. 調査分析レポート事例
当社ではこれまで、通信・無線・映像系の標準技術を対象に、目的に応じた複数の切り口で調査分析結果を公表してきました。ここでは事例として簡単に紹介します。
-
• Wi-Fi 6関連特許の必須性調査レポート(2021):Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)について、SEP候補のランドスケープ分析を実施しました。宣言特許情報が存在しない規格であるため、規格検討への参加者名を発明者として検索するなどして特許群を抽出し、人手による精査を通じて必須性を評価しています。
• 5G宣言特許ファミリー分析:5G標準規格の標準必須特許として標準化機関等に宣言された特許ファミリーを対象に、権利者別件数や増加傾向を分析しています。
• Wi-Fi 4から7の寄書分析:IEEE公開情報を用い、Wi-Fi 4〜7の標準化活動における主要企業の動向把握を目的として、寄書数の分析を行っています。
• ATSC3.0宣言特許ファミリー分析:ATSC 3.0の宣言特許ファミリーを対象にランドスケープ分析を実施し、AvanciおよびMPEG LAのパテントプールによるカバー率確認を主目的として整理しています。
5. SEP対応で重要なのは「情報の整理」
標準分野では、標準規格文書・標準関連文書(寄書等)・特許情報・宣言特許情報など、膨大なデータが存在します。重要なのは単なる件数把握ではなく、交渉、係争、参入判断、標準化戦略といった目的に沿って、活用可能な調査アウトプットへ落とし込むことです。
対象標準(例:3GPP、IEEE、Wi-Fi、映像コーデック関連の標準等)やご関心のテーマに応じて、必須性調査、無効資料調査、標準関連文書(寄書等)分析、宣言特許情報の統計・ランドスケープ分析など、標準必須特許に関わる各種サービスをご提案可能です。状況に合わせて最適な進め方を設計いたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。




