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2007.05.01

野崎篤志

【アジア・東欧プロジェクト】 第4回:ブラジル特許庁訪問記(後編)

NGBでは2006年秋より「第3次アジア東欧プロジェクト」が進行中です。本コーナーでは各国の訪問が順次済み次第、成果の一部をご報告していきます。
ブラジル特許の出願審査滞貨(バックログ)問題についてのレポートである。

今回訪問したブラジルの各法律事務所の弁護士らは、口を揃えて特許庁のバックログの問題を指摘していた。2006年12月時点で、約14 万件もの特実意の出願がバックログとして庁に係属しているとのことである(ブラジルの制度上、特実意はいずれもパテント(patente)として一括りにされており、統計上ひとまとめに論じられることが多い)。意匠がいわゆる無審査登録主義であり審査遅延が生じていないことや、実用新案は特許同様に審査主義であるものの相対的に件数が少ないことを考慮すると、この約14 万件の大部分は特許出願であり、相当数が日本を含む国外からの出願であると思われる。

当然、出願審査は大幅に長期化し、1 件の特許出願の審査にかかる期間は5~8 年であるといわれている。

庁訪問時に入手した出願件数の集計資料によれば、昨年の特実意の出願総件数は3万件弱ということであり、その数は近年増加傾向にある。一方、アウトプットとしての特許発行数(実、意を除く)のデータを見ると、その数は毎年数千件であるという。審査請求せずに取下げとなる案件や、拒絶確定の案件数を考慮しても、この状況では相当数のバックログが生じてしまう。

さらに、実際の現場として、審査官の担当の割当てや管轄をするというチーフのオフィスも見せていただいたが、いずれの技術分野でも壁一面、床一面、ファイルの山であり、その現状を如実に物語っていた。

特許庁側も、この問題を深刻に受け止めている。前回ご紹介したように、ブラジル特許庁は審査官の大幅な増員、他国特許庁との連携強化、包袋の電子化、を三本柱として、出願審査の件数の増加、質の向上に努めるという明確な方針を打ち出している。

審査官数の増員に関して、元々100 名程度(2006年12月現在)である審査官の数を、近いうちに200 名以上、さらに数年のうちに450 名程度まで増加させる計画であるという。さらに新規採用者は、博士号取得者をはじめ、技術に関して高度な専門性や経験を備えている人材を積極的に集めているという。

面会した特許庁の審査官は、近い将来バックログは劇的に減るだろうと自信を示していた。もっとも、このような人員補強による処理量の増加を相当あてにしているような印象を受けるが、特許出願の審査は技術に関する知識のみならず、法律、手続きに関する高い専門性が要求されることはいうまでもない。審査官の数を数年で倍増させるという計画がうまく軌道にのるか、また、審査官の数が増えたとしても、審査の質や処理数が向上するかどうかは、まだ不確定な要素があることも事実である。

審査官の増員とともに、出願人側への明るい話題としては、新たな審査促進制度の導入が挙げられる。従来、出願係属中の発明に関して権利侵害等の問題が生じたとしても、特許庁の審査遅延に対して講じる策はなかったが、昨年12月から導入された新制度においては、権原なき第三者によって出願に係る製品が製造されていることなど、一定条件を満たせば、審査促進の請求をすることが可能であるという。以前、審査促進制度が導入されたものの、その後廃止された例もあったようだが、今回の制度の導入が、重要案件や紛争案件を抱える出願人に早期に適切な権利の付与が行われる制度として機能することを期待したい。

商標出願についても、近年バックログの問題が発生しており、昨年の段階でその数は約60万件と言われている。特許庁の計画では、このバックログを早急に解消し2008年には出願から登録までの期間を12ヶ月以内にまで短縮するということである。 既に2006年から電子出願の受付を介しており、新庁舎への移転や、包袋の電子化等庁内での業務の効率化が進められている。また、審査官の数も40名程から100名への増員を行っているとのことであり、バックログの解消に向けての着実に前進しているという印象を受けた。

(IP総研・技術グループ 米須)

(NGBウェブマガジン2007年5月号掲載記事より)

バックログの状況(医薬)
バックログの状況(電気機械)

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