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2008.06.27

保苅宏

特許/当事者適格/無遺言相続に基づく特許権の移転に関する準拠法の選択

特許/当事者適格/無遺言相続に基づく特許権の移転に関する準拠法の選択

特許法第261条は、特許権の移転に関して、「書面による方式によって、法律上、譲渡しうる」と規定している。発明者の死亡による特許権の移転が存在する場合であって、正当な譲渡がなされるようにするためには、同条の規定により、移転に関する書面を要する。
移転原因が無遺言の相続であって、親族が相続人として日本法の適用を受ける場合には、発明者に所有権があったいかなる個人財産も、直ちに、相続人である親族に帰属する。対象の個人財産が、米国特許である場合には、米国特許法と日本の無遺言に関する相続法との抵触問題を解決する準拠法を決定しなければならない。
 第261条の書面による要式行為の規定に反して、単に特許の所有権を移転する手段として、譲渡を制限するものは何ら存在しない。判例によると、特許の所有権は、法の適用によって変更されうることを示しており、州の相続法に基づいて移転されうるとした事例、排他的に州裁判所の問題であるとされた事例が存在する以上、この原則を本件に適用すると、州法に対比して、特許の所有権を決定するためには、外国法である日本法に着目することを要する。
(Akira Akazawa, et al. v. Link New Technology International, Inc., CAFC, 3/31/08)

事実概要
本件に関するAkazawa家の人々に関して、混同を避ける必要性から、以下、各々の名(ファーストネーム)によって言及することにする。
 Yasumasa Akazawa(以下、Yasumasa)は、米国特許第5,615,716号(以下、’716特許)に関する唯一の記名された発明者であって、同氏は、同氏死亡時である2001年3月25日において、’716特許を所有していた。Yasumasaは、同氏死亡時点には、適式に作成した遺言書を残していなかった。ゆえに、日本法により、順に同氏の妻と娘である、Hitomi Akazawa(以下、Hitomi)、Yuki Akazawa(以下、Yuki)、およびFumi Akazawa(以下、Fumi)は、Yasumasaの確定した相続人となる。YukiとFumiは、「相続協議書」において、’716特許に関する権利をHitomiに譲渡した。その後、Hitomiは、’716特許に関する一切の権利をAkira Akazawa(以下、Akira)に移転する譲渡証を作成した。
 2003年10月10日、AkiraとPalm Crest, Inc.は、Link New Technology International, Inc.(以下、Link)に対して、’716特許の侵害を主張して、訴訟を提起した。Linkは、Akiraには侵害訴訟の提起に関する当事者適格がないとする根拠に基づく略式判決を求めた。カリフォルニア中部地区連邦地方裁判所は、日本法が、Yasumasaの死亡による’716特許の帰属を決定しうるとしながらも、特許法は、譲渡証作成を要件とする方式を決定するとの見解を示した。地裁の結論によると、Yasumasaの死亡時において、’716特許に関する権原は、遺産の法定代理人によって作成され正当に譲渡されるまで、その遺産の中に保持されるとし、さらに’716特許に関してYasumasaの遺産からその相続人に移転する旨の書面が存在すること、または権原に関するその他の連結点が’716特許の所有権をAkiraに認めていることを証明するのは、Akiraの責任であるとした。地裁は、Akiraが証明責任を果たしていないとし、Linkによる略式判決を求める申立てを認めた。
AkiraとPalm Crest, Inc.(以下、総称して、控訴人)は控訴した。連邦巡回区控訴裁判所は、裁判所および裁判手続に関する法律第1295条(a)(1)に基づき裁判管轄権を有する。

