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2011.07.15

柏原 雄人

【セミナー開催報告】『技術ブランディング』ワークショップ (後編)= 技術を魅せる・売る! グローバル市場競争で「指名買い」を勝取る! テクノロジーカンパニーのための攻めの知財戦略 =

 NGB事業開発室ならびに「技術ブランド戦略チーム」は去る4月21日、『技術ブランディングの理論と実戦』と題するワークショップを弊社・東京本社にて開催しました。前編に続き、本稿では後編をお届けします。

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プログラム: 『技術ブランディング』の理論と実践
・グローバル競争時代におけるブランド戦略の重要性
・知財経営戦略としての「技術ブランディング」
・ケーススタディ: 技術ブランディング導入事例
・技術ブランディングの手法 – 知財戦略実務との融合
  - 技術の棚卸、強みの確認・補強
  - ブランド化、ネーミング、商標保護
   (ネーミングの落とし穴: 中国ネーミング失敗例etc.)
・実践:ブランド戦略構築 (仮説例によるブランド展開・知財戦略)
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[ケーススタディ]
最初に講師から紹介されたのは、ナノテク企業A社のケースです(現実のケースに基づくものであるため、一部かなりぼかして説明いたしました)。
「A社は独自のナノテクノロジーで、塗装や環境ビジネスなど、幅広い分野で製品や事業を行っている。ベースの技術は共通で、今後は技術提携も視野に入れている。これまで一貫した戦略はなく、マーケティングにも余り注力していなため、B to BおよびB to C共に認知率が高くなく、思うようにはビジネスが進んではいない。…… また現状では、社名・商品名・技術名などが混在している。そこで、ベースとなっている技術にフォーカスを当て、ブランド戦略を立て、技術ブランディングを実施し、企業ブランドの価値を上げることを提案した」
このケースでは、A社のSWOT分析に基づき、ブランドの現状、ブランディングの目的、ブランドベネフィットを次のように整理していきました。
・ブランドの現状: 
独自のナノテクノロジーを上手く訴求できず、BtoBおよびBtoCいずれにおいても認知度は高くなく、思うように技術提携先なども見つけられていない。
・ブランディングの目的:
技術ブランディングにより、企業(ブランド)としての認知度と共に信頼性を上げ、ビジネス全体(技術提携を含む)を成長させる。
・ブランドベネフィット: 
機能的価値: ○○やXXなどを、…… 独自のナノテクノロジーで□□させる。
情緒的価値: 快適感、安心感、先進感を与える。
  さらに、ターゲット(本ケースの場合、(1)企業開発担当者、(2)流通関係者、(3)A社最終製品の主な購買層である主婦)、ブランドパーセプションゴール(究極の○○技術といえば「ナノテクノロジーX」である)、ブランドパーソナリティ、ブランドメッセージを定めてゆき、アクションプランの実行へと移ってゆきます。
 A社ブランディングの目的は、いまひとつ上手に訴求できていない独自技術の強みや魅力を、技術ブランディングを通じて広くアピールし、他社との技術提携も含むビジネス全体の成長に結びつけることにあります。そこで、このような目的や前記パーセプションゴールに沿った技術ブランドのネーミングを提案し、併せて企業スローガンを提案して、アクションプランを実行している工程が説明されました。
(ケーススタディ2の「スポーツ遺伝子」ブランディング事例は割愛いたします)

[知財バックアップ]
 読者はお気づきと思いますが、A社技術ブランドアクションプランにおいて不可欠なのが、知財側面バックアップです。前提となっているA社の「独自ナノテクノロジー」はどこまで「独自」といえるのか。現在の保護形態で万全か? 今後の技術提携、その提携先・地域を考えたとき、権利保護は十分か? 競合権利は存在しないのか?(ブランドが浸透した後で、他者権利侵害で訴追されては逆効果) …… これらの対策としては、当社得意の各種特許調査(侵害防止・クリアランス含む)、技術・権利棚卸、海外特許取得サポートなどでバックアップします。
 またネーミング、スローガンに対しても、ビジネス展開国での商標調査、ネガティブミーニング調査、商標登録支援などで、バックアップしてゆきます。商標取得に際しては、将来的に広がってゆく技術分野や取引態様も踏まえて確保してゆく必要があります。… これらの対応について弊社知財サポート担当が説明をし、最後に中国ネーミング失敗事例として、弊社海外商標担当者より米ファイザーの「バイアグラ」商標事例などいくつかの留意事例を紹介いたしました。

Pfizer v. Wellman 中国最高人民法院判決(2009年6月24日)
事実概要:
 1998年3月、 米ファイザー社「バイアグラ」が中国市場へも進出。中国メディアでは “偉哥”(「偉大な兄弟」の意;原語は簡体字)という中国語で紹介。ファイザー自身が選んだ中国商標は“万艾可”(「万の恋人を得られる」の意)。“偉哥”の人気が高まり、1998年中に40社以上の中国企業が、“偉哥”の商標登録申請を提出、広州Wellman社が登録を認められた。2002年7月22日、Wellman社に認められた“偉哥”商標が公告される。この頃には、 “偉哥”商標の価値に気づいたファイザーは、異議申立てを提出。
2005年10月11日、ファイザーは著名商標の侵害を主張してWellman他の医薬メーカー提訴。

北京第1中級人民法院判決: ファイザー敗訴。
ファイザーは中国語の“偉哥”を使用・宣伝したことがない。Wellmanのみ。登録申請前からの著名商標であることが証明されない限り、先出願主義を採る中国では、最初に登録申請したものに、登録が認められる。ファイザーはWellmanの登録申請以前から、使用・宣伝したことにより“偉哥”が著名商標になったことを証明できず。
2009年6月24日、最高人民法院判決: 下級審判決を支持。
*なお2009年4月8日、 商標審判部はファイザーの異議申し立てを認めている。
(出展: 2009-2010 Top ten Chinese IP Cases Foley & Lardners LLP Shanghai Office)
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[実践:ブランド戦略構築 – 仮説例によるブランド展開・知財戦略]
 ワークショップ最後が参加者を5~6名のグループに分けて行うグループワーキングです。
ここでは、ほぼ100%下請け(OEM)で自社ブランドを構築したことのない高分子材料メーカー「(株)ABCポリマー」が、開発した新素材「X」の事業展開を模索するという仮説例を提示し、技術ブランディングの目的、ベネフィット、想定ターゲット、アクションプランなどについてディスカッションしていただきました。
 各グループはほぼ異業種の初めて顔をあわせる方々ばかり、また、仮説例が細かい内容であったため、どれだけ活発なディスカッションをしていただけるか不安でしたが、これは杞憂に終わりました。かなり活発な議論がどのグループでも展開され、また、皆様「難しいながらも、楽しかった」とのお声でした。
 ブランドコンサルタントの町田氏も総評していたように「これこそブランディングそのもの。同じ社内でも、知財、開発、広報、マーケティングなど様々な部門の人々が、議論を通じて、同じ情報、目的、価値観を共有して、ブランドを構築してゆくのです」。
 
 新たなグローバル市場競争において総合的な知財戦略をサポートする『NGB IP-based 技術ブランディング』サービスおよびこれに付随する知財戦略情報については、これからも折に触れ紹介させていただく予定です。

(渉外部/事業開発室 飯野)

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