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2014.04.21

【東南アジア特許情報解析】-ベトナム編-

NGB IP総研では、東南アジアでの調査需要の高まりを受け、今月から数回に亘り、ASEAN諸国に関しての特許分析を行っていく。本稿では第一回目として、ベトナムを取り巻くビジネス環境のサマリーと特許出願動向についてご紹介する。

[ASEAN諸国の経済状況]
まず前段として、ASEAN諸国の経済状況を俯瞰する。IMFのWorld Economic outlook October 2013のデータからカンボジア、インドネシア、ベトナム、マレーシア、フィリピン、タイの6カ国の2012年の実績データを抽出、分析した結果が下図である。

ASEAN諸国の人口は、一貫して増加傾向にある。その中で目を見張るのはインドネシアであり、2.5億人を超えようとしている。GDPそのものも、6カ国中で突出している。しかし、一人当たりGDPになると5000ドルを切っている現状にある。一人当たりGDPでみるとマレーシアが最も大きく1万ドルを超えている。次いでタイが1万ドルに迫る勢いで次点につけ、フィリピン、ベトナムがこれに続いている。特にベトナムは、耐久消費財の普及が本格化し、都市化・工業化加速が進む目安としての3000ドルを超えたところにおり、次なる成長が注目されている。安定成長の目安が1.5万ドルであり、その点を目指そうとすると、十分に余力があると言える。

成長余力の点で注目されるのは、メコン経済圏、すなわちタイ・カンボジア・ラオス・ベトナムで構成される経済圏である。この経済圏は、インドシナ半島の国際河川を共有していることもあり、ASEANという枠組みの中における、域内協力が積極的に行われ、経済圏内でのモノやヒトの移動を活発化させつつある。

その実例として、新たなメコン圏での国際道路「南部経済回廊」の整備が挙げられよう。既にメコン経済圏が収まるインドシナ半島においては、ベトナムのダナンとミャンマーのモーラミャインを結んだ東西経済回廊、中国の昆明とベトナムのハイフォンとタイのバンコクを結ぶ南北経済回廊で結ばれている。そして「南部経済回廊」は、タイのバンコクと、南シナ海に面するベトナム、ブンタウ港を結び、さらにミャンマーのダウェイ港の開発計画も進んでいる。こうした国際幹線道路は、海路でマラッカ海峡を通過する必要もないため、より早く安全なサプライチェーンの構築が出来るとされている。こうした輸送インフラが整備されつつあることが、海外からの投資を呼び込む一つの理由となっている。

[ベトナム特許出願動向解析]
この新たな交流を生む「南部経済回廊」に着目し、日が昇る勢いを持つ国々の分析の皮切りとして、東端の地であるベトナムから分析を進めていく。

まず、ベトナムの特許の出願件数について、ベトナム特許庁のDBにアクセスし、直近20年間の出願状況とIPCセクション毎に分けた図が上のようになった。なお、1特許に異なるセクションが複数付与されるケースもあるが、それぞれカウントしているため、この合計値は出願件数の実数値よりも多い点ご留意頂きたい。

図から読み取れることとして、1994年から1997年までの期間と、2005年から2008年までの期間が件数が一気に増加している。前段の1994年は、翌年1995年の民法制定(所有権保護規定)に向けて特許出願の受付が始まる一方、同年2月に米政府による対越経済制裁解除がなされて外国企業がベトナムに投資し始めた時期である。そして1998年にはアジア通貨危機で、外国企業が撤退し出願数の伸びも一服する。後段の2005年は、ベトナム外国投資法と内国投資奨励法に取って代わる共通投資法と統一企業法(2006年7月1日より施行)が11月に国会を通過した年であり、外資誘致政策を推し進める転換期であった。

知的財産の面もこの頃動きが見られた。知的財産権に関する規則が民法から独立し、知的財産法として施行されたのは2006 年(7月1日)である。その10日後にマドリッド協定の効力発生日を迎え、そして翌2007年の1月にTrips協定の効力発生日と続いている。

特許分類として、A(生活必需品),C(化学;冶金)の占める割合が大きいが、ここ10年でH(電気)とB(処理操作;運輸)が増えている。我々としては、上述の輸送インフラが整いつつある点と、IPCのB分野が増えていることに着目し、【B】分野に関する分析を次号においてご紹介することとする。

[ベトナムの基礎的データ]
ベトナムの正式名称はベトナム社会主義共和国であり、首都は1975年の南北統一以前の旧西側の北ベトナムの首都でもあったハノイである。国土は日本よりも約4万平方キロ小さい約33.1万平方キロであり、近隣のマレーシアとほぼ同規模である。その位置は、南シナ海に面したインドシナ半島東岸に位置しており、北方を中華人民共和国、後背にラオス人民民主共和国、カンボジア王国との国境に接している。

(ASEAN分析チーム)

参考資料
「ベトナム南部に進出する日本企業」関満博(2004年07月) 独立行政法人 経済産業研究所
「経済界」No.1008 (2014年1月) 株式会社経済界

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