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2007.10.15

柏原雄人

【最近よくあるご質問】 アメリカ特許庁新ルールについて (2) Claim Practice (クレーム数の制限)

お客様から頂いた各種お問合せに対し、渉外部員が担当部門の協力を得て、お答えします。
今回のご質問は:
アメリカ特許庁がこの度採用する特許出願の新ルールについて、ポイントや対応を教えて下さい。(その2)
先月の「Continuation Practice」 (継続出願等の回数制限)に引続き、今月は「Claim Practice」(クレーム数の制限)他について、ご案内申上げます。

クレーム数の制限を受ける対象案件
・ 2007/11/01以降にアメリカへ出願される特許出願;
・ 2007/11/01以降にアメリカへ国内移行されるPCT出願;又は
・ 既に係属中の出願であって2007/10/31時点でファースト・アクションが未発送の案件

クレーム数の制限(1)
一つの出願において審査を受けられるクレーム数は
・ 総クレーム数25個以内
・ うち独立クレーム数5個以内

上記の制限を上回る数のクレームを審査にかけたい場合には、出願人側から Examination Support Document (ESD) をファースト・アクションの発送より前に提出することが要求されている。しかしながら、ESDの作成は(ときに鑑定書に例えられるほどの)コストがかかること、相手方の禁反言主張の根拠となるリスクがあること、更にはESDを提出しても制限数以上のクレームが認められるか否かは審査官の裁量に拠ることなどから、この選択肢を勧めるアメリカ人弁護士は少ない。

ここで終わればことは簡単、お客様とのお話の中でも「25個あればそう不足でもない」とのお声をよく聞く。しかしアメリカ特許庁は、出願人が2件以上の出願を並行して行って実質的に制限を超える数のクレームの審査を要求する途を事前に断つため、ダブル・パテント禁止の法理をからめて制限の対象を次のように広げている。

クレーム数の制限(2)
“特許的に区別できないクレーム”を互いに含む複数の出願において審査を受けられるクレーム数は、それら複数出願の合計数として
・ 総クレーム数25個以内
・ うち独立クレーム数5個以内

“特許的に区別できないクレーム”とは、どうにも分かったような分からないような訳(原語はPatentably Indistinct Claims)であるが、これ以上に洒落た訳も思いつかない。そもそもクレームが“特許的に区別できる”か否かは各案件毎に高度な法的判断が要求される問題であり、この場でその意味をこれ以上追いかけても意味がない。営業マンとしてはまことに不本意ながら、この専門用語をそのまま使わせて頂く。

アメリカ特許庁は、“特許的に区別できないクレーム”を潜在的に含む出願案件をあぶり出すため、一定の基準を設けて、それに合致する案件を出願人側に自己申告させる2段構えの方策を採った。それが以下の1.78(f)(1)と1.78(f)(2)である。

関連出願の特定・報告義務 37 CFR 1.78(f)(1)
以下の条件を満たす出願(或いは特許)が存在すれば、それらを特定して特許庁へ報告しなければならない。
(a) 所有者が共通;
(b) 少なくとも一人の発明者が共通;かつ
(c) 本件「実質的な出願日」から先後各2ヶ月以内の「実質的な出願日」を有する

(c)でいう「実質的な出願日」とは単にアメリカ出願日のみならず、広く次の「出願日」を含む。
・ 仮出願日
・ アメリカ出願日
・ 継続出願日/CIP出願日/分割出願日
・ 親出願日
・ PCT出願日(cf. アメリカへの国内移行日は含まれない)
・ 優先権主張日(複数あれば全て)

日本出願->アメリカ出願->継続出願->継続出願という、ありがちな出願フローを例にとれば「実質的な出願日」は4つ。各「出願日」を中心とした4つの“4ヶ月フレーム”のいずれかに、同様の「実質的な出願日」のいずれかが当てはまる出願案件を抽出せよ-というのが条件(c)の要求するところである。

公表当初(8月21日)のルールでは、過去に出願した全案件(係属案件)について上記の関連出願を特定・報告することが義務づけられており、世界中の企業の特許管理担当者を震撼させた。しかし10月10日、アメリカ特許庁は、「実質的な出願日」が同一日付の出願(特許)を除き、関連出願(特許)の特定は11月1日以降新たに行う出願のみにおいて行えばよいとの修正ルールを公表した。「実質的な出願日」が(先後各2ヶ月以内ではなく)同一日付の出願(特許)については、依然として過去に出願した全係属案件に対して調査を行わなければならないわけだが、これは次に述べる1.78(f)(2)の調査に必須のステップであり、いずれ避けてはとおれない作業である。

特許的に区別できないクレームを含むとの推定規定 37 CFR 1.78(f)(2)
1.78(f)(1)で特定された関連出願のうち、以下の条件を満たす出願(或いは特許)は、少なくとも一つの“特許的に区別できないクレーム”を含むとの推定がなされる。
(a) 所有者が共通;
(b) 少なくとも一人の発明者が共通;
(c) 本件「実質的な出願日」と同一の「実質的な出願日」を有し;かつ
(d) 実質的に重複する開示を含む

上記の4条件を満たす出願(特許)が存在する場合、出願人は“特許的に区別できる”旨の理由を説明して推定に反駁するか、ターミナル・ディスクレーマーを提出すると共に複数の出願がなぜ必要かの理由を説明するか、2つの選択肢から選択しなければならない。後者の選択肢、つまり“特許的に区別できないクレーム”を含むことを認めた場合には、更にクレーム数制限(2)の対象となり、各出願のクレームを合算して25以下に絞ることが要求される。

こちらは上記の1.78(f)(1)とは異なり、過去に出願した係属中の案件全てについて特定(ならびに反駁等)を行う必要がある。なお、過去分のうち10月31日以前にファースト・アクションが発送されている案件はクレーム数制限の対象から外れるため、推定を覆せない場合は単純にターミナル・ディスクレーマーの提出(権利期間の短縮)のみが問題となるはずである。

従来、互いに微妙に関連する複数の出願を行う際、一方が他方の足を引っ張ることにならないよう、出願日を同一日付に揃えてファイルするというテクニックは使われてきた。この途を予め塞ぐという観点から、本規定は「敵ながらあっぱれ」、一応の合理性は理解できる。しかし、たまたま今日特許庁へ提出した日本出願のクレームと、何年も前に行ったアメリカ出願の継続出願が偶然にも同じ日にアメリカ特許庁へ提出されたからといって、これら2つの出願が“特許的に区別できない”と推定されることに合理性は見出せない。

また「実質的な出願日」に優先権主張日が含まれていることは、外国人出願人にとって一つのハンデとなる。対象案件を特定するために工数がかかるというだけではなく、“特許的に区別できる”との反駁が出来ない場合にはターミナル・ディスクレーマーの提出によって権利期間が不当に短くなる可能性があるのだ。

アメリカ以外の特許庁や知財団体は、これらの点を主張してルールの「実質的な出願日」から優先権主張日を外す(或いはアメリカ出願日を外して優先権主張日のみにする)ことを提言して欲しい。

以上

本件ご案内は、NGB渉外部が、特許部や複数の現地代理人と協議の上作成したものです。正確な情報を提供する様細心の注意を払っておりますが、内容の信頼性・安全性を保証するものではありません。実際の案件に当られましては、出願代理人様のご提案に沿って運用して頂けますようお願い申上げます。

(渉外部 柏原)

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