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2006.12.15

渡邊 哲史

特許/自明性/専門家の証言

「発明が為された時において、当業者であれば該医薬品が結腸に吸収されるという合理的な期待を有し、ゆえに、そのクレームされた製剤を作る動機づけを与えられたであろう」という専門家の証言に基づいて、一日一回服用の徐放性型オキシブチニン薬に関する特許は自明である。(Alza Corporation v. Mylan Laboratories Inc., et al., CAFC, 9/6/06)
事実概要
Alza Corporation(以下、Alza)は、尿失禁を治療し、Ditropan XL? の名称で流通しているオキシブチニン薬の一日一回服用の徐放性製剤、その投与形体およびに尿失禁の治療方法に関する米国特許第6,124,355号(以下、’355特許)を所有している。Alzaは、Mylan Laboratories Inc.(以下、Mylan)が一日一回服用の徐放性オキシブチニンのジェネリック薬(後発品)を簡略化新薬申請(ANDA: abbreviated new drug application)した後に、同社を被告として特許権侵害訴訟をウェスト・ヴァージニア北部地区連邦地方裁判所に提起した。

連邦地裁の審理は、発明当時の当業者の知識において、先行技術から’335特許が自明であったかどうかに焦点があてられた。Alzaは、侵害の立証責任において、’335特許の先行技術に対する非自明性を主張するにあたり、Mylanの簡略化申請された製剤が’335特許にクレームされた徐放速度で胃腸管に吸収されるという直接的な証拠を提出しなかった。しかし、Alzaは、他の2つの証拠(一般薬がオキシブチニンを生体外溶解装置において放出する速度およびMylanのANDAの薬品が血流にオキシブチニンを蓄積する速度)を提供した。非陪審審理の後、侵害はなかったと認定され、当該’355特許は、新規性を欠き、自明であるとして、無効であると判示された。388 F.Supp.2d 717 (N.D. W.Va. 2005)

これに対し、Alzaは控訴した。
 
確認

判旨
自明性に関して、クレームされた発明は、発明が同一の内容で開示され、あるいは記載されていなくとも、出願にかかわる技術と先行技術の間の差異が、発明が為された時において、当該技術の属する分野における当業者(以下、「当業者」)にとって、当該技術を全体として自明にせしめる場合、特許は許されない。

連邦地裁の「’335特許は先行技術の教示から自明性がある」という事実認定を明らかな誤りの基準に照らして審査するのに、In re Dembiczak事件(175 F.3d 994 (Fed. Cir. 1999))を引用する。自明性を裏付ける事実についての審理は、以下の中に見出さなければならない。(1) 従来技術の範囲と内容、(2) 先行技術における通常の技能の程度、(3) クレームの発明と先行技術との差異、(4) 非自明性の客観的な証拠。同様に、先行技術または参照文献(references)を組合せる動機づけの有無、そのような組合せを作る合理的な期待の有無が問題となる。

自明性の分析は、Graham v. John Decree Co.事件(383 U.S. 1 (1966))における連邦最高裁の判示を承認し、(1) 従来技術の範囲と内容、(2) 先行技術における通常の技能の程度、(3) クレームの発明と先行技術との差異、(4) 非自明性の2次的な審査の基本的な事実調査をもって行われる。Grahamでの第4点の議論を引用して、後知恵(hindsight)を用いる危険性を防止し、問題となる発明の教示を先行技術に読み込む誘惑に打ち克つために非自明性の2次的な審査が必要である。さらに、特許法第103条を引用して、Grahamおよび特許法の規定は、自明性の審査は発明がなされた時点を基準として行うべきである。

組合せに基づく特許に関係する事件における後知恵およびその他の懸念に対処するために、「教示を示唆する動機づけ」テストを発展させてきた。In re Kahn事件(441 F.3d 977 (Fed. Cir. 2006))において、このテストは、「先行技術に反映されている理解および知識を有し、発明者の直面した一般的問題によって動機づけられた当業者が、クレームに記載されている組合せを作るように導かれたかどうか」を問うものである。

この「組合せの動機づけ」要件は、後知恵について先例Grahamおよび特許法第103条に合致するだけではなく、当控訴裁判所の前身の裁判所の先例とも合致する。この点について、In re Fridolph事件(30 CCPA 939, 57 USPQ 122 (CCPA 1943))における複数の参照文献を考慮する場合には、問題は常に、そのような技術が発明者のしたことを示唆するか、ということである。

さらに、In re Kahnに依拠して、「組合せの動機づけ」要件には、Grahamの「先行技術の範囲および内容」と「関連技術における通常の技術の程度」の双方を考慮しなければならない。
 (…… 以下略)

*判決内容詳細については “I.P.R.”誌でご確認ください。

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