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2010.10.15

■特許/第102条(e)/仮出願の日を優先権主張する特許の引例有効日の認定

(In re Peter Joseph Giacomini, et al., CAFC, 7/7/10)

 特許法第102条(e)(2)は、特許を受けられる場合として、当該発明が、その特許出願人による発明より前に、米国において他人により出願された「特許出願」上に認可される特許に記述されていない場合を規定している。出願が特許認可される対象は、最初の米国出願であって、その特許にクレームされた発明を開示するものであり、特許法第111条(b)(8)により、特許出願に関連する本法の条項は、仮特許出願に適用される。ゆえに、出願人が特許を受けられない場合として、他人の特許が同一の発明を開示している場合であって、先の米国仮出願または正規出願による場合が挙げられる。
 審判請求人(控訴人)は、その出願にクレームされた発明が引例特許に記述されていることを争っておらず、引例特許の出願が優先権主張した仮出願は、控訴人の出願日に先行しており、最初の米国出願として当該発明を記述している以上、引例特許は、あたかもその仮出願の日に出願されたものとして、クレームされた発明に関して、特許の優位性を有する。控訴人は、引例特許の仮出願提出後に自らの出願を行なった者となるから、同一の主題を対象とする特許は、第102条(e)に基づいて、認可を受けることができない。
 控訴人の主張によると、特許法第119条(e)は、特許の優先日をシフトするのであって、引例としての有効日を先の仮出願の出願日にシフトするのではないから、本件引例特許はその優先権主張をその仮出願にしているが、同特許は、その仮出願の出願日現在の特許の優位性を有するものでないとしている。この優先日と引例有効日の区別は、In re Hilmer事件判決に由来するのであろうが、同事件は、第119条の特許優先日と第102条(e)の引例有効日とを区別したのであり、控訴人が米国仮出願と外国特許出願とを同等にして、仮出願の出願日が、先行技術文献としての特許の有効日にならないと主張するために供することは、先の外国出願が絡んでいるHilmer事件と先の米国仮出願に関係する本件との重要な差異を見損なっている。Hilmer事件判決は、先の外国出願が対応特許の引例有効日をシフトするとしていない。第102条(e)の明示的な要件は、先の出願が「米国内で出願」されたこととなっているからである。第119条は、第102条(e)をもって、明示的な国内に関する限定を修正するために解釈されることはありない。対照的に、先の仮出願とは、「米国内で出願」された出願のことである。仮出願の出願日を当該特許の優先日とその引例有効日の双方として見做すことは、第102条(e)と第119条間に対立関係を提起することはない。明らかな区別が外国法と国内法の間にあることに鑑みて、Hilmer事件判決は、控訴人が依拠するところの場として、誤っている。

事実概要
 Peter Joseph Giacomini、Walter Michael Pitio、Hector Francisco Rodriguez、およびDonald David Shugard(以下、総称して、Giacomini)による審判請求の対象は、特許審判抵触審査部(Board)の審決であって、米国特許出願第09/725,737号に関する特定クレームについて、特許法第102条に基づく新規性欠如の拒絶を確定したのに関している。Ex parte Gia-comini事件(No. 2009-0139 (B.P.A.I. Apr. 15, 2009))参照。Giacominiは、新規性欠如の根拠とされた引例としての米国特許第7,039,683号(以下、Tran特許)が先行技術に該当しないと主張して、Giacominiの出願日がTran特許のそれより先行するとの理由を挙げている。しかしながら、Tran特許は、特許として優位性を有するとして、その仮出願の出願日を優先権主張の根拠として、Giacominiの出願より先行するとされた。
 Giacominiの出願は、「Method and Apparatus for Economical Cache Population」であって、2000年11月29日に出願された。その出願は、「キャッシュ」と呼ばれる容易にアクセス可能なメモリに選択的に保存された電子データに関する技術をクレームしている。システムが要求されたデータを情報源から取り出すとき、そのデータをキャッシュに保存しておくと、そのデータは次回から、より迅速に取り出すことができる。キャッシュが有する領域は限られているので、システムは、選択的にデータを保存しなければならない。Giacominiの技術によってキャッシュにデータを追加する場合は、唯一、システムが、あるデータに関して特定数の要求を受けたときだけである。クレーム1の方法クレームは、キャッシュにデータを保存するのは、少なくとも1より大きい整数の頻度で要求を受けた場合を記述しており、このキャッシュは、通常、まれに要求されるデータを含まないとして、複数の要求が生じたデータを「少なくとも、occasionally(時々)」保存するものであるとしている。Giacomini出願のクレーム1, 2, 8, 11, 12, 15, 22乃至24, 27, 28, 31, および32が、後の控訴の争点となる。
 Boardは、Giacomini出願の特定クレームに関して、特許法第102条に基づき、Tran特許によって、さらに選択的に米国特許第6,463,509号(以下、Teoman特許)によって新規性が欠如しているとして拒絶した。
 Tran特許は、「Electronic Information Caching」であって、データの予想される需要に基づいてキャッシュ保存する技術を記載している。その「予想モジュール」は、「同一のものに対するアクセス要求の過去分またはアクセス要求者による関連する電子情報」を考慮している。情報に対するそのような過去分の要求は、アクセス要求の頻度または量によって測定されることができる。Boardが認定し、Giacominiが争っていないこととして、Tran特許は、Giacomini出願においてクレームされた特徴のすべてを教示している。
 Boardにおける中心的な争点は、Tran特許が特許法第102条(e)に基づく先行技術としての適格性である。Tran特許の出願日は、2000年12月29日であって、Giacominiがその出願を行なったちょうど1か月後のことである。しかしながら、Tran特許は、仮出願(以下、Tran仮出願)を行なっており、それは2000年9月25日のことであって、Giacominiの出願日に先行するものである。ゆえに、Boardは、Tran特許はTran仮出願の日現在で特許として優位性を有していると判断した。
 Giacominiは、Board審決が、Tran特許とTeoman特許によりGiacomini出願が予期されるとしたのに対して控訴した。連邦巡回区控訴裁判所は、裁判所および裁判手続に関する法律第1295条(a)(4)に基づいて、裁判管轄権を有する。

認容

判旨
 当裁判所は、Boardによる制定法上の解釈を含む法律的な結論に関して、独自に審理する。In re Swanson事件(540 F.3d 1368, 1374-75 (Fed. Cir. 2008))参照。新規性の欠如は、事実問題である。In re Gleave事件(560 F.3d 1331, 1334-35 (Fed. Cir. 2009))参照。当裁判所は、Boardによる事実に関する判断を実体的な証拠によって審理する。
 第102条は、特許性の要件を規定している。制定法上、関連する部分は、特許法第102条(e)(2)に記述され、特許を受けられるのは、当該発明が、その特許出願人による発明より前に、米国において他人により出願された「特許出願」上に認可される特許に記述されていない場合とされている。出願が特許認可される対象とは、最初の米国出願であって、その特許にクレームされた発明を開示するものである。In re Klesper事件(397 F.2d 882, 885-86 (CCPA 1968))参照。特許法がさらに明らかにしている記述は、「特許出願に関連する本法の条項は、仮特許出願に適用されるものとし、排除される除外規定として、本法第115条、131条、135条、および第157条」がある。特許法第111条(b)(8)参照。この範囲を定める規定に基づいて、第102条にかかる特許出願は、仮特許出願および正規の仮特許出願を含んでいることになる。ゆえに、出願人が特許を受けられない場合として、他人の特許が同一の発明を開示している場合であって、先の米国仮出願または米国の正規出願からもたらされた場合が挙げられる。

以下、I.P.R.誌第24巻9号参照

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