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2013.08.26

【米国意匠出願Tips】第二回: 複数実施例、継続出願、分割出願

【米国意匠出願Tips】第二回: 複数実施例、継続出願、分割出願

特許部意匠グループから、米国意匠出願に関するPractical Tipsを数回にわたりお届けしています。 第二回目となる今回は、複数実施例、継続出願、分割出願の実務について解説いたします。

A. 複数実施例
– 米国では、1出願に1発明という原則がありますが、1発明の複数の実施例として、複数の意匠を1つの出願(併合出願)に含めることができます。 端的にいえば、類似している複数意匠を1つの出願にまとめることができ、費用削減等の効果が期待できます。 

併合出願は次の要件を満たすことが必要です。(審査便覧(MPEP) 1504.05参照)

(A) 複数の実施例が基本的に同じ意匠的特徴を有する全体外観を備える。
(B) 各実施例がそれぞれ特許的に区別できるほどには異なっていない。

– この方法を用いて1出願に含めた複数の実施例が、審査の際には別発明と認定される場合があります。 この場合には、限定要求(Restriction Requirement)が発行され、いずれかの実施例(発明)を選択する必要があります。 選択しなかった実施例(発明)についての権利を追求するには、分割出願することとなります(もちろん、審査官の認定に対して反論することも可能です)。

尚、複数実施例として認められる上記要件の幅(度合)は案件によって異なるため、併合出願とするか否かは案件ごとに検討すべきだと思います。

– 複数実施例を含める具体的な例としては、(1)別の形状の場合(図A-1)、あるいは(2)一部を部分意匠(図A-2)とした場合があります。

– ここで、審査段階で別発明と認定された実施例を分割出願しなかった場合に懸念される事項(地裁判決)に触れたいと思います。Pacific Coast Marine Windshields, Ltd Malibu Boats LLC. (M.D. Fla. Dec. 27, 2012:2013年8月現在CAFCへ控訴中) 特許権者は限定要求で別発明とされた実施例を分割出願せずに権利化し、その後侵害訴訟を提起しました。しかしながら、地裁判決では、禁反言を根拠に侵害は認められませんでした。被疑製品が選択発明と非選択発明の間の領域にあり、審査段階でその領域は放棄されたと見なされたのです。(図A-3)
B. 分割・継続出願
– 米国では、係属中の出願から分割出願または継続出願を行うことが可能です。認可通知を受け取った場合には、分割・継続出願を一考してはいかがでしょうか?

分割出願:Aでも簡単に説明しましたが、複数実施例を含めた出願において、実施例が別発明と認定された場合、審査対象として選択しなかったその実施例は分割出願で追求することになります。

継続出願:元の出願から、一部を部分意匠として出願することが可能です。出願当時から、実際の製品の形状が一部変更になった場合などに、変更部分を破線とすることによって、より確実に変更後の製品の形状を保護可能です。 例えば、親出願では実線で記載されていた箇所を継続出願においては破線とすることにより、クレーム対象外とすることが可能です。(図B)

– 過去の登録例を見ると、継続出願ではある程度自由に実線から破線への変更が認められているようです。 この「程度」については、最近のCAFC判決がこれを明確にしており(In re Owens)、今後の審査にも影響を与えそうです。この判決では、継続出願時に、ボトルの一部を破線・一点鎖線にしたのですが、一点鎖線に変更した部分が、親出願時に発明であるとは認識されていなかったと判断されています。

(記事担当 特許第一部 中辻)

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