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2014.10.24

最新中国知財情報収集と中国専利信息年会(PIAC)2014視察ツアー報告

2014年9月9日~13日の4泊5日の日程にて、今年も首記視察ツアーを企画し、特許情報カンファレンス(Patent Information Annual Conference of China:PIAC)を含め、複数の企業、政府関係団体及び専利事務所を訪問し、情報収集すると共に質疑交換を行った。 日本からの参加者は9社10名(羽田発6名、関空発4名)、現地から合流された方が2名、そしてNGBスタッフ5名の計17名。今回で4回目の企画となったこの視察ツアーについて、簡単に報告させていただく。
訪問先は以下の通り。

DAY1
北京三友知識産権代理有限公司(Beijing Sanyou Intellectual Property Agency Ltd.)
Beijing Elite Intellectual Property Service Co., Ltd.
北京公証役場

DAY2
Siemens AG Beijing
北京技術交易所(China Technology Exchange:CTEX)
小米科技有限責任公司(XIAOMI INC)

DAY3
特許情報カンファレンス(PIAC)
柳沈律師事務所(Liu, Shen & Associates)

DAY4
聯徳律師事務所(LexField)
中糧集団有限公司(COFCO)
NGB主催セミナー & カクテルパーティー(於 Four Seasons Hotel Beijing)

第一日目の訪問先は、昨年同様の3か所。元北京三友知識産権事務所の所長で、現在Beijing Elite Intellectual Property Serviceを立ち上げた崔弁護士より、「防衛公開と公証」のテーマで説明を受ける。中国の知財保護は未だ不十分である現状を踏まえ、知財権での保護に加え、積極的な防衛公開を勧めている。また、防衛の目的で公開されたものについても、裁判における証拠能力を高める為に、公証が必要であることも力説。 一方では、昨年の第一審の知財訴訟件数が示され、著作権も含め10万件超で、その内専利関係が1万件弱。 また、更にその中での侵害訴訟は訳7,800件との説明を受ける。この様な訴訟背景を考慮すれば、知財戦略の一つとして、公証は検討に値するものであろう。
*北京公証役場についての情報は、中国公証役場訪問記を参照していただきたい*

第二日目のSiemens AG Beijing訪問も昨年に続き、二度目である。対応して頂いたのは、これも昨年同様、曲知財部長。 非常に忙しい方で、このミーティングの後も飛行機による出張が入っている中、予定の二時間を超え、ぎりぎりまで対応いただいた。 事前に盛りだくさんの質問をぶつけ、当日も参加者から多くの質問を受けても非常に真摯に、そして丁寧に答えて頂いた。主な質問内容は、中国第一発明の出願可否判断方法、訴訟リスク管理、発明報奨を含む発明者教育、そして転職によるノウハウ流出対策等。中でも、訴訟リスク管理に関して、中国企業を含む競業他社の特許情報分析に相当力を入れているとの説明が印象深かった。やはり、現地においては、外資企業として訴訟のターゲットになりやすいのがその一因とみられる。Simens AG Beijingへの訪問は、外資企業の中国知財活動を知るには良い機会であった。

一方、その後に訪問したXIAOMIは、ドイツ重電分野の伝統的な巨大企業を親会社とするSimens AG Beijingとは非常に対照的で、2010年設立の若く成長著しいスマートフォンメーカー。2013年の売上は6000億円で、2014年第二四半期の中国国内におけるシェアは14%で、サムソン(12%)を押さえ、一位。訴訟等の紛争への対応は、XIAOMI全体の最大利益を考えた対応を取るといった方針。

第三日目の午前はPIACを視察。 例年と変わらない規模での開催で、出展ブース、コンファレンス数もほぼ、昨年同様であった。 

午後の訪問先は柳沈律師事務所。講義のテーマは最近の立法及び訴訟動向に関するもの。立法としては2011年以降、大きな動きがあった。 無効審判で特許無効との判断があった場合、当該侵害訴訟について、裁判所は審決取消訴訟の結果を待たずして訴訟を棄却することとなった。中国知識産権局としては、行政ルートによる特許保護を強化したい意向があるようである。

第四日目の訪問先は聯徳律師事務所で、「専利訴訟の難しさ及び訴訟戦略」をテーマとして講義を受けた。講義の要点として二つあり、一つは、外国企業においては審決取消訴訟及び無効審判で不利な状況になりつつあること、及び二つ目として、訴訟事件における事務所選択の重要性。 2000年以前は外資を尊重し、訴訟においても外資に有利となる判決が下されることが多かったが、現在は国家知財政策によって国内企業に有利となっているよう。実案、意匠の評価書作成において、国内企業の案件で進歩性が無いと判断したものであっても、SIPOでは肯定的な評価となり、一方、外国企業案件では進歩性を疑われる厳しい評価となるケースがあるということである。 このような背景があることから、技術論争に持ち込まれた場合、裁判所はその技術知識の無さから、最新委員会の審決を取り消すことは事実上難しいことを考慮すると、技術知識より法律知識が豊富な事務所を選択することが重要であるとの見解であった。

最終日の午後には、中国社会科学院知的財産権センター主任、李 明徳教授を招いてのセミナーをFour Seasons Hotel Beijingで開催した。 テーマは「中国における知的財産権裁判所の設立及び発展」といったもので、今年8月31日の全人代常務委員会にて可決された、「北京、上海及び広州に知的財産権裁判所を設立する決定」に関係しての開催であった。内容は、知財専門裁判所を設立の経緯とその背景が主なものであって、今回お招きした、李 明徳教授はその設立に当たって多方面に亘り参画された方である。 参考だが、中国社会科学院は中国における哲学及び社会科学研究の最高学術機構であって、中国政府のシンクタンクとして大きな影響力を持っており、国務院直属事業単位である。

その後、日本特許庁、北京JETRO、中国IPGの皆様、中国代理事務所の皆様のご参加を得て60名を超える方々でカクテルパーティを催し、視察ツアー参加者ほか皆様の相互懇親を深めていただいた。
                                      以上

(営業推進部 青木)

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