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2011.01.06

【米国トレーニー日記】第1回:特許庁審査官との面談について

 NGB特許部では、お客様と海外代理人との間に入り、海外における特許と意匠の権利化のお手伝いさせていただいています。 そこで、いかにお客様のニーズにあった権利を取得できるかを考えた場合、NGBと現地代理人の連携は一つの大きな要素であると思います。 

 私(中辻)は、2009年10月~2010年4月まで半年間、米国ワシントンDCの事務所にトレイニーとして駐在する機会を得ました。 この中で、米国の生活・文化を含め、特許法に関する知識、より具体的には、指令書・審査官に対する現地代理人の考え方、または個々の代理人の性格・スタイルなどを大いに感じ、学ぶことができました。これらの経験は、日本に帰国した現在も、現地代理人との連携に大いに役立っていると感じています。

 さて、これから数回にわたり、いくつかのトピックをあげて私が興味深いと感じたことをご紹介したいと思います。今回は、審査官面接(実際に特許庁にいく場合)についてです。米国に特許出願を行った経験のある方は、一度は現地代理人に提案された、または自発的に依頼したことがあるのではないかと思います。議論の具体的内容をお話するのも差し支えがあると思いますので、いくつかの話を通して面接の雰囲気だけでもご紹介できればと思います。

              *   *   *

 米国特許庁(USPTO)は、DC市内よりメトロで約20分、キングストリート駅から、途中バージニアの連邦地裁を通過して徒歩5分の位置にあります。 いくつかある建物のうち、面接する審査官のいる建物に入ると、身分証明書チェック、荷物チェックやら、空港のようなセキュリティチェックを受けます。 セキュリティの方が審査官を電話で呼んでくれますが、このセキュリティは何故かいつも動きが鈍かったです。 間もなく、審査官が迎えにきてくれますが、びっくり。Gパン、Tシャツのアメリカンスタイル審査官も普通にいました。 面接は、審査官の部屋か、5人も入ったらきつくなるぐらいのミーティングルームで行われました。

 はじめからゴリゴリ話し合うわけではありません。 挨拶がてら、「最近どうですか?」「その写真はお子さんですか?かわいいですね。」などと、場を和ませてから、本題に入ります。 目的は案件によっていろいろですが、議論のポイントが絞られていると、 面接の時間は30、40分。長くても50、60分くらいでしょうか。 

 例えば、全く本願と異なる文献が引用され、審査官は本願を理解していないのではないか?とのことで面接を行った件がありました。 審査官は本当に理解していなかった場合と、普通に理解しており、それは理不尽だろうというくらいの広い文言解釈で反論された場合がありました。 面接の場で突然、ある文言が不明瞭だと指摘されたこともありました。 書面だけでは伝わらない情報が得られることも多いです。 また、みなさんも日常生活で書面だけでは伝わらないという経験がおありかと思います。それは当然、USPTO審査官とのコミュニケーションでも起こります。
 
 例えば、若い人で23、4歳くらいに見えた審査官もいました。 USPTOは経験の若い審査官が多いようです。 そんな時は、上司の審査官(Supervisory Examiner)が同席します。 担当の審査官が若く、上司の審査官が同席する場合は、実質的に上司の審査官が「うん」と頷けば、若い審査官も「よろしい」という感じです。 

 また例えば、面接の結果を現地代理人から受け取ったとき、こんなことを審査官が言ったとの報告はなかったでしょうか?
    
    「その補正は拒絶を解消しているように見えるが、更なるサーチが必要です。」

 Art unit (審査部の単位)にもよりますが、その場での拒絶の解消や、認可の明言は避けることが多いそうです。 それが、この得意のセリフ「更なるサーチが必要」です。このような報告を多々受けたことがある方は、代理人の報告を読むのとは違い、実際にこの台詞を聞くと、「これか」とある種の感慨を覚えるかもしれません。 その場での認可を期待する私たちとしては、水戸黄門の印籠を見せ付けられる感じです。

 面接の最後には、審査官が簡単に議事録を作り、こちらが確認します。 審査官は、後でその書面に縛られるような内容は、議事録には書きたがらないと、一緒に面接に参加した弁護士は教えてくれました。 こちらとしても、ある意味包袋に何も残らないのでお互い様という感じです。

 以上、とりとめもなく私の経験した面接の話を挙げてみましたが、実際に審査官面接というのはこんな感じであるということを少しでもご理解頂ければ幸いです。 また、実際に現場を見ることはお客様にとっても非常に有益なことと思いますので、機会があれば是非一度経験されることをお勧めします。 

(特許部 中辻)

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