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2010.12.15

保刈宏之

■特許/第292条(b)/私人による代理訴訟の当事者適格

(Raymond E. Stauffer v. Brooks Brothers, Inc., et al., CAFC, 8/31/10)

 いかなる原告も証明を求められる当事者適格は、憲法第III章の具体的事件性または紛争の要件に基づく裁判管轄上の前提条件からの要請であり、(1) 事実上の損害を被っており、法律上保護される法益の侵害であって、(a) 具体的で特定されうるもので、(b) 現実のまたは差し迫っており、推測または仮定に基づくものではなく、(2) 訴えられた損害と行為に因果関係が存在し、(3) 損害が勝訴判決によって救済される可能性があることに関して証明しなければならない。第292条(b)は、私人による代理訴訟の規定であり、いかなる者にも、自身同様に政府のために訴訟遂行を認めており、先例となるVermont Agency事件においては、私人による代理訴訟の原告または告発者は、合衆国の損害請求に関するその間接的部分的な承継に基づいて、「いかなる者(特許法第292条(b))」も、当事者適格を証明しうるとされた。告発者自身が損害を受けていなくても、私人による代理訴訟の規定が、合衆国の権利に関する制定法上の承継として機能し、請求の承継人は、被承継人が受けた事実上の損害を主張する当事者適格を有するとしている。立法府は、第292条の制定によって合衆国に対する事実上の損害を定義し、その違反行為は本質的に合衆国に対する損害を構成する以上、欺瞞的な特許虚偽表示行為は有害で禁じられるべきものである。政府はその法を執行するための当事者適格を有するから、私人による代理訴訟の原告・告発者は、政府の承継人として、第292条を執行するための当事者適格を有する。
 本件の被疑製品である紳士用ボウタイに付された米国特許は、1954年と1955年に存続期間が満了しており、かかるボウタイを購入した原告である特許弁護士は、そのボウタイについて虚偽表示が行なわれていると主張し、特許法第292条に基づいて私人による代理訴訟を提起したが、当事者適格を有するためには、合衆国が被った事実上の損害と当該虚偽表示行為とに因果関係があり、裁判所によって救済されうるものであることを主張しなければならない。
 地裁が引用したFed. Election Comm. v. Akins事件において、「抽象的な」危害の「例として、法が遵守されているかを確認する法益に関する損害を挙げ、当事者適格に必要な具体的な特殊性を排除するとされた。しかしながら、上記判決が言及した法遵守確認の対象は、一私人の抽象的な法益であって、政府自身が確認することに関する法益に対してではない。政府の視点から害が生じているというのは、法の違反行為から生じる政府の主権に関する損害が原因である。連邦財産が違反行為によって直接減少することはないが、罰金が根拠とされるのは、唯一、合衆国の主権に関する法益に対する危害のゆえであり、制定法に規定されているのは、救済されるべき危害を確認する際の法益であって、主権に関するものと明確に認められた損害を回復するものに関している。財産権とは対照的な合衆国の主権に関する損害は、Vermont Agency事件によって、合衆国とその間接的で特定部分の承継人である本件原告・告発者に当事者適格を付与するのに十分である。
 法廷助言によると、合衆国はその主権に関する法益を「いかなる者」にも承継させることはできず、主権に関する法益は個人的法益に対する類比であって、コモンロー上、承継させることはできない。かかる承継は憲法第II章第3条の注意義務に対する違反行為であり、第292条(b)の制定の際、立法府は、「法が正確に執行されるよう留意」するその義務に関して、公衆にかかる権限を付与することによって、行政府から剥奪したとし、第292条と虚偽請求取締法を対照して、関連する点を挙げている。地裁は判断を示しておらず、当事者は控訴していない、第292条の憲法上の問題があるため、当事者によって提起され議論されている争点なくして、憲法上の問題を判断しない。

