IP NEWS知財ニュース

  • 判決事例
  • 特許

2022.06.16

特許部 渡邉浩二郎

【特許・意匠ニュース】 AIは発明者として認められるか? オーストラリア連邦裁判所大法廷の判決

2021年9月の弊社記事でお伝えしたとおり、オーストラリア連邦裁判所(Federal Court of Australia)は、DABUSと名付けられた人工知能を発明者とする特許出願に関して、DABUSは発明者であると認める判決を出しました*1。この判決を不服として、オーストラリア特許庁長官は上訴しました。

2022年4月13日、この上訴審の判決が出ました。オーストラリア連邦裁判所の大法廷(Full Court)は、5人の裁判官の全員一致で第一審の判決を覆し、自然人ではないDABUSは本特許出願の発明者にはなれないとしました*2。

この結論に関して、以下のようなことが判示されています。

・ …過去の判例から明らかなように、特許を受ける権利に関する法律は、特許法上の発明が自然人の精神から生ずることを前提としている。発明概念に貢献した者または発明概念を提供した者が、特許を受ける権利を有する。発明に対する特許の付与は、その創意工夫に報いるものである。(判決文段落0105)

・ オーストラリア特許法第15条(1)(a)が、特許は「発明者である者」にのみ付与されると規定しているところ、「者(person)」は、文脈上、これが自然人であることを強調している。…(判決文段落0106)

・ 第15条(1)を自然に読めば、第15条(1)(b)、(c)および(d)はそれぞれ、第15条(1)(a)の発明者から特許を受ける権利を最終的に受け取る者がいる状況を規定している。別の言い方をすれば、実際の発明者と最初に特許を受ける権利を有する者との間に法的関係がなければならないということである。…(判決文段落0107)

・ 第15条の解釈に対するこのアプローチは、我々が参照した、オーストラリア特許法の発展の立法経緯によっても裏付けられている。(判決文段落0111)

・ …特許法および規則上、自然人のみが発明者となることができる。第15条(1)(b)から(d)に基づく特許を受ける権利を有する者がいるためには、そのような発明者が特定されなければならない。(判決文段落0113)

この判決を受け、本特許出願の出願人であるStephen Thaler氏は、オーストラリア連邦最高裁判所(High Court of Australia)で審理する特別許可(Special Leave)を求める申請を行ったようです。この申請が認められるか注目されています。

*1 Thaler v Commissioner of Patents [2021] FCA 879
*2 Commissioner of Patents v Thaler [2022] FCAFC 62

(参考)
・Federal Court of Australia, Thaler v Commissioner of Patents [2021] FCA 879
https://www.judgments.fedcourt.gov.au/judgments/Judgments/fca/single/2021/2021fca0879
・Federal Court of Australia, Commissioner of Patents v Thaler [2022] FCAFC 62
https://www.judgments.fedcourt.gov.au/judgments/Judgments/fca/full/2022/2022fcafc0062
・Dr Thaler seeks special leave to appeal to the High Court from the Full Federal Court of Australia decision which held that an Artificial Intelligence machine cannot be named an inventor on a patent application
https://www.dentons.com/en/insights/articles/2022/may/17/full-federal-court-of-australia-holds-that-an-artificial-intelligence

関連記事

お役立ち資料
メールマガジン