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2016.11.18

柏原 雄人

【Cases & Trends】 トランプ次期大統領の知財政策、特許改革への取り組みは?

米大統領選、衝撃のトランプ候補勝利から1週間以上が過ぎました。この選挙結果が世界の政治経済に及ぼす影響について連日のように論じられ、報じられています。では特許、知財の世界には、一体どのような影響が出てくるのでしょうか。まだまだこれからの話ですが、とりあえず米国の知財コミュニティで語られていることをいくつか拾ってみました。

■特許改革に対するトランプ氏の姿勢は未知数である。

トランプ氏は、オバマ政権、連邦議会、裁判所(特に連邦最高裁)が取り組んできた特許改革に対する姿勢を明らかにしておらず、今後の取り組みは未知数です。一方のヒラリー・クリントン候補は、選挙中も特許侵害訴訟の裁判地に関する改革案などを表明していました。

■とはいえ、共和党としては「侵害者に対する強い措置」を求める立場を表明している。

2016年7月に掲げられた共和党の「2016年政策綱領(2016 Republican Party Platform)」中には「知的財産権」セクションが設けられ、次のような基本姿勢が示されていました。

「私有財産には、土地や家といった有形の財産だけでなく、本や特許(books and patents)といった知的財産も含まれる。…知的財産は、たゆまぬイノベーションが基礎となる今日のグローバル経済の推進力となり、アメリカの経済成長と雇用創出の源泉ともいえる…。知的財産を保護することは、国家安全保障問題のひとつでもある。我が国の武器システムの信頼性と軍事要員の安全性を損ねかねない模倣部品に対する監視をないがしろにすることはできない。現在、知財権に対する最悪の侵害行為は外国、特に中国から生じている。我が党は、連邦議会と新たな大統領が、外国であれ国内であれ、すべての侵害者に対し知的財産法を執行する、強い措置をとることを求めるものである…」

■現USPTOのミッシェル・リー長官とはかなり背景の異なった長官へチェンジするだろう。

Bloomberg BNAのレポート(11/9/2016)によれば、とにかくシリコンバレーのハイテク産業と「そりの悪い」トランプ氏は、元グーグルの特許弁護士であったリー長官とは全く別タイプの長官を選ぶだろうと指摘しています。シリコンバレーのハイテク企業は圧倒的にヒラリー支持だったので、当然といえば当然ですが。ひとつの可能性として指摘されているのが、ジョンソン&ジョンソン社の知財政策戦略担当副社長を務める医薬系特許弁護士のフィリップ・S・ジョンソン氏です。実はオバマ大統領も同氏を長官候補として考えたこともあったのですが、ハイテク産業の反対を受けて断念したという経緯があったようです。

■実はトランプ氏はかなり特許政策に強い関心を持っている(関心を持つ下地がある)

「今後の展開をエリート的考えで見ていると、クリントン優位を報じていたエリートメディアのように再び見誤ることになろう」と指摘するのは、ipwatchdogサイトを運営するGene Quinn弁護士です。トランプ氏の特許・知財にかんする下地について、以下のとおり列挙しています(”Trump on IP and Patent Reform: What Silicon Valley Doesn’t Understand”, Peter Harter & Gene Quinn, ipwatchdog, 11/9/2916)。

1. トランプ氏の大統領選用ウェブサイトでは、アメリカの知財を窃取する中国その他の国の追及を表明している。
2. 共和党政策要綱における知財政策の表明(上記参照)。
3. トランプ氏の叔父ジョン・G・トランプは第二次大戦中に新たなレーダー技術の発明で知られる発明家、研究者であり、MITで教えつつ会社を設立した起業家でもある。
4. 広く知られている通り、トランプ氏は自らの名前、その他の名称やスローガンを商標登録して、さまざまなビジネスに利用し、マネタイズでも成功している。
5. トランプ氏はTPP(環太平洋パートナーシップ協定)撤回を表明しているが、TPPには医薬・バイオ企業の知財権にはマイナスとなる規定が含まれているため、医薬バイオ業界には歓迎されよう。

■トランプ氏は、中国の裁判所に訴訟提起した最初の米大統領になる。

上でも書いた通り、トランプ氏は多くの商標登録をもち、ビジネスに活用していますが、中国では多くのトランプ商標がトランプ氏とは関係のない企業などによって登録されています。Mark Cohen米フォーダム大学法学教授のブログでは「中国において自らの名で訴訟を提起した初めての米大統領」(Mr. Trump will be the first US President to have brought a law suit in his own name in a Chinese court)と紹介されています (“The President-Elect, IP and China” Mark Cohen, China IPR 11/10/2016)。

以上、ややまとまりには欠けますが、関係者の声をいくつか拾ってみました。いずれにしろ、どのような対応が採られるのか、今後の施策が注目されるところです。

(営業推進部 飯野)

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