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2007.10.15

野崎篤志

【Cases & Trends】米連邦最高裁の次なるターゲット(?)、特許権の消尽理論

議会における特許改革法案の審議がいまひとつ加速度に欠けるなか、昨年来次々と重要特許判決を下している最高裁がまた、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)判例の再検討を決定しました。(Quanta Computer Inc. v. LG Electronics Inc., cert. granted 9/25/07)

今回、最高裁審理の対象となるのは、LGエレクトロニクスの特許ライセンシーであるインテルからマイクロプロセッサとチップセットを購入するパソコン・アセンブリメーカーに対し、特許権者LGエレクトロニクスが提起した侵害訴訟であり、特許品販売に際し特許権者(ライセンシー)が課す「制限/条件」と「権利消尽」との関係が争点となっています。川下産業に対する特許権の縛りがどこまで可能かという観点からも注目を集めており、本年4月には政府(米訟務長官)が本件争点に関する意見書を提出しています。

以下、事件の概要と政府意見書概要をご紹介いたします。

[背景事実]

原告LG Electronics Inc.(LG)は、パソコンのコンポーネントやシステムに関する複数の特許を保有している。被告Quanta Computer Inc.、First International Computer, Inc. Q-Lity Computer, Inc.ら(以下併せて “Quanta”)は、LG特許のライセンシーであるインテル社からマイクロプロセッサとチップセットを購入し、これらをインストールしてパソコンを組み立て、ヒューレット・パッカード、デル・コンピュータらに納めていた。

インテルは、LGとのライセンス契約に基づき、これらの製品を販売する権利を有しているが、購入者がこれを非インテル製品と組み合わせることは認められていない旨をQuantaに通知していた。LGは、インテルのマイクロプロセッサやチップセットを他社のコンピュータ・コンポーネントと組み合わせる行為は、LGの組合せ特許を侵害すると主張して、Quantaを提訴した(LGはマイクロプロセッサやチップセット自体の特許権侵害は主張していない)。

地裁は、LG特許のシステム・クレームについて、LGの権利は消尽したと判断し、特許非侵害の略式判決を下した。

[CAFCの判断]

LGの控訴を受けたCAFCは、権利消尽について以下のように述べ、地裁の決定を覆した。

・・・特許の権利消尽(一般的にファーストセール・ドクトリンと呼ばれる)が、条件の付されない販売(unconditional sale)によって引き起こされることは自明の理である。特に条件を付すことなく特許対象装置販売することにより、その購入者による特許装置の使用についてコントロールする特許権者の権利は用い尽されたことになる。このルールの背景にある理論は、かかる取引において特許権者は、当該製品のすべての価値に相当する額を交渉し、受領したというものである。ただしこの権利消尽理論は、明示的に条件が付された販売やライセンスに対しては適用されない。かかる取引の場合は、特許権者によって与えられた「使用」権の価値部分についてのみ価格交渉を行ったものと推量されるからである。

本件において問題になった販売は2種類存在する。ひとつは、本件訴訟の前に行われていたものであり、LGがコンピュータ・システムとコンポーネントの特許ポートフォリオについてインテルに供与したライセンスがこれに該当する。これは、権利消尽法理の目的上、販売に相当する。2番目が、LGの許可のもとインテルが行ったマイクロプロセッサとチップセットの販売である。…… LGとインテルのライセンス契約は、コンピュータ・システム製造者がインテルのライセンス製品と非インテルコンポーネントを組み合わせることを、明示的に排除している。しかも、この条件付ライセンス契約は、当該ライセンスの限定的範囲を顧客に通知することをインテルに要求しており、インテルは現にそうしている。インテルが自らのマイクロプロセッサとチップセットを販売することは自由であるが、その販売には条件が付されており、インテルの顧客はLGの組み合わせ特許を侵害することを明示的に禁じられていたのである。「権利消尽理論は……明示的に条件付けされた販売やライセンスには適用されない(B.Braun Med.Inc., 124 F.3d 1426)」のであり、したがって、システム・クレームについて侵害を主張するLGの権利は消尽していないと判断される・・・。

[政府の意見書]

特許の権利消尽理論は、特許法によって与えられる排他権の範囲に関する根本的問題に関わるものである。最高裁がこの法理に真正面から取り組んだのはUnited States v. Univis Lens Co.事件(316 U.S. 241(1942))が最後であり、以降CAFCが最高裁の判例と抵触するような判例を構築してきた。

・・・CAFCの権利消尽理論の下では、明示的な条件付の販売に対して消尽論は適用されない。かかるCAFCアプローチの基礎は、Mallinckrodt, Inc. v. Medipart, Inc.事件(976 F.2d 700 (1992))に見出せる。同事件において、特許権者は、特許対象の医療機器に「使用は一回限り(single use only)」という表示を付して病院に販売した。この医療装置は、実際には再利用可能であったが、多くの病院は使用後の機器を特許権者に返送した(特許権者はそれを再調整する)。このような再利用制限に対しては、最高裁の判例に従えば、明示的な再販制限と同様、強行不能な条件と判断されることであろう。しかしながら、CAFCは、「使用は一回限り」表示を特許侵害訴訟において強行可能な条件であると判断したのである・・・。Mallinckdodt事件や本件の判決が示すとおり、CAFCは、最高裁の示したファーストセール・ドクトリンを、「無条件」販売か「条件付」販売かで区別すべきものであり、後者には購入後の製品を使用または再販売する権利が制約を受けるあらゆる販売が含まれるものと認識している。その結果、CAFCの判例下では、特許権者が特許発明を具現した製品に制限を課すことができ、特許権者またはそのライセンシーによって販売された後も、川下の購入者に対し、この制限を特許侵害訴訟において強行することが可能となる。・・・「条件付」販売に対するこのように広い解釈は、最高裁の判例を反映するものではない。・・・特許権者がかかる制限(条件)を強行する権利を契約上の問題として有する何らかの可能性があるにせよ、合法的購入者に対し、連邦特許法に基づきかかる制限を強行することが許されるか否かは、実務上きわめて重要であり、最高裁は本件によりかかる問題を検討すべきと考える。

最高裁のヒアリングは来年早期に行われる見込み。

(渉外部・飯野)

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