取消し、差戻し

判旨
 当事者が訴訟提起の適格性を有するか否かは、法律問題であって、当裁判所は、最初から第一審として審理する。Prima Tek II, L.L.C. v. A-Roo Co.事件(222 F.3d 1372, 1376 (Fed. Cir. 2000))参照。
 当事者は、地裁においてそうしたように、特許法第261条と日本法との間の相互作用に着目している。第261条は、条文上、「特許出願、特許、およびそれらに関するいかなる利益も、書面による方式によって、法律上、譲渡しうるものとする」としている。特許法第261条参照。Linkの主張によると、この規定は、死亡による移転が存在する場合であって、二者間に正当な譲渡がなされるようにするためには、書面を要することにしているとする。Linkによると、米国特許法と日本の無遺言に関する相続法との抵触は米国法によって解決されなければならないとし、「外国法は、特許法に基づく権利と義務の決定に意味をなさない」からであるとする。ゆえに、Linkの見解によると、Akiraは、’716特許を所有していないことになっているとして、それは、書面上、’716特許の移転が、Yasumasaの財産からHitomi、Yuki、およびFumiになされたとするものは存在しないからであるとして、母と娘の間の相続の合意、およびHitomiとAkiraの間の合意があるにもかかわらずそうであるとしている。
 一方、控訴人は、日本の無遺言に関する相続法の下では、Yasumasaの所有であったいかなる財産も、ただちにその相続人であるHitomi、Yuki、およびFumiに移転していると主張する。日本民法第882条、同第887条、890条、896条(Basic Japanese Laws (1997)、Hiroshi Oda、Sian Stickings訳)参照。換言すると、’716特許について、Yasumasaの財産からHitomi、Yuki、およびFumiに移転する旨の書面は、必要とされることはないというのは、日本法の適用によって、Hitomi、Yuki、およびFumiが、Yasumasaの死によって、即時、’716特許を所有することになるからである。確かに、控訴人の主張の下では、Yasumasaの財産から’716特許を移転することを呈するような書面は、意味がない。遺産が特許を所有することはないからである。
 当裁判所は、地裁が単に第261条のみに着目するのは、誤りであると判断する。特許法第154条の規定は、「すべての特許は、発明の簡単な名称を含み、特許権者とその相続人または譲受人に権利を認めるものとし、この権利は、その他の者に対して、合衆国において当該発明を製造し、使用し、販売の申し出をなし、または販売することを排除する・・」特許法第154条(a)(1)参照。当事者双方が留意しているように、特許の所有権は、譲渡によって移転されるものであり、第261条は、かかる移転に書面による方式の譲渡を要件としている。特許法第261条参照。しかしながら、何ら、単に特許の所有権を移転する手段として、譲渡を制限するものは存在しない。確かに、判例は、特許の所有権が、法の適用によって変更されうることを示している。
 特に、本件に関連するのは、H.M. Stickle v. Heublein, Inc.事件(716 F.2d 1550 (Fed. Cir. 1983))である。

 ・・・中略

 同様に、当裁判所は、日本法が、本件において、’716特許の所有権を決定すべきではないとする理由をなんら認めない。確かに、地裁は、この原則に同意するかにみえ、「日本は、’716特許が、Yasumasaの死亡により、何者に移転されるかを決定しうる」と説示した。ゆえに、米国特許法ではなく、無遺言相続に関する日本法を解釈することは、Akiraが本件訴訟を提起する当事者適格を有するか否かを決定する第一段階となる。
 当裁判所に提示された証拠として、特に、無遺言相続に関する日本法の翻訳は、Yasumasaの死亡時において、Hitomi、Yuki、およびFumiが、’716特許の所有者となっていることを示唆している。管財人が日本法の下に本件において要求されるか否か、かかる管財人の役割、および、管財人の存在がYasumasaの相続人に特許の移転に影響があるか否かは、不明確になっている。地裁は、「Yasumasaの遺産の法定代理人が何者であるか、または日本法の下ではどうであるかに関する意見」を提示しておらず、「さらに、争点を決定する必要はない」と説示している。これらの争点は、第一審として地裁によって決定されるのが最良である。Merck & Co., Inc. v. U.S. Int’l. Trade Comm’n事件(774 F.2d 483, 488 (Fed. Cir. 1985))参照(連邦民事訴訟手続規則第44.1条に基づき、外国法の決定事項は、第一審としての地裁の問題であると判断した)。
 地裁が、’716特許は、Yasumasaの死亡によって、Hitomi、Yuki、およびFumiに移転されたと判断するならば、その後に続く、Hitomi、Yuki、FumiとAkiraとの間の移転が、’716特許の所有権をAkiraに譲渡することになる。しかしながら、地裁が、日本法に基づき、’716特許は、遺産管財人の支配下であるYasumasaの財産に移転されると判断するならば、第261条に基づく書面による合意が必要となり、もって遺産からYasumasaの相続人に特許を譲渡することとなる。無遺言相続に関する日本法の解釈の問題は、本件を解決するために判断されなければならない。当裁判所は、取り消し差し戻して、地裁が、これらの争点を第一審として審理できるようにする。

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