IP NEWS知財ニュース

  • 知財情報
  • アーカイブ

2008.09.04

【世界の知財プロに聞く】第4回 VIDYA SAGAR氏(インド弁護士)

世界各国から毎日のようにNGBを訪れる知財プロフェッショナルたちの素顔に迫るコーナー。
第4回ゲストはインド弁護士VIDYA SAGAR氏。

SAGAR氏は、80歳を過ぎた現在も特許事務所においてインド知財の発展に心血を注がれ、2000年長年の夢であったインド・ヨーロッパの文化を融合したインターナショナル・スクールの創立を実現したインド知財界が誇るグレート・ソロモン。SAGAR氏のNGB訪問時、インドの知財事情についてお話を伺いました。

※ SAGAR氏はREMFRY & SAGAR所属
※ THE SAGAR SCHOOL

Q1. ご出身はどちらですか?
ホームタウンはデリー首都圏の衛星都市グルガオンです。

Q2. インドの産業について簡単に教えてください。
インドは広範囲な気候と多様な資源を有するため多産業型地域です。今日強い産業は社会基盤(エネルギー、通信、運輸)、製薬(主にジェネリック)、ソフトウェア、自動車部品、繊維製品等です。これらの産業は急成長をしています。

また権利取得に関しては、特許分野では電子産業、自動車部品産業に次いで製薬産業が、意匠分野では主に自動車産業、電気製品が権利取得に積極的な産業です。商標分野では知財に対する意識がそれほど高いわけではかったのですが、近年この状況に変化が生じており権利を尊重する方向に進歩してきています。

Q3. 外国からの投資の状況は如何でしょうか?
1991年までインドは外国からの投資に対して大変制限が加えられておりました。投資環境は徐々に改善していますが、まだ十分な水準には達していません。目に見えない制約によって、結果的にインドが享受すべき外国からの投資をまだ十分に受け入れることができないのです。

Q4. いつもご家族とどんな趣味を楽しまれていますか?
私は普通の家庭を持っていないのではないかと心配しています。私は現在インドに居を構えていますが1年のうち6ヶ月程旅先で過ごしています。また私の妻はドイツに住んでおり、私の息子もパリ・インド間を行き来するファッションデザイナーで、私の娘はニューヨークで投資銀行業務をしています。私が家族と楽しめるのは旅行だけという感じですが、自分自身でも史跡訪問、音楽、読書(宗教哲学、歴史、旅行記)などを楽しんでいます。

Q5. 大学時代何を勉強されましたか?
私はパキスタンのパンジャーブ大学で歴史および経済を学び、その後パンジャーブ大学、インドのデリー大学、パリのソルボンヌ、ロンドンの法学院リンカーンズ・イン(法廷弁護士)、そしてベルリン自由大学(法博士)で法律を学びました。また化学も2年間学習しましたが、今どんな技術にも順応できるかどうか少し心配です。ただ実務において特許法に精通し、多くの特許訴訟に従事しています。

Q6. 知財ビジネスに興味を持たれ、知財業界に入った理由を教えてください。
弁護士活動を開始してすぐ知的財産に興味を持ちました。1972年知財ファームREMFRY&SONを引き継ぐことになり、その後、農業経済から工業経済に徐々に変化するインドの未来の先には知財があると信じ運営に取り組んできました。私はこのことを決して後悔していません。

Q7. 今、知財ビジネスにおいて何に興味を持たれていますか?
私は現在REMFRY&SON と私自身が運営していたSAGAR & Co.との合弁から生まれたREMFRY & SAGARのシニアパートナーです。すべての部門(商標、特許、企業法)からの重要事項に関心を払っていますが、特に特許訴訟に関心があります。

Q8. インドの企業は一般的にどのように知財を取扱っていますか?
ほとんどのインド企業は、自社に知財部門を有しておりません。彼らは主に代理人と仕事をしていますが、知財ファームと連携しながら知財活動を行なう傾向がとても強いというわけではありません。

Q9. インドの知財教育の現状について教えてください。
知財教育は注目を受けるに値するものですが、訓練を受けた審査官、技術スタッフ、特許を扱うことができる裁判官など人的資源が不足していることが専門家育成の多少の妨げとなっています。ただし、知財教育が注目を浴びるのは時間の問題であると思います。

Q10. インドにおける知財分野における資格について教えてください。
インドは商標と特許の分野において、弁理士、弁護士の制度を有しています。弁理士は高校卒業に加え特許又は商標庁により実施される試験に合格する必要があります。ただし弁理士は法廷に立つことはできません。一方、弁護士は高校卒業に加え3年から5年間の法律学習を必要とし、インドにおいて法廷に立つことができます。

Q11. インドにおける技術移転ビジネスの実情について教えてください。
現在インドでは高度な技術が必要とされてきているため、すべての領域において技術移転及びライセンシングが大規模になりつつあります。幸運にも、近年技術移転及びライセンシングに関する法律が自由化され、インドの産業の更なる近代化に結びついていくと思います。

Q12. 外国企業からのインドへの知財アウトソーシングの実情について教えてください。
言語(英語)に関するアドバンテージ、高い教育水準、低コスト等により、インドはクレームドラフティング、特許年金管理、調査等の業務を含む幅広い領域におけるアウトソーシングを行なうためのハブになっています。しかしながら、インドにおける従業員報酬が上がりコストを押し上げているので、これはずっと続かないかもしれません。

Q13. インドにおける最近の知財ニュースを一つ教えて下さい。
特許において、海外のグローバル製薬会社とインド製薬会社間には、最高裁を含む様々な裁判所で係争中の誘導体(Derivatives)に関する特許性解釈において摩擦があります。私どもの事務所はそれらに深く係わっています。私はいつかTRIPS協定に対して修正が求められることになるかもしれないと感じています。

Q14. 関心がある日本の知財トピックを教えてください。
私たちは日本での知的財産の発達について行こうと考えています。私が関心を寄せている一つのトピックは、職務発明における報酬、ソフトウェアおよびビジネスモデルに関する特許性、著名商標の認定などです。

Q15. この機会を利用して読者にメッセージをお願い致します。
知財関係者は互いの権利を尊重するIP Pollution Free Worldの国際意識を広げる運動に参加していくべきです。このIP Pollution Free Worldという言葉は侵害、偽造等のない世界を指しています。

(記事担当:特許部 渡邊)

免責事項
このウェブページに含まれる情報は海外知的財産専門家により提供されたものであり、情報提供のみを目的としております。NGBは正確な訳文を提供することに努めておりますが、情報の内容を保証するものではありません。

(NGB 特許部福井部長と)

関連記事

お役立ち資料
メールマガジン