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2009.01.22

保苅宏

■特許/侵害評決/専門家証言の信憑性に基づく陪審評決再衡量の適否

Johns Hopkins University, et al. v. Datascope Corporation, CAFC, 10/2/08

法律問題としての判決(JMOL)を求める申立てが認められる場合とは、地裁が、証拠を衡量することなく、証人の信憑性を考慮することなくして、実質的な証拠が陪審の認定を支持していないと判断する場合である。地裁によるJMOLの拒絶を審理する際、控訴裁判所は、証言が全体的に外観上信憑性のない場合を除いて、被申立当事者に有利なものとして信頼できると推定しなければならないが、専門家の見解が事実に関する証拠に反する場合には、信頼されるには及ばない。勝訴当事者に最も有利な観点からすべての証拠を審理した後に、控訴裁判所が確信して、合理的な陪審はその当事者に有利な認定を行ないえない場合には、JMOLを求める申立ての拒絶を破棄しなければならない。
 被疑装置のワイヤ構造が血管内腔に「三次元において接触する」という陪審説示に示された原告の証拠に反して、原告側の専門家が「二か所だけで接触している」とする証言は、矛盾しており信憑性がない。いかなる合理的な陪審も、信憑性がない見解に基づいて争点の限定を文言上、充たしていると認めることはない以上、文言侵害の評決は、実質的な証拠によって支持されていないものと判断される。被疑装置が陪審説示において定義されたように要求される機能を実行しないからである。陪審の侵害評決が、実質的な証拠によって支持されておらず、被告が求めたJMOLの申立ては認められるべきであると判断する。
 反対意見は、陪審評決を審理する際、評決に有利にあらゆる合理的な推定を行なわなければならず、信憑性に関する判断や証拠を再衡量することはなく、信憑性の判断、証拠の衡量、および法律的な推定を事実に基づいて行なうことは、陪審の機能であって、判事の行なうところではないところではないので、控訴裁判所は、その自らの認定に代替してはならないとして、当事者双方の装置のワイヤ構造は、回転中のワイヤの動きによって血栓を破砕するから、争点クレームの「破砕手段」であると認められ、他のクレーム限定として、破砕手段が血管に「適合するよう拡張する」ことに関して、両者のワイヤ構造は、同様のステップで血管中の凝血塊に接触するために拡張し、血管の大きさに適合すると認めた。陪審が侵害認定する際に基づいた説示は、当事者によって合意されており、証拠に抵触する要素が存在する場合には、JNOV(judgment non obstante verdict、陪審評決と異なる判決)による事実審裁判所または控訴裁判所のいずれも、その選択を陪審のそれに置き換えることができないとした。

事実概要
 Johns Hopkins University(以下、Hopkins)は、米国特許第5,766,191号(以下、’191特許)、同第6,824,551号(以下、’551特許)および同第7,108,704号(以下、’704特許)の所有者であり、Arrow International, Inc.(以下、Arrow)は、それらの専用実施権者であって、当該各特許の名称は、「Percutaneous Mechanical Fragmentation Catheter System(機械的破砕に関する経皮カテーテルシステム)」である。三件の特許すべては、血の塊であって、特に、合成血管を塞ぐ血栓の物質を機械的に破砕するための方法を対象としており、共通の明細書を有する。
 特許された方法が対象とする問題は、長期血液透析を受けている患者が、およそ年に三回または四回、経験するその透析アクセス移植片の閉塞に関している。各々のクレーム方法において、破砕カテーテルは、血管の導管に導入されるが、典型的には、外装鞘を通して行なわれる。配置によって、カテーテルの遠位端にある破砕ケージまたは籠は、血管導管の内側の内腔に適合するよう拡張する(下図参照)。配置後、破砕ケージは、血管導管の障害物となる血栓物質と均質になるのに十分高速で回転される。その後、均質化された破片は、安全に流され吸引される。
原告の訴状は、被告Datascope Corporation(以下、Datascope)のProLumen装置の使用が’191特許と’551特許侵害していると申し立てている。’704特許が発行した後、原告は第二の訴訟を提起して、同様にその特許侵害を主張した。二件の事件は併合されたが、後に分離審理された。すなわち、先ず陪審に付すべき侵害とDatascopeによる自明性の積極的抗弁に関してであり、また、Datascopeの積極的抗弁が後の事実審後に裁判所によって判断されるべき’704特許に関する不衡平行為と不正行為についてである。2007年6月15日、陪審は、以下のことを認定した。(1) Datascopeは三件の特許に関する主張クレーム全てを直接侵害している、(2) 各特許の主張された独立クレームは無効ではなく自明でもない、(3) 原告は、各々、Arrowについて$460,583、Hopkinsについて$230,292の損害賠償を請求する権利を有する。
 翌月、メリーランド北部地区連邦地方裁判所は、不衡平行為と不正行為に関するDatascopeによる積極的抗弁について裁判官による事実審を行なった。地裁は、Datascopeが’704特許の出願を行なった代理人による不公正行為を証明していないと判断して、ゆえに、その抗弁に対する三件の特許に関する実施可能性を支持した。
 侵害と自明性の争点に関して、被告は、規則第50条と第59条に基づいて、法律問題としての判決(以下、JMOL)か、または選択的に新たな事実審を求める申立てを行なった。地裁は、その両方を拒絶した。自明性に関しては、裁判所は、Datascopeによる先行技術に関する証拠として、その専門家であるDr. Thomas Aretzの証言によって提示されたところに留意した。陪審は、証人の信憑性を判断しその証言を疑う自由を有するので、その評決は、法律問題として誤りではないとして、ゆえに、裁判所は、JMOLを求める申立てを拒絶した。また、裁判所は、新たな事実審を求める申立ても拒絶して、Datascopeの申立てが、第4巡回区によって明示された連邦民事訴訟規則第59条(a)に基づく新たな事実審を求める根拠を示していないからであるとした。侵害に関しては、地裁は、陪審の結論が証拠に関して明確な衡量に反するものではないと認定して、ゆえにこの争点に関しても同様に、JMOLまたは新たな事実審を求める申立てを拒絶した。最終的に、裁判所は、陪審の評決と裁判所自体の認定に基づいて判決を登録した。
Datascopeは、適時、判決に控訴した。連邦巡回区控訴裁判所は、裁判所および裁判手続に関する法律第1295条(a)(1)に基づき裁判管轄権を有する。

破棄、差戻し

***** 以下略 *****

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