事実概要
 Raymond E. Stauffer(以下、Stauffer)と政府は、ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所判決がStaufferによる私人としての代理訴訟について当事者適格の欠如ゆえに斥けたことに対して、控訴している。政府も、その訴訟参加の申立てを地裁が拒絶したことに対して、控訴している。Staufferは、その請求を行なう当事者適格を有しており、また、政府も参加する権利を有するとして、連邦巡回区控訴裁判所は、それらの根拠に基づいて破棄した。
 Brooks Brothers, Inc.とその親会社であるRetail Brand Al-liance, Inc.(以下、総称してBrooks Brothers、尚、合併により同一の法人となっている)は、紳士物のボウタイを製造販売している。Brooks Brothersのいくつかのボウタイは、「Adjustolox」という仕掛けがついているが、これは、サード・パーティーであるJ.M.C. Bow Company, Inc.(以下、J.M.C. Bow)によって製造されており、さらに特許表示され、とりわけ、米国特許第2,083,106号および同第2,123,620号というそれぞれ1954年と1955年に存続期間が満了しているものが表示されている。
 Staufferは特許弁護士であるが、そのような表示のあるボウタイをいくつか購入した。2008年12月、Staufferは、特許法第292条に基づいて私人による代理訴訟を提起し、Brooks Brothersは、そのボウタイについて、虚偽表示を行なっていると主張した。第292条は、「虚偽表示」について、以下のように規定している。
(a) 何人も、特許付与されていない物品について、「特許」または特許付与をほのめかす単語または番号を表示または貼付して、公衆を欺網することを目的とする者は、個々の行為について500ドル以下の罰金が科されるものとする。
(b) いかなる者も、上記の罰金を求めて告訴することができるものとし、その2分の1を告訴した者に供し、その余は合衆国の用に帰属するものとする。
 Brooks Brothersは、Staufferによる訴状を却下する申立てを行なうのに際して、連邦民事訴訟規則第12条(b)(1)による当事者適格の欠如を根拠とし、さらに、同第12条(b)(6)により、詐欺請求に関する厳格な訴答要件を充たすのに十分な具体性をもって公衆を欺網する意図を主張していないことを挙げた。地裁は、規則第12条(b)(1)により、Brooks Brothersによる申立てを認めて、Staufferは当事者適格を欠いていると判断した。裁判所によると、およそ原告は、私人による代理訴訟の原告または告発者も含めて、以下の点を証明しなければならないとして、(1) 事実上、損害を受けていること、(2) 被告との因果関係が存在すること、および(3) 裁判所によって救済される可能性があることを挙げている。さらに、裁判所が付言したことによると、私人による代理訴訟に関する第292条(b)の規定は、制定法上、合衆国の権利の「承継」として機能しているから、Staufferは、政府が、つまり同氏がではなく、当事者適格の要件を充たしていることを証明しなければならず、その際、政府が事実上の損害を被っていることも含まれるとしている。
 地裁は、Brooks Brothersの虚偽表示による合衆国の受けた事実上の損害に関して、Staufferが論じるところは十分ではないと判断した。裁判所によると、Brooks Brothersによる不当な競争抑制の行為に関するStaufferの議論は、事実上の損害を構成するにはあまりに推測的で仮定のものに過ぎるとした。裁判所は付け加えて、競業者に対する仮定の損害なるものでさえ減じられる事実が存在するとして、J.M.C. BowがAdjustoloxと表示された仕掛けをBrooks Brothersに提供していることに加えて、その多くの競業者にも提供しているという事実を挙げている。地裁は、また、Stauffer自身が損害を受けたという主張は、訴状に含まれていないから、正当な申立てになっていないとした。さらに、裁判所によると、それらの主張は、Staufferに対する損害を支持するのみであって、公衆にではないから、当事者適格認定の根拠にならないとした。裁判所は、当事者適格の欠如を認定したから、十分な具体性のある公衆を欺網する意図に関する論拠欠如による却下を求めたBrooks Brothersによる規則第12条(b)(6)の申立てに関する本案には、至らなかった。
 地裁による当事者適格に関する判決の後に、政府は、訴訟参加の申立てを行ない、裁判所の意見書は第292条の合憲性に問題を投じており、ゆえに政府は、連邦民事訴訟規則第24条(a)(1)、ならびに裁判所および裁判手続に関する法律第2403条に基づいて、当該制定法に関する防御を行なう権利を有するものであると主張した。また、政府は、その権益として、特許法の遵守されるところを確認するのであるから、規則第24条(a)(2)に基づく訴訟参加の権利が付与されているとし、さらに、規則第24条(b)(1)(B)に基づく訴訟参加が認められるべきであると主張した。裁判所はその申立てを拒絶する際、政府には権利として参加する根拠はないと認定し、許容される参加の証明が十分ではないと認定した。
 地裁は、その理由において、政府に規則第24条(a)(1)に基づく参加の権利を付与する憲法上のいかなる争点をも、地裁は判断していないとし、単に事件に関する事実を判断しただけであるとした。裁判所は付け加えて、政府の主張と異なり、政府が参加することにするかを決定するその期限が満了する前に、裁判所がBrooks Brothersの申立てを判断する権利を有しているのであって、それは、裁判所が制定法の違憲を支持したわけではないないからであるとした。裁判所はさらに、政府が規則第24条(a)(2)に基づく参加の権利を有する事件に対する適格な権益を有するものではないと認定して、裁判所は、Staufferに対してのみ当事者適格を否定したのであって、合衆国自身に対してではないからであるとした。
 最後に、地裁は、規則第24条(b)(1)(B)に基づいて許容される参加を否定する際、政府の権益として事件の結果に関するものは、争点と法律上の問題点を前提としているのであって、実際に裁判所によって提示されたり判断されたりするものではないと認定した。裁判所は、さらにその理由において、Brooks Brothersは、不要な費用と遅延による負担を強いることになる判決後の訴訟参加によって、不利益を被るであろうことを挙げた。
 Staufferは、適時控訴した。連邦巡回区控訴裁判所は、裁判所および裁判手続に関する法律第1295条(a)(1)に基づいて、裁判管轄権を有する。控訴第2009-1430乃至-1453は、政府による控訴であるが、連邦巡回区は、控訴第2009-1428における政府の参加申立てを認めた。Stauffer v. Brooks Bros, Inc.事件(No. 2009-1428, Dkt. No. 62 (Fed. Cir. July 16, 2010))参照。

