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2014.10.23

【ASEANプロジェクト2014】[ 5 ] マレーシア、タイ 訪問記 <前篇>

ASEANプロジェクト2014もいよいよ最終回。特許出願スタッフ3名(飯島・増位・田中)と年金管理スタッフ1名(永田)からなる第5チームは、タイとマレーシアを訪問しました。本稿では、特許庁の審査官や代理人とのインタビューをとおして得られた特許審査の現状についてご報告します。

   マレーシア
   タイ

[マレーシア]

 マレーシアはASEAN諸国のほぼ中心に位置し、日本企業も多く進出している。 我々が訪問したのは6月上旬であり、熱帯雨林気候の高温多雨を予想していたが、小雨には降られたもののそこまでの暑さはなく、むしろ同じ時期の日本より湿度が低いために過ごしやすいと感じた。
 マレーシアは多民族国家であり、現地の人の服装や食事のメニューからもその多民族の文化がうかがわれた。 民族によって話す言語も異なるようだが、共通して英語が話されているようで、タクシーやレストランなどでコミュニケーションに困るということはなかった。
 我々が訪問した現地事務所や特許庁は、マレーシアの首都であるクアラルンプールにある。 クアランプールには高層ビル群やショッピングセンターがあり、想像していたよりも近代的な印象を受けた。

現地事務所
 今回の滞在中に複数の現地事務所を訪問することができた。 面会したアトーニーの方々もマレー系やインド系など人種が様々であり、ここでも多民族国家を感じることとなった。 マレーシアの特許プラクティスにおいては、実体審査請求と修正審査請求の審査請求時のオプションがあり、また、優先審査制度という審査を促進する手続きもある。 これらの特許プラクティスについて、詳細な情報を得て、特に費用や早期権利化の観点から分析することを今回の目的としていた。 また、シンガポール特許庁が推進している取り組みであるASPECについて情報収集し、さらに特許だけでなく、実用新案(Utility Innovation)や意匠についてもその手続きや有用性について確認することができた。
 なお、審査官へのコンタクトはしやすいようで、Examination Reportに疑問がある場合などは、そこに示される審査官のEメールアドレスや電話番号で簡単にコンタクトできるとのことであった。

マレーシア特許庁
 マレーシア特許庁(MyIPO)はクアラルンプールの中心にある。 MyIPOでは複数の審査官と面会する機会を得て、様々な質問に回答して頂いた。 
 MyIPOは、数年前から電子出願を開始しており、現在までに約半数の出願が電子出願されるようになったとのことであった。電子出願は、先進国であれば当たり前であるかもしれないが、それ以外の国、特にASEAN諸国においてはほとんど対応していないと認識している。
 特許の審査請求時において、修正審査請求を検討する日本の出願人は多いと考えている。修正審査では、所定の対応出願国の認可情報に基づき、マレーシア出願において審査請求を行うが、この所定の対応出願国に日本が含まれているからである。日本の他、米国、EPC、イギリス、オーストラリア、韓国が含まれるが、この対応出願国の拡張の可能性について確認したところ、その予定はないとのことであった。日本の出願人にとって、上記に含まれない主要な出願国に中国があるが、中国特許に基づく修正審査は実施できる見込みはしばらく無いようだ。
 同様に他国の審査結果を利用するASPECについては、その申請を受け付けた件数が多くないようで、あまり情報が得られなかった。引き続きの情報収集が必要である。
 なお、この10月から日本とマレーシアとの間で特許審査ハイウェイ(PPH)が開始された。実はこの情報については、我々がMyIPOを訪問した6月上旬の段階で、導入予定として得ていた。PPHの導入により、マレーシアにおける日本出願の認可情報を利用する制度として、修正審査とPPHの2つの制度が共存することになる。現状では、これらの制度のすみわけについては明らかになっていないが、情況に応じた柔軟な使い分けを検討していきたい。

[特許第1部 飯島康介(マレーシア記事担当)]

=> タイへ続く

マレーシアの象徴とされるペトロナスツインタワーと夜の繁華街。車の交通量も多い。
MyIPOにて、審査官及び現地代理人と。

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