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2007.08.15

特許/第103条/先行技術を組み合わせる動機と自明性の判断

当該技術の技能を有する者の常識では、先行技術のある組合せが自明であることの理由を示唆する。既知の方法に基づくお馴染みの要素の組合せにより、予期しうる結果を生み出すにすぎない場合には、ほぼ自明であるといえる。

発明の時点において、小型化、信頼性の向上、操作の単純化、コスト削減といった、広く理解されている適応化のために、当該技術の技能を有する当業者が、機械的な要素を有する一世代前の先行技術を組み合わせて、現代電子技術の構成要素を用いてアップデートするのは、合理的に自明なことである。(Leapfrog Enterprises, Inc. v. Fisher-Price, Inc., et al., CAFC, 5/9/07)

事実概要
2003年10月、Leapfrog Enterprises, Inc.(以下、Leapfrog)は、Fisher-Price, Inc.のPowerTouch製品が、米国特許第5,813,861号(以下、’861特許)のクレーム25を侵害しているとして、デラウェア地区連邦地方裁判所に訴訟を提起した。2004年9月、Leapfrogは訴状を補正して、Mattel, Inc.を共同被告として加えた。(以下、Fisher-Price, Inc.とMattel, Inc.をFisher-Priceと総称。)’861特許は、幼児が発音どおりに読むことができるようにする学習装置に関する。クレーム25は以下の通り。

   双方向性の学習装置であって、
   複数個のスイッチを具備する筐体と、
   前記スイッチと連通し、プロセッサおよびメモリを具備する音声発生装置と、
   各々の文字が一個のスイッチと関連付けられる文字列の少なくとも一件の描画と、
   前記プロセッサに前記描画の識別特性を連通するために設定された読取機を有しており、
   描画文字の選択がプロセッサと連通するための関連付けられたスイッチを作動させることによって、前記音声発生装置に選択文字と関連付けられた音声に対応する信号を発生させ、前記文字列における文字の位置によって決定される前記音声を発生させる双方向性の学習装置。

2005年4月7日の命令によって、裁判所は、本件特許クレーム25の用語をいくつか解釈し、「描画文字の選択(selection of a depicted letter)」の句の解釈に関しては、「特定の描画文字に連絡しまたは近接することによって、描画文字列から特定の描画文字を選択すること」という意味であるとした。

PowerTouchの被疑装置は、電子機器を含むヒンジ取付けのプラスチック製筐体と開いて平らになるスピーカーから成り、そのように開くと、ユーザーは、筐体の長方形の収納部分に本を置いて、その装置を利用することができる。本には、大きな色彩豊かな絵があり、絵の中に示された物に関連する単語が表記されている。ユーザーは、操作の各種モードを一つ選択することができ、フォニックス音声学モードでは、ユーザーがある頁の単語一つに触れると、装置がその単語を発音し、さらに単語の各音素を連続して発音し、最後に単語全体を再度発音する。その装置は、ユーザーが触れる頁の場所を検知するために置かれた本の下部にある「接点(crosspoints)」のグリッドを利用し、装置のプロセッサは、各接点と特定の反応に関連付けるためにプログラムされうるようになっている。本のある頁にあるいくつかの単語は、十分大きめになっており、単語の各文字が、別々の接点に対応している。しかしながら、フォニックス音声学モードは、各単語について同一の方法によって、単語の発音、音素の発音、そして再度単語の発音を実行するのであって、各文字が装置のプログラミングによる同一の反応と関連付けられているため、ユーザーが触れる文字とともに実行するのではない。

事件は事実審に係属したが、陪審は、2005年5月27日、こう着状態になった。当事者は取り決めによって、事件を地裁判断に委ね、記録に基づき、また陪審に付された時点において裁判所によりなされた判断に基づいて決定されるようにした。

2006年3月30日、地裁は、その判断を示して、’861特許のクレーム25の非侵害と自明型の無効性を認定し、PowerTouchの被疑装置は、「描画文字の選択(selection of a depicted letter)」を実行しえず、単に、文字ではなく単語を選択するにすぎないとした。裁判所は、ゆえに、PowerTouchは、クレーム25を侵害しないと認定した。また、クレーム25は、自明性のゆえに無効であるとし、米国特許第3,748,748号のBevan特許、the Texas Instruments Super Speak & Read(以下、SSR)装置、およびFisher-Priceの専門家証人、Ronald Milnerによる証言に基づき示された当該技術において通常の技能を有する当業者の知見との組合せに鑑みて判断した。

Leapfrogは、適時、控訴した。連邦巡回控訴裁判所は、裁判所および裁判手続に関する法律第1295条(a)(1)に基づき裁判管轄権を有する。

確認

判旨

i) 非侵害の認定
非侵害に関する地裁決定は、当裁判所が、明らかな誤りについて審理する事実問題である。Abraxis Bioscience, Inc. v. Mayne Pharm. (USA) Inc.事件(467 F.3d 1370, 1375 (Fed. Cir. 2006))参照。明らかな誤りの基準に基づき、裁判所認定は、錯誤に関する明確にして確固たる確信がない場合には、覆されえない。Impax Labs., Inc. v. Aventis Pharm. Inc.事件(468 F.3d 1366, 1375 (Fed. Cir. 2006))参照。

(…… 以下略)

*判決内容詳細については “I.P.R.”誌でご確認ください。

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