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2016.05.20

【Cases & Trends】 中国訴訟統計に関する新事実 (?) =[日中知識産権交流フォーラム]開催報告に寄せて=

2016年4月25日、「北京・東京知的財産事業の発展と協力の展望」をテーマとする知財フォーラムが東京・大手町で開催されました。主催は、首都知的財産サービス業協会、中国知識産権研究会および北京市専利代理人協会。NGBは今回、協賛としてお客様へのご案内や当日運営のお手伝いと黒子に徹しておりましたため、当日ご参加いただいた皆様に十分な御礼を申し上げることもできませんでした。この場をお借りして、改めて御礼申し上げます。
さて、当日は、主催者代表挨拶を経た後、中国(北京)知財の最新トピックを紹介する講演の部へと移りました。講演者もそれぞれのテーマの最前線に位置する方々ばかりです。

1.「北京知的財産権の発展の現状と展望」北京市知識産権局局長 汪洪氏
2.「北京市における商標権保護の状況」北京市工商行政管理局副巡視官 孫建生氏
3.「北京市における著作権保護の現状」北京市文化市場行政取締総隊 副大隊長 周大慶氏
4.「中国における特許権侵害訴訟の最新動向と最高人民法院による特許司法解釈(二)の解説」 北京三友知識産権代理有限公司 弁護士 陳堅氏

いずれも興味深い最新情報が提供されましたが、本稿では、当日アンケートでも最も関心の高かった陳堅弁護士による中国の特許侵害訴訟最新動向から、北京知財法院が取り扱った訴訟件数について紹介いたします。

北京知財法院が2015年に受理した知財訴訟件数
全9,191件。うち、
・「技術類事件」(特許、営業秘密、植物新品種等)は1,885件(21%)、非技術類事件は7,306件(79%)
・「渉外事件」(当事者の一方または双方が外国人、外国企業)は2,807件(31%)

北京知財法院が2015年に処理をした事件数
民事事件第一審:全94件。うち原告勝訴:68件
原告勝訴事件における訴額(原告の請求額)平均:95万元
裁判所による認容額平均:45万元 *訴額の全額が認容された事件:10件

中国全土における知財渉外事件 vs. 北京における知財渉外事件
講演で提示されたデータによると、北京知財法院における渉外事件の割合は知財訴訟全体の31%。これは極めて高い比率です。たとえば筆者が最近読んだ中国最高人民法院による2015年知財白書に関する解説記事 (“Summarizing the SPC’s 2015 White Paper” Mark Cohen, China IPR 4/22/2016) によると、「2015年は中国における知財訴訟全件数は前年比7.2%増ながら、渉外事件は22%減の1,327件。これは、全知財訴訟の1.2%に当たる」そうです。

中国すべての裁判所が受理した知財訴訟中、外国人(法人)を当事者とする訴訟の割合は、全体の1.2%(2013年は同1.9%、2014年は同1.8%)に過ぎないのですが、北京(知財法院)においては31% … 確かに北京の裁判所、ことに北京知財法院に対しては外国企業の利用率は高いと思われます。それにしても差が大きすぎないか・・・しかも、実数が中国全土で1,327件なのに、北京だけで2,807件とは・・・?

上記記事の執筆者Mark Cohen教授(フォーダム大学法学教授、前マイクロソフト国際知財政策担当取締役)は、最高人民法院(SPC)の外国当事者関連訴訟データが少な過ぎるのではないかという声が出ていると述べています。どうやら、SPCは中国民事訴訟法において期日の延長が認められる外国企業のみを外国訴訟当事者として分類し、外国企業の中国現法による訴訟は「国内企業」による訴訟としてカウントしているようです。

フォーラム開催翌日の4月26日(「WIPO IPデー」!)、北京知財法院、上海知財法院、広州知財法院それぞれが自らの知財白書に関するデータを公表し、SPCでは2015年知財白書に続き、知財に関する50のモデルケース、10大ケースなど公開しました。興味深いデータが次々と公開されるなか、その読み解き方は、なかなか一筋縄ではいかないようです。

(営業推進部 飯野)

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北京三友知識産権代理有限公司の陳堅弁護士
陳堅弁護士スライド抜粋

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