破棄、差戻し

判旨
 政府は、地裁がStaufferによる訴えを事実上の損害欠如に基づく当事者適格の欠如ゆえに却下したことに誤りがあると、主張している。政府は、Vermont Agency of Natural Resources v. United States ex rel. Stevens事件(529 U.S. 765 (2000))が本件の結果を左右すると主張して、当該事件の判決は、私人による代理訴訟の告発者は、その者自身に損害がなくても当事者適格を有することを支持したし、政府によると、裁判所が言及しているのに従っていない見解であるとした。さらに、政府の主張によると、合衆国自らの実定法の状況を確認する法益が、事実上の損害を認定するに至る場合の例として、それらの実定法が遵守されていない場合を挙げている。換言すると、政府によると、虚偽表示の制定法を成立させる際に、立法府は、有害で禁じられるべき行為を決定したのであって、そのような行為が、政府に当事者適格を付与する事実上の相当な損害となり、すなわち、Staufferに対して、損害を回復する訴訟に関する政府の間接的な承継人としての適格性を付与することになるとしている。最後に、政府の主張によると、直接的な連邦法益の棄損に関する財産権の損害が、Vermont Agency事件判決の要件を求められるとしても、合衆国がその実定法を確認する法益に基づく単なる主権に関する損害とは対照的に、合衆国は、第292条に基づく訴訟における救済の半分を受ける財産上の権益を有するとしている。

以下、I.P.R.誌第24巻11号参照

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