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2019.10.18

【特許・意匠ニュース】 台湾、パテントリンケージ制度を施行

 台湾では、2019年8月20日より改正薬事法が施行され、パテントリンケージ制度の実施が開始されました。

 パテントリンケージ制度とは、後発医薬品メーカーの承認申請に関して、先発医薬品メーカーの特許との関係性を考慮する仕組みのことを言います。先発医薬品メーカーは、新薬などの特許権に関してパテントリンケージ制度を適用することで、後発医薬品の承認申請がなされた旨の通知を受け取ることができます。また、後発医薬品メーカーは、先発医薬品に関するジェネリック医薬品の承認申請の際に、当該先発医薬品の特許権との関係性を表明する必要があります。一定の条件下においては、他の後発医薬品メーカーに対して、独占的な販売期間が受けられるという利点がございます。

 以下に、台湾パテントリンケージ制度の概要について記載いたします。

〇パテントリンケージ制度が適用できる特許権(改正台湾薬事法48条の3)
1. 物質(医薬品に含まれる有効成分)に関する特許
2. 医薬組成物、製剤に関する特許
3. 医薬用途に関する特許

 製造方法や中間体、代謝物に関する特許権にはパテントリンケージ制度は適用できません(施行規則3条)。

〇適用するための方法
 先発医薬品の製造許可証を受領した翌日から45日以内に、特許情報と、それに関連する書類を中央衛生主務官庁に提出する必要があります(改正台湾薬事法48条の3)。

〇留意点
 パテントリンケージ制度を適用した特許権について、クレームの訂正や特許権の取り消しが確定したなどの事由があった場合は、その変更などが発生した日の翌日から45日以内に特許情報の変更や削除をする必要があります(改正台湾薬事法48条の6)。

〇後発医薬品メーカーの手続きについて
 後発医薬品の承認申請の際に、先発医薬品の特許権に対する関係性を表明しなければなりません。具体的には次のいずれか一つについて申告をしなければなりません(改正台湾薬事法48条の9)。

1. 当該新薬について、いかなる特許情報も掲載されていない。
2. 当該新薬の特許権はすでに消滅した。
3. 当該新薬の特許権が消滅した後に、初めて医薬品製造許可証を発行する。
4. 当該新薬の特許権は取り消されるべきものである、または当該特許権を侵害していない。

 項目4の申告をした場合は、後発医薬品の承認申請の書類が完備された旨の通知が送達された日の翌日から20日以内に、先発医薬品の許可証の所有者と中央衛生主務官庁に、「当該新薬の特許権は取り消されるべきものである、または、当該特許権を侵害していない」理由と証拠資料を添付して通知する必要があります(改正台湾薬事法48条の12)。なお、通知をしなかった場合には、後発医薬品の承認申請は却下されます。

〇項目4の申告のその後の流れ
 先発医薬品の許可証の所有者は、通知の受領の日の翌日から45日以内に、特許侵害訴訟を提訴することができます。提訴をする場合には、同時に、中央衛生主務官庁にその旨を通知する必要があります(改正台湾薬事法48条の13)。提訴をしない場合には、後発医薬品の製造許可証が発行されます。

 中央衛生主務官庁が、提訴をする旨の通知を受領したときは、受領の翌日から最長で12ヶ月、後発医薬品の承認が一時的に停止されます(改正台湾薬事法48条の13)。当該期間の間に侵害の判決が出た場合は、後発医薬品の承認は特許権の消滅後に発行されることとなります。逆に、当該期間内に非侵害判決が確定したり、当該期間内に侵害の判決を得られなかったりした場合は、後発医薬品の承認申請の書類を最も早く完備した承認申請者に対して、12ヶ月の販売独占期間が与えられます(改正台湾薬事法48条の16)。

 なお、2019年8月20日より前に発行された先発医薬品についての承認であっても、パテントリンケージ制度を利用する場合は2019年11月20日までに手続きを完了すれば、なおも認められます(改正台湾薬事法48条の21)。何か手続きなどについてご不明な点等がございましたら、お気軽に弊社までご連絡ください。

参考
https://www.mohw.gov.tw/cp-4254-49000-1.html
https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?pcode=L0030001
https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?PCode=L0030002

(記事担当:特許第2部 牛島